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あなたは空を翔んでいますか?┃Essay

アイタタタタ・・・
突然の膝の痛みに立ちすくんでしまった

ああ、オレも歳をとったなぁ

道路脇の柵に手をかけ、痛みが治まるのをまった
こんな痛みはこれで二度目だ

運動は心掛けているのにと思いながら、思わず空を見上げた
空の青さに心が癒やされた

しばらくじっとしていたら、痛みはなくなった
ふうっとため息をついた

これで家に帰れる

私の脇を子供が走り抜けた
なんとか体を交わしてぶつからないですんだ
その子供を笑顔で見送った

若いっていいなぁ・・・心の底から思った

子供の走る姿を見ていて気が付いたことがある
子供はチョコン、チョコンと地上を足で蹴るだけで、身体は殆ど空中にいる

おお、子供は空を翔んでいる

なるほど、若いということは空中にいる時間で決まるんだ
赤ん坊は母親に抱っこされたり背負われたりして、足を地上に着けることがない
幼い子ほどいつも飛び跳ねていて、殆どの時間を空で過ごしている

それに引き換え、私は空中にいることは殆どない
右足を運ぶときには左足が地上に着いている
身体が地上を離れることはないのだ

それでも、まだ片足が地上を離れ、空中にある

両足が一瞬たりとも地上を離れなくなるだろう
それが歳というものだと思った

わたしは、もう長いこと空を飛んでいない・・・
二本足で歩くことが難しくなったから、三本足になった。

二本の足だって、地面から離れることはなくなった
いつも、地面の上を引きずりながら歩いている
私の足の裏は、空を忘れてしまったも知れない

それでも、交互に動いて前に進むうちはいい
いずれそれも叶わなくなるだろう

そうなったとき、私は空を翔んでいるだろう




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