聴覚障害者の音楽とのかかわり方


耳で音声を聴くことができない人たちのことを「聴覚障害者」と呼びます。このような人たちでも、音楽を楽しむ方法はあります。

 

『聴覚障害』とは?


【1】先天的聴覚障害
 生まれつき耳に障害を持って育った「ろう者」または「ろうあ者」、聴こえにくさを持って生まれた「難聴」の方も含みます。
【2】後天的聴覚障害
 生まれた時は健聴(きこえていた)だったけれど、幼い時や大人になってからの病気などで、聴力を失ったり、難聴になった「中途失聴者」、「ろう者」または「ろうあ者」と呼ばれる方にも、幼いころに聴こえなくなられた方もいらっしゃいます。
 原因には、生まれつきでは風疹難聴(母体が風疹に感染したため)であったり、赤ちゃんなどがストマイ難聴(注射による)で聴力を失う。
 一方、青年期や成人がメニュエル氏病(めまいや耳鳴りを伴う)などで難聴になる。突発性難聴も後天的聴覚障害ですが、すぐに治療を受ければ、聴力が回復できる場合もある。
【3】伝音性難聴と感音性難聴
 以上、簡単に述べましたが、細かく分けると、『伝音性難聴』と『感音性難聴』に分かれます。
 『伝音性難聴』は、耳穴から鼓膜までに至る個所(外耳道・中耳)の病気による。この場合は、「手術」で治るケースもありますが、多くは音を増幅する「補聴器」で聴こえを取り戻せる。
 一方、『感音性難聴』は、鼓膜よりも奥(内耳)の、音を伝える神経に異常があるので、通常の補聴器でもうまく聴き取ることが難しくなります。
 その解決策としては、『骨伝導式補聴器』が有効な場合(内耳の損傷が軽い場合)もあります。それでもダメな時には、病院から『人工内耳』を頭部に埋め込む手術を勧められることが多いようです。
【4】骨伝導式補聴器
 音を、頭部の骨に直接伝えることによって、直接「脳」へ音が伝えられます。骨伝導補聴器には、「メガネ型」と「カチューシャ型」の2種類があります。主に、外耳・中耳の病気で聴こえない人向け。老人性難聴などのような、内耳神経などの機能に異常のある、感音性難聴には適しないとされています。
 最近では、健聴の方でも『骨伝導式イヤホン(またはヘッドホン)』を使い、鼓膜に負担をかけずに、周囲の安全を耳で確認しながら音楽を楽しまれていますね。
参考ページ『みみ太郎』 『骨伝導イヤホンのメリット・デメリット
【5】人工内耳
 最後に、前出の『人工内耳』は、まだまだ知らない人も多く、蝸牛への電極コイル埋め込みで、「直接脳へ音声を伝える」聴力を取り戻すための最高の手段と言えます。ちなみに、筆者も『人工内耳』ユーザーです。
参考ページ『人工内耳友の会関西

《広告》歯を白く・ブレスマイルウォッシュ

聴覚障害者と音楽


【1】中途失聴者の場合
 子供時代も含め、大きくなってからの難聴では、補聴器で言葉が聴き取れて会話が可能なら、音楽をある程度楽しめますが、静かな穏やかな楽曲をお勧めします。例えば、子供のころに親しんだ唱歌やアニメソング、歌謡曲がお勧めです。ロックなどのようにがなり立てる楽曲は、音のひずみが大きくなり、かえって楽しめません。
 私が聴こえなくなった当時は、ボックス型補聴器を使用してました。ラジオの曲はイヤホンのボリュームを上げてどうにか楽しめてたが、その後低下。
【2】生まれつきの難聴の場合
 これは、音楽の記憶がなくて個人差が大きいので一概には言えないのですが、子供時代に補聴器を使い、聴覚支援学校などで音楽を習うことがあれば、本人の努力次第で、限られた範囲の音楽に対応できるのでは?
 例えば、打楽器(和太鼓も含め)のリズム感を学校で習うことができているなら、ビートの効いた曲なら楽しめるだろうと思います。
【3】生まれつき「聾(ろう)」の場合
 現在の聴覚支援学校(旧ろう学校)の教育内容は詳しくないので、全く聴こえない子供たちには音楽教育がどのように行われているのか、その学校の教育方針によるところです。
 私の知る学校では、放課後に『和太鼓』クラブで、和太鼓演奏の練習活動をしている子供たちがいました。現在も続いていたらいいですね。
【4】感音性難聴の中途失聴者の場合
 このケースでは、補聴器は役に立たないので、音楽についても困難があります。
 そこで、『福音』となるのが「人工内耳」です。
 人工内耳埋め込み手術した後は、ご本人の努力によるところが大きいですね。病院での定期的なリハビリ(聴能訓練・外部装置のマッピング)はもちろんですが、人工内耳外部装置を着用した上で、日ごろからの心がけが最も大きい。
 詳しくは後述しますが、①意識して音を聴く習慣②静かな曲から音楽に慣れていく、③人工内耳で音楽を楽しめるようになるための王道は、やっぱり『生演奏』に触れること。無理に聴こうとはせず、会場の雰囲気や楽器の動き・音色を楽しむことで、ストレスは軽減できます。

