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DCM Atlasから次なるステージへ: M2Xが切り拓く設備メンテナンスの未来

DCMベンチャーズ(以下、DCM)は、設備メンテナンスのDXに取り組む株式会社M2Xに、3億円の出資を実施いたしました。M2Xは2023年1月からスタートしたシード投資プログラム『DCM Atlas』に第1期として参加いただき、DCM Atlasの採択企業としてシリーズAを迎える1社目の企業となります。

本noteでは、DCM Atlasに続いて今回の資金調達に至った背景や、DCM Atlasのプログラム終了後のM2Xの事業展開について、株式会社M2Xの代表取締役CEO  岡部晋太郎氏とDCMのパートナーである原健一郎の対談形式で深ぼります。

DCM Atlasプログラム期間中のM2Xの様子が知りたい方はこちらを✅


株式会社M2X 代表取締役CEOの岡部さん(左)とDCM Ventures パートナーの原(右)

株式会社M2X 代表取締役CEO 岡部 晋太郎
東京大学卒業後、総務省にてIT政策の企画立案を担当。その後、外資系コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループに入社し、製造業における中長期の戦略立案、DX等を担当。メンテナンスの重要性と可能性に惹かれ、2022年に株式会社M2Xを創業

出典:https://m2xsoftware.com/about-us/

本資金調達に至った背景

💬DCM: 改めて、今回のシリーズAの資金調達に至った背景を教えてください。
💬岡部さん: 未上場の調達ステージを考える際に、PMF(プロダクトマーケットフィット)があったタイミングがシリーズAだと思うんですが、我々の事業においても定量的には新規顧客の導入が進み、かつ1つの会社で複数工場への展開も起こっていて、結果としてDCM Atlasのプログラムが終了した1年前からARRベースで10x成長を達成しました。定性的にも顧客への刺さり具合やエンゲージメントの高さからPMFの兆しを確認し、これから成長を加速させるためにも営業やプロダクトの磨き込みにアクセルを踏むタイミングだと考え、今回の資金調達を決意しました。

💬岡部さん: 逆に、DCMとしてどういった部分を評価して投資の意思決定をしていただいたんでしょうか?
💬原: DCM Atlasのプログラムが終わってから、岡部さんとは月次で議論をする中で、まずセールスサイクルが明確に短くなっていて、かつ大きいロゴのメーカーへの導入が加速していました。このように強いPMFが確認できている一方で、営業人員は岡部さん+1名体制で、商談対応に岡部さん自身のリソースの多くを割いている印象があったので、ここでしっかりアクセルを踏んで採用に踏み切るタイミングだと思い、僕らから出資の提案をした形ですね。

B2B SaaSにおけるPMFの測り方

💬DCM: プログラム終了後の月次定例では主にどういったアジェンダで議論を重ねていましたか?
💬原: 事業アップデートと採用状況がメインです。ただ、その中でも岡部さんは『これって本当にPMFなのか?』という部分を特に気にされていたように思います。B2B SaaSは商談できる数も限られるし、toCアプリに比べて昨日のユーザーが100xに増えるみたいな明確なPMFのサインは見えづらい。一方で、M2Xには定量的なエンゲージメントの高さを示す指標や定性的な顧客のポジティブな反応があったので、それをベースに議論をしていました。
💬岡部さん: 世の中に出ているPMFの情報って、『うぉぉぉ、伸びてる!』みたいなインパクトが強いものがすごく多くて。それを想像していたので、今のこの顧客の反応が本当にPMFと呼べるのかの判断が難しかったです。なので、DCMの投資先やグローバルの事例を見ながら、B2B SaaSのPMFはどういうものか、エンゲージメント(顧客への刺さり具合)を図るためにどの数字を見るべきかを議論し、客観的に視点をアジャストしてくれたのはすごくよかったです。
💬原: 特にM2Xの場合は、PoC営業をかけていた初期から比較的順調に顧客獲得できていたので、特に差分が見えづらかったのかもしれない。その中でやっぱりすごく強いPMFがある、と思ったのは商談〜クローズするまでの期間(=セールスサイクル)が圧倒的に短くなったこと。ここは明確に数字上でもサインが見えていました。

