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Netflixオリジナル作品「Ultraman:Rising(ウルトラマン:ライジング)」感想

Netflixで2024年6月14日配信開始の映画『ウルトラマン:ライジング(Ultraman: Rising)』を視聴しました。
続編ありきの作風というか海外ドラマ特有のクリフハンガーなのですが本編だけでわかる内容から憶測混じりで感想を書いていきます。

結論から言うと…

最悪でした…

解散…

ってわけにもいかないのでとりあえず目次。
結構長いです。




問題点①主人公がやばい

ウルトラマンに変身する主人公のサトウ・ケンジ(以下ケン)は本業の野球の片手間で嫌々怪獣退治している。市民に悪態をつきながら怪獣と戦う姿は目を疑った。
野球の実力こそ高いがありえないくらい慢心していて監督に向かって「俺があんたを勝たせてやるよ」とほざく始末。とにかく戦士としても人としても最低レベルの主人公である。
まあ記者のアミとの絡みや怪獣エミを育てた事、そして父との和解で「調和」を大切にするようになり野球選手としてはかなり成長したし、何より父親の都合で戦わされたりメジャーのスター選手から巨人軍になったり散々な目に遭っているので同情の余地はある。
怪獣を倒さない作風のためか本作での変身後の活躍は子育てとせいぜい防衛軍の邪魔くらいだ。

えっ!?防衛軍の邪魔をするウルトラマンなんているんですか!?



問題点②父親もやばい

ケンの父親であるサトウ教授(以下サトウ)は怪獣ジャイガントロンを「この世で最も崇高な生物」と形容するマッドサイエンティストだが特に改心することはない。あの山根博士でさえゴジラの大破壊を見て考えを改めたのに、である。
ケンを自分の都合で日本に呼び戻し散々こき使う最低の男で、もし同じく海外との合作である「ウルトラマンG」にサトウが出てきたらほぼ確実に敵だっただろう。
ちなみにこいつもウルトラマンで、30年前に初めて飛来しベムラーを倒したかのような描写がある。
というか本作のウルトラマンって何なんだ?
てっきりウルトラマンが一体化している人間がサトウからケンに変わっただけだと思っていたら最終決戦では普通に二人のウルトラマンが並び立つのだ。
サトウが擬態型か一体化型かはわからないが作中の情報だけで憶測するなら、人間の女性を孕ませてガキを作り、そしてウルトラ遺伝子を受け継いだケンに使命を押し付けた…という事になる。
もしそうなら仮面ライダーリバイスの両親に並びうる毒親だと思った。

ここ、笑う所で合ってる?



問題点③ヒーロー不在かつヴィラン不在

本作の怪獣は冒頭で「ヒーローではないが悪党ってわけでもない」と訳の分からない定義付けがされる。それはまあいい。人間と怪獣の戦いは単なる生存競争でありそこに善も悪もないからだ。
さっき紹介した通り出てくるウルトラマン二人がこのザマだからせめて防衛軍くらいはマトモであって欲しいが、本作の防衛軍であるKDF(怪獣防衛軍。以下KDF)はエミを狙っているためウルトラマンと敵対関係にある。は???
一応KDFの隠田長官がヴィラン枠ではあるんだが、コイツがそんなに悪いやつに見えないのだ。
やろうとした事はシンプル。怪獣の殲滅である。怪獣によって家族を殺された事からウルトラマンを「私の家族を守ってくれなかった」と憎んでこそいるが、復讐鬼というわけでもなく一番の目的はあくまでも人類の平和を守ることである。
一応「もうひとつの正義」「手段を選ばないダークヒーロー」のつもりで描いているのだろうが如何せんヒーロー不在なので唯一のヒーローにさえ見えてしまう。

問題点④怪獣に対するスタンスが謎

本作では基本的に怪獣は保護すべきものとして描かれている。ジャイガントロンに対し「このままじゃお前は殺されるぞ」と警告したり「KDFは怪獣に容赦がない」とか言っているから不殺主義なのかと思えば、実はそうでもない。
ネロンガには普通にスペシウム光線を発射しようとしていたし、冒頭のベムラーは恐らく駆除されたと思われる。

問題点⑤ヒロイックさに欠ける

ヒーローもヴィランも不在なのでアクションは当然クソつまらない。ケンがウルトラマンに変身してやる事は怪獣エミちゃんの餌やりや介護であり、八つ裂き光輪もKDFのドローンを破壊するだけ、スペシウム光線は不発、最終決戦くらいしかまともな戦闘シーンがない。
主人公の不殺主義も「主義」と言えるほど確固たる考えは持っていないのでなんの面白みもない。「ウルトラマンコスモス」の春野ムサシのような環境テロリストならまだ面白かったかもしれないが。
せめて「ジャイガントロンを殺してしまったウルトラマンが残された子供怪獣エミを責任もって育てる」みたいな内容なら最低限のヒロイズムは担保できたのではないか。
それができなかったとしてもケンと隠田が思想をぶつけ合うシーンを入れても良かったのではないか。

問題点⑥シンプルに物語や演出の粗が目立つ

怪獣保護路線なのに作中に出てくる子供達は「ウルトラマン=スペシウム光線で怪獣を倒す存在」という認識だし、アミは仕事場にガキを連れてくるし、ジャイガントロンは普通に生きてるせいでエミの孤児の悲哀は消えてなくなったし、自信ありげな日本風景も過度なネオンのせいで中国にしか見えない。
あと隠田の計画がありえないくらいガバい。怪獣島を破壊すれば怪獣を殲滅できると本気で思っているのだろうか?


まとめ

ウルトラマンの使命は戦うことではなく調和を見つけること…らしい。そんな本作のクライマックスではウルトラマン、先代ウルトラマン、ジャイガントロン、エミが同時に光線を放ち隠田長官が操縦するスーパーロボットを破壊した。
もうわかっただろう。本作が言うところの「調和」とは、ただの人間を4対1でリンチすることである。 
なぁんだ。本作、ちゃんとヴィランいるじゃないですか。
この調子でヒーローも出して欲しかったです。 
という冗談はさておき。
「ウルトラマンコスモス」や現在放送中の「わんだふるぷりきゅあ!」など優しさや非暴力を謳う作品は「優しくない存在」が出てきた途端に血相を変えて人格否定する非常に高い暴力性を持っている。
本作もその例に漏れないとても暴力的な作品でした。




最後に

お前、商品展開が強気すぎるだろ…。



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