《広告》口をすすげば歯真っ白に・ブレスマイルウォッシュ

人工内耳で音楽を楽しめるようになるための秘訣

【1】意識して音を聴く習慣をつける
 「これは何の音?」
 というように、常に意識して聴くようにすること。
 人工内耳ユーザー初めの頃の私もそうでした。
 例えば、時計の「カチカチ」音は、手術後の音入れしてからすぐは、最初はうるさく感じますが、慣れれば意識しなくなります。
 逆に、自然の中で、小鳥たちの歌声(さえずり)が聴こえたときは感動しますね。こんな時が、「人工内耳にしてよかった」と、心から喜びが湧きあがります。いずれの音声も、補聴器では聞き取れなかったものです。
【2】静かな曲から音楽に慣れていく
 昔、聴こえていた時代に聴いた曲で、テレビなどで聴く静かな曲や歌なら、メロディーはわからなくても、昔のイメージを思い出して、歌手の口元や字幕も参考にして聴こうとしますね。しかし、イントロや歌い出しが、自分のイメージと少しでもズレてしまうと、今どこを演奏しているのかわからなくなりますね。ですから、根気よく、毎回曲を聴くことを習慣づけていくことにより、自分のイメージと曲がマッチしてきます。

【3】王道は『生演奏』に触れること
 私も、人工内耳で初めてコンサートを聴きに行ったときは、楽団の演奏は雑音にしか聴こえなかったものでした。
 ですから、人工内耳装用の当初は、ソリストによる独演会などがお勧めです。私の場合は、チェロの独演会でした。まだメロディーまではわかりませんでしたけど、チェロの音色を楽しめました。
 だんだん慣れてくると、オーケストラの演奏も聴きたくなります。ちなみに、私のお気に入りの曲は、クラシックなら、ラヴェル作曲の『ボレロ』、ドヴォルザーク作曲の『交響曲第9番新世界より・第4楽章』ですね。
 コンサートホールではいつも、後ろから舞台を囲む横側席が、音の出所が観やすいです。ストリングス(弦楽器の動き)を目で楽しみながら聴いてます。『ボレロ』は小太鼓のリズムがだんだん大きくなるにつれて、楽器の数が増えていくのを聴く醍醐味があります。初めてホールで『新世界より・第4楽章』を聴いた時は、自分のイメージと演奏を合わせようと、必死になって聴いていたのを思い出します。
 オーケストラに慣れてくると、「今どの楽器が鳴っているのか」もわかるようになります。その後は、友達の縁でジャズバーでも生演奏を楽しむようになってきました。

《広告》歯の黄ばみがごっそり取れて真っ白に・ブレスマイルウォッシュ

聴力を失った音楽のプロと人工内耳

【1】分かれ道
 聴こえなくなられたミュージシャンの方でも、補聴器をつけて現役を続けられてる方を知っています。
 ジャズのトランペット奏者、コントラバス奏者の方は、そのように、補聴器で頑張られてます。
 しかし、補聴器も使えなくなったミュージシャンの方は、音楽を諦められることもありますが、人工内耳で現役復帰を目指す方もおられます。
 ただ、人工内耳で言葉の聴き取りが可能となることと、現役ミュージシャンに復帰することとは、必ずしも一致しません。
 聴こえていた頃の音のイメージと、人工内耳の音が一致しないなどで、復帰を諦められたりもあります。
 けれども、人工内耳で果断に、リズムトレーニングから、現役復帰されたジャズベーシストの方を、私は知っています。
 音楽のプロの方にも、聴力を失いながらも、現役を続ける道が開けたのも、補聴器の発達や人工内耳の日進月歩の進化によるところが大きいようですね。

《広告》世界初の集音器『みみ太郎

【2】人工内耳の進化
 人工内耳は、耳の中の「蝸牛」に、細長い電極コイルを挿入し、失われた神経機能に代わることによって、外部装置から入った音を、直接脳へ伝えることによって聴こえる仕組みです。
 ところが、蝸牛神経の損傷の程度では、音声が聴こえても、満足できる音でない場合もあります。
 私の場合は、幼少期の発熱が元かはわかりませんが、片耳が全聾(右耳)でした。高校時代にもうひと片方(左耳)も聴こえなくなり、補聴器で補うその状態が30年続き、その後に人工内耳と出会いました。
 それから、18年になりますが(今も同じインプラント使用中)、その間の外部装置の進化は目覚ましく、今の機種(全く聴こえなかった右耳に装用)で、昔のイメージで音楽を楽しめるようになりました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?