💬DCM: 定性的な顧客の反応としては、どういったサインを見てプロダクトの刺さり具合を判断されていましたか?
💬岡部さん: 定性的な部分だと顧客自ら自社内の他部署の方にどんどん紹介し始めたり、僕らに代わって他社に対して営業のような動きをし始めていて、これは一つ明確にプロダクトが浸透したサインだと思いました。あと印象的だったのは、商談の中で僕が言ったキーフレーズを顧客が自分の言葉のように社内向けミーティングで使ったりしていて。そういった場面を見ると、M2Xとしてのバリュープロポジション(=ユーザーへの提供価値)が刺さっているんだなと感じました。
💬DCM: M2Xとして研ぎ澄ました価値がすごくシンプルで分かりやすいからこそ、お客さんも転用して社内に伝えやすく、結果として気づいたら社内に浸透している状態になっているんですね。

M2Xオフィスにてチームの皆さんと📸

研ぎ澄ましたValue propから見えるM2Xの事業拡張性

💬DCM: もう一つ、月次定例の中で『意外とこういうこともできるかも』というような事業の拡張性の議論も頻度高くしていたように思います。具体的にどういう議論をしていたか教えてください。
💬原: 大きく分けると機能の拡張性と領域の拡張性というこの2つの拡張性の軸で議論していました。まず機能の拡張性については、ちょうど岡部さんが起業した2023年初のタイミングはGenerative AIの波が来ていて、どうしたらAIを使って今のプロダクトをよりワークフローにもっと深く組み込めるか、もっとプロダクトとしてのインパクトを出せるか、をよく話していました。例えば、手袋している人が多い現場だとテキストがモバイルで打ちづらいから音声入力でだいぶ工数が減るよね、とか。
💬岡部さん: 自分は半分はプレイヤーをやってるので、どうしても目線が短期的になってしまうんですよね。その時に引いた目線で、『こういう攻め方あるんじゃない?』とか『ここが落とし穴だから前もってこういう打ち手を打つといいかも』と視点をもらえて、多分一人で起業してこういう議論の場がなかったら気づけなかったと思います。
💬原: よく起業家の方と話していて、『視座が上がりました』という意見を有難いことにいただくことがあるんですが、どういうことか聞いてみると、最初に自分が解決しようと思ってた課題よりも、議論していく中で『あれ?この市場もっとデカいじゃん』って起業家の方自身が気づくことみたいで。これが先ほど挙げたもう一つの拡張性である領域の拡張性の議論になるのかなと思っています。M2Xの場合だと、今の生産設備のワークフロー管理プロダクトでこういうデータをとっておくと『モバイルで入力が楽になる』だけではなく、上流、下流のワークフローにも深く組み込まれて現場全体の課題を解きにいけるんじゃないか、という議論は頻度高く行っていました。

M2Xの領域の拡張性イメージ

💬岡部さん: 加えて、DCM Atlasのプログラム初期に行ったバリュープロポジションの議論で、最初に課題を思いっきり絞りこんだからこそ見えてきているものだと思うので、課題の解き方や解く順番もすごく重要だったなと思います。
💬原: 仰る通り、この初期の段階でアグレッシブに絞り込んで、M2Xとしての価値をクリアに描いたからこそ次に狙えそうな領域の解像度も上がるし、より具体的に描けば描くほど長期的にできそうなことが想像しやすくなるんだと思います。逆に最初にふわっと『製造現場を変えるモバイルベースの設備メンテナンスSaaS』とかをバリュープロポジションにしちゃうとプロダクト展開や山の登り方は想像しづらくなると思う。

継続した仮説検証により格段に上がった領域解像度

💬岡部さん: DCM Atlas以外で逆に僕らのようなプロダクトがないような状態で起業家に会う場合はどのようにアドバイスをしてるんですか?
💬原: シード期の起業家の方に対する僕らのスタイルはDCM Atlasでも通常のシード投資でも基本的には変わらないです。先ほど話した会社としてのバリュープロポジションのアップデートも大事ですが、もう一つ大事なことは伴走期間における起業家自身の解像度の変化だと思っています。2年前の岡部さんはこの領域の営業において、恐らく誰に対してどうアタックしていくべきかが今程クリアには見えてなかったと思うんですよね。そこから顧客と会話をしながらラーニングを得て、B2B SaaSのGTM戦略や、こういうプロダクトを作って、採用もこういう人を雇うべきっていう解像度が高くなったからこそ、今この調達した3億円を上手く使える状態になっていて。"準備が整った"というのは事業のPMFがあることもそうなんですが、やっぱり岡部さん自身の解像度が明確に高まったことだと思います。

