見出し画像

庵野秀明氏のドキュメンタリーから見るシンエヴァと人間性

庵野秀明氏のドキュメンタリーを昨日見た。

周りの関係者が評する、宇宙人、謎な人、かわいいと思いきや爆弾を投下する人、等の所以とその実の裏側が垣間見えた気がした

結論、とても豪華で面白かった。

NHKスタッフとの衝突

番組の構成として視聴者に伝える点として大きく、

① 庵野秀明の素性・挙動・考えていること

② エヴァの制作過程・苦悩

の二つだと思う。

番組の途中で庵野氏がNHKスタッフとドキュメンタリーの撮影の仕方で異議を唱える箇所があるが、上記2点の食い違い、どちらに比重を置くかだと感じた。

確かに、②を伝える上では監督としての個人の動きを撮影しつづけるより、スタッフの制作過程や苦悩の姿を背景に、監督の考えていることをインタビューで声だけで差し込んでいれるほうが自然だ。

ただ、僕ら視聴者は①にも興味があるし、そもそも番組(仕事の流儀-プロフェッショナル)のコンセプトとしては、仕事内容よりも、仕事をする個人にフォーカスをあててピックアップする主旨のものだと感じた。

という経緯も踏まえて、ところどころNHKの撮影スタッフに「今日の外の暴風雨の絵も撮って使った方がいいよ」、など映画監督らしい演出・素材の助言をする等、それこそが庵野秀明氏の人間性が垣間見えて結果おもしろかった。

ドキュメンタリー番組に出る理由と人間性

なぜドキュメンタリーに出ようと思ったのか?の問いに対して、「商売をしようと思って」という回答だった。

その後続けて、「素性が謎のままで喜ぶ人が減った」、「表に出ないと置いて行かれる」などの発言から、宇宙人や謎の人と、強固な自分の世界に閉じこもりがちな人と取られがちだけれども、その実誰よりも自分の作品に対する客観性/触れる人の思考を汲み取ろうとしている人なんだと思った。

度々口にする、「面白さ」の追求:絵コンテの排除

画像1

度々、「~でなければ面白くない」/「これはつまらない」といった発言をしていた。

庵野氏の今回のシンエヴァ制作の大きな点として、絵コンテをまったく作成せず、プレビズを用いて絵作りを行うことだった。

このプレビズ(Pre-Visualization)は、広義では「あらかじめ、どういう映像を作るか目に見えるようにしておく」ということで、今回は絵コンテの前にミニチュアやセットを用いて動画のコンテを作成する、ということ。

「絵コンテは頭の中にある以上のものはできない」という発言の通り、まず素材を作り、そこから予想外に面白いアングル等を模索していくやり方。

アニメ業界の仕組みなどには明るくないが、「みんなまず絵コンテを作る、安心したいから」からも読み取れる、徹底的な作品主義、新しいことに挑戦する姿勢に、やはりどこからその原動力がきているのか気になった。

嫁の存在

各地でエヴァにおけるマリと評されている、夫人、安野モヨコ氏。

夫人も番組のインタビューに答えていて、容姿や、ひょうひょうとした語り口とそのどこか母性が感じられる言葉の内容から確かにマリかもと思わされ、シンエヴァ作品に影響を与えているのは間違いないのだろうなとは思った。

あと嫁視点でしか語れない、お菓子を隠れて食べる等の庵野氏のかわいい一面の発言も面白かった。

安野モヨコさんの作品は働きマンだけ見たことがあるが、それも併せて今回で少しぶっきらぼうで明るいとても聡明な方だなと思った。

というか夫人、溢れ出るエロさが凄かった。

自分の始めたことにケジメをつける

シンエヴァ自体にも一つのテーマとなっているであろう、「ケジメ」についても何回か言及していた。

「作品に対しても、スタッフに対しても、観客に対しても、ケジメをつけたい」と話しながら、度重なるスケジュールの遅延、ある程度できあがったものの全ての書き直し等、妥協しない「命を削って作品至上主義」の言葉に嘘はない行動

以上があっての、本編のセリフが心にくるのだと改めて感じた。

「なぜ作品を作るのですか?」→「それしか役に立てることがないから。」とさらっと言ってのけるのも、本心なのだと思う。

あと最後に、「プロフェッショナル」とは?と聞かれて「プロフェッショナル、って別に違いはないんじゃないですか。この番組のタイトルだけ嫌いだったんですよね。」にはさすがに笑った。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?