💬岡部さん: ラーニングで思い出したんですが、DCM Atlasの期間中ずっと原さんから『この1週間の学びはなんだったのか?』と毎週聞かれていて、あれすごく嫌だったんですよ。でもすごく頭に残っていて、実はDCM Atlasが始まる前はコールドコールをもっとふわっと投げていて仮説の検証ができている感じが全然しなかった。その後、とにかくセグメントをできるだけ切り刻んで思いっきり絞りこんでみて、『こういう切り口で絞り込んだターゲットにはすごく刺さるな』というラーニングをどんどん得られるようになってきて。仮説検証を繰り返し続ける意識をずっと持ち続けることはAtlasで学んだことの一つなのかな、と話しながら改めて思いました。
💬原: YCってよく週次で5-7%の成長率、10%達成できたら並外れた成長とか言うじゃないですか。週次で10%っていう目標が明確にあるとその数字に向かってがむしゃらにやるとは思うんだけど、結局本当に一番大事なのはそこに至るまでのプロセスの中でラーニングがたくさんあって、トップラインを伸ばすための解像度がその結果めちゃくちゃ上がること。このラーニングは複利で絶対そのあともずっと残っていくし、僕らのプログラムでも特に大事にしています。
💬岡部さん: 最初に原さんと蕎麦屋でランチをした時におすすめされたZEROtoONEを今でも何回も読み返すんですが、僕は起業の経験もないし、事業を作った経験もないから、その基本にとにかく忠実にやってみる重要性をすごく意識していて、それをやったことによる成功体験が得られたから、今の状態に繋がっていると思っています。
💬原: 多分みんな脳みそでその情報は知っているんだけど、それをやり切るのは相当意識しないと難しいと思う。岡部さんはそれを真摯にやっていて、やり切ったからこそ今ご自身でも既に気づいてる通り、2年前の初めて会った時と比べると全然解像度が違うんだと思います。もちろんこれからもいっぱい失敗もするしラーニングもあると思うけど、今のこの土台があれば安心してアクセルを踏む準備ができていると思います。

DCM Atlasでの議論を振り返って談笑中

独自の知見でたどり着いたGTM戦略

💬DCM: セグメントの話が出ましたが、Atlas終了時点ではターゲット顧客のセグメント選定の軸は試行錯誤中と仰っていましたよね。その後ここの仮説はどうアップデートされたんですか?
💬岡部さん: 1社目の顧客が飲料受託セグメントで、僕たちのプロダクトを使ってみたときに『なにこれ、すげえ!』っていう反応があって。さっきの話にも繋がりますが、やっぱり顧客の反応が一番重要で、その反応を信じてまずは飲料受託セグメントにアタックしにいく、というのが最初でした。
💬岡部さん: その後業界のワークフロー構造を深ぼってみると、例えば調味料メーカーではエバラ食品さんが導入してくださっていますが、一見調味料と飲料って異なるように思えますが、引いて考えると類似性が大きく設備トラブルが及ぼすインパクトが飲料同様に大きいことに気づきました。このように成功体験を基にアナロジーで考えて隣接領域を徐々に定めていきました。
💬原: 製造業の中でターゲットを絞るときに、やっぱり岡部さんの解像度がすごく高くなったんだなと特に感じました。『ターゲットを絞る』というと、よく矢野経済に載ってるような自動車製造とか化学品製造とかそういうカテゴリーになると思うんですが、M2Xの場合は矢野経済とかに載ってない表現でワークフロー視点の岡部さん独自のセグメントと山の登り方が見えているんですよ。こういう風にカテゴリーじゃない独自のセグメントを見つけていて、飲料、調味料、もしかすると他にも一見全然関係なさそうなセグメントが同じセグメントに見える、というのが『岡部さん自身の領域の解像度が上がった』ということなんだと思います。
💬岡部さん: 僕たちも試行錯誤を繰り返しながら、横軸をこの生産プロセスによる切り分けで、縦軸としてセグメントよりも細かい分類のサブセグメントで切り分けた時の交差点にいるセグメントにアタックをかけていきました。例えば、同じ製菓セグメントでも和菓子と洋菓子で全然生産プロセスが違ったりするので、それくらいの細かい粒度でどのセグメントにどういう順番であたりにいくかを議論しています。結果、マザーマーケットである飲料受託セグメントでは市場シェア15%までプロダクトが浸透してカテゴリーリーダーになりつつあり、製造業という大きい市場の打ち取り方は試行錯誤ながらだいぶ見えてきたなと実感しています。
💬原: 2年前とかはもう少し粗い切り方で、それこそ紙上のセグメントでここいけるかな、という議論をしていたと思うんですよ。それが1年かけて岡部さん自身がめちゃくちゃ詳しくなっている。実際に和菓子と洋菓子の工場に行ってそれぞれの工場のワークフローで何台の機械を使っていて、工場の規模はこの程度かな、みたいな想像ができるからセグメントで1括りにできている。それって相当詳しくならないとできないはずなんですよね。ちなみにこの1年で何工場くらい回ったんですか?
💬岡部さん: 工場数でみると恐らく100工場近くは回っているかもしれないですね。
💬原: 2年弱で100工場は相当密度あるラーニングが積みあがってますね。恐らく岡部さんが起業した2年前は、スタートアップというもの自体の方法論という意味で僕らの方が詳しい領域って結構あったはずなんです。でもいまや僕らより全然詳しくなっている岡部さんに、僕たちのほうからGTM戦略はこうで、工場はこういう風に取りに行く、みたいな話を言えない状態になっているじゃないですか。僕らが本当の意味で安心するのは議論や検証を進めていく過程で岡部さんの方が事業全体において詳しくなる瞬間です。もちろんファイナンスとか今後も違う分野で僕らのほうが詳しいことはまだ出てくると思うんですが、事業全体の解像度は明らかに岡部さんのほうが高いし、そのラーニングの頻度も傾きもちゃんと確保されているので放っておいてもどんどん詳しくなるようにラーニングの仕方が身についている。飛行機が飛ぶには滑走路で相当スピードを上げなきゃいけないと思うんですが、いまはまさに滑走路をがーーーっと猛スピードで走っている状態だと思う。で、どこに行くか、どう運転していくかももうわかっている状態なので、あとはもう離陸するだけ。逆に言うとこれからがM2Xとしての本当の離陸だと思います。
💬岡部さん: そうですね。引き続きラーニングとアンラーニングを繰り返しながら、『メンテナンスの価値の再定義』に向けて成長を加速するため、最高のプロダクトとチーム作りに励んでいきたいと思います。

次のAtlas応募者へ一言!

💬DCM: 最後に、DCM Atlasを改めて振り返って、これからDCM Atlasへ応募する起業家に一言お願いします。
💬岡部さん: 私がAtlasに応募した際にはアイデア以外何もなく、まだ起業家でも何者でも無かったと思います。まさしくゼロの状態から自分を起業家に押し上げてくれ、事業成長に不可欠なインプットをしてくれたのがAtlasだったと思います。ですので、あまり身構えず、社会を良くできそうなアイデアが少しでもあれば臆さずAtlasに応募されることをお勧めします!

岡部さん、インタビューありがとうございました!

DCMオフィスにてM2Xポロシャツを着て記念写真📸

🌟重要なお知らせ🌟

M2Xでは、シリーズAを迎えた今、さらなる成長加速に向けて絶賛採用募集中です。

✅『設備・メンテナンス』領域に熱い想いを抱えている方
✅ アーリーステージスタートアップの”右腕”人材ポジションに関心がある方
✅ メンテナンスってなんか面白そう!と思った方
✅ 一度岡部さんと話してみたい!という方

などなど

このnoteを読んで少しでも興味を持たれた方は、是非お気軽にカジュアル面談のご連絡をお願いします!

また、今回の調達に際して、M2Xさんのオフィスにて初のMeet-upを10月10日(木)に開催します!

ご興味のある方は以下のイベントページよりお気軽にお申し込みください↓


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