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〈連載#1〉コロナ禍の「ワークライフ・カオス」から生まれるものとは?

『境界線が溶けゆく時代のインナーアクティベーション』
note連載 第1弾

コロナウイルス禍は、社会のあらゆるものがつながっていることを、私たちに再認識させました。職場と家庭。対面とオンライン。企業と社会。これまで当たり前に存在していた「境界線」が溶けてゆく。その流れは、ますます加速していくのだと思います。
そんな時代に、組織をどう活性化させるか。働き方を、どうデザインしていくのか。
「企業を内側(インナー)から動かし、事業や経営を良い方向へ変化させること」をミッションとして活動してきた電通ビジネスデザインスクエアのインナーアクティベーション・チームが、識者との対話を通して考えていきます。

今回は連載の第1弾として、テレワークを推進してきたネクストリード株式会社代表取締役の小国幸司氏をゲストに迎え、インナーアクティベーション・チームの江畑潤がリモート対談を行いました。

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ネクストリード株式会社
代表取締役 小国幸司

ネクストリードは、企業のデジタル推進と、成長の基盤をつくるマーケティング支援の二つの軸でサービスを提供。並行して日本テレワーク協会の客員研究員として、中小企業がテレワーク導入にとどまらず、本質的に定着させるためにはどうすべきかを考える中小企業部会の部会長としても活躍。また、総務省が費用を負担して、テレワークを導入したい企業に必要な各分野の有識者を派遣する「テレワークマネージャー」制度の支援や、厚生労働省の事業では全国で実施されるテレワーク体験型セミナーの講師も務める。

子どもの頃に夢見た未来のワークスタイルって?

江畑:日本でなかなか進まなかったテレワークが、コロナ禍と緊急事態宣言下にあって急速に進みつつあります。

長年にわたってテレワークを推進してきた小国さんは現在テレワークを含む企業のデジタル推進とマーケティング支援をされていますが、ネクストリード株式会社立ち上げ以前から企業のテレワークを推進してきた、いわばテレワークの第一人者です。そもそも小国さんがテレワークに取り組むようになったのは、どんな経緯があったのでしょうか?

小国氏(以下敬称略):子どもの頃に「未来のワークスタイル」という新聞記事を見て、IT業界に入ろうと決めました。その記事には「IT技術者が100万人不足する」と書いてあって、「不足するなら自分が10万人ぐらいの力を出せたらいいんじゃないか」と思ったのです。それで最初は小さい会社でプログラマーを始めたのですが、プログラマーとしてはセンスがありませんでしたね。当時のエンジニアはコミュニケーションが苦手な人もいて、私が他の社員に“翻訳”して伝えることが多かったので、難しいことを簡単に伝える営業やITマーケティングの仕事に転向しました。

その後、マイクロソフトに入社し、最後4~5年ほどSkype for Business/Office 365のプロダクトマネージャーをしていました。ある時、中小企業の方たちにテレワーク推進活動に参加するモチベーションをヒアリングする機会があったのですが、ITなどのサービスを提供する会社と中小企業にギャップがあることをすごく感じたんですよね。そのギャップを埋めて中小企業がITを手段としてうまく活用して本業にインパクトをもたらすためのお手伝いがしたいと思い、ネクストリードを立ち上げました。


働き方は、「元に戻る」ではなく「先へ進む」

江畑:コロナをきっかけに、テレワークを推進する組織が急激に増えました。テレワークを推進してきた小国さんに、世の中が追いついてきているように感じます。今、どんな変化を感じていますか?

小国:テレワークという言葉自体は、国が主導した働き方改革によって、ここ2、3年で徐々に盛り上がってきてはいましたが、やはりここ2カ月ほどで、導入率が一気に上がったことは実感しています。テレワークに限らず、リモートでコミュニケーションをとるのが当たり前になっており、「クライアントにリモートで打ち合わせをしたいと言われたけど、対応できなかった」という話をされる方もいました。特に経営者は、テレワークの必要性を切実に感じる機会が増えているようです。

そしてテレワークに限らず、コロナ禍で変化した働き方は「いずれ元に戻る」ことを想定していた人たちも、今はもう「元に戻るのではなく、先に進む」という感覚になっているのではないでしょうか。

もちろん、「今までは普通に歩いていたのに、コロナによって泥に浸かるような悪い状況になった」「元に戻りたい」と感じている人はいると思います。でも逆に、今まで柔軟にコミュニケーションができていなかった人にとっては、「実はこのテレワーク環境になってからのほうが快適で、泥から上がって歩けるようになっている自分を実感した」という人もいますよね。

これまでは頭で考えて除外していたものを、この2カ月間で体験せざるを得ない状況になりました。「考えて除外する」から「体験して取り入れる」というモデルに変わってきている印象を受けています。

江畑:強制的に体験することによって「実は今までが泥に浸かっていたことに気づく」というのは面白いですね。少数の先駆者だけではなく、大多数がその状況を経験することで、一気に共通言語ができたとも言えそうです。

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●コロナを抜けて元に戻るのか?先に進むのか?

ワークとライフの境界線は溶けてカオス状態へ

小国:今までは、例えばテレワーク導入でも、賛成派と反対派の二項対立のような状況がありました。しかし、今回多くの人が離れて仕事をする体験をしたことで、考え方にも変化が出てきているようです。

テレワークに100%賛成派だった人も、実際にやってみたら対面でコミュニケーションすることや雑談の大切さに気づいて、反対派に少し動いたりしています。逆に反対派だった人が、出社できないのでやむを得ずテレワークを取り入れたところ、そのメリットを実感したり。色をはっきり分けた二項対立だったものが、中庸の価値観というさまざまな色が出てきて、グラデーションが出てきたと思います。

江畑:グラデーション化している働き方や意識は、コロナ収束以降も残ると思いますか?

小国:グラデーション化している状況は、もしかすると途中経過なのかもしれません。グラデーションもズームインしていくと、一つ一つの色に分かれています。表現が難しいのですが、結局は人間だと思っていて。今回みんなが同じ体験をし、個人の考え方やバックボーンが重要で、一人一人違うことがよりはっきりとわかってきていますよね。今までも組織には多様性が重要だと言われてきましたが、その考えがいっそう深まるのではないかと思います。それぞれの意思がより尊重されるようになっていくのではないでしょうか。

また、家庭と仕事のバランスも、従来はオンとオフをはっきり分けて切り替えていましたが、テレワークをする中、細切れで混ざり合うような経験をしている方も多いのではないでしょうか。ワークとライフのバランスにもグラデーションが生まれています。

江畑:細切れで混ざり合うというのはすごく大事なポイントですね。
コロナ禍の中で起きた変化のひとつに、ワークとライフの境界線が融解する現象があると思っています。これまでは、会社がワーク、家がライフという区切りができていたけれど、その境目は一気に曖昧になりました。仕事のきりがついたところで炊飯器のボタンを押しに行って、一秒後にはパソコンに向かうような混沌とした状態が起きていますよね。

言ってみれば「ワークライフ・カオス」という状況が起きている。歴史を辿れば、ワークライフ・バランスという言葉で仕事と私生活を両立することを謳っていた時代から、徐々にワークライフ・ミックスやワークライフ・インテグレーションの言葉が表すように適切に統合することを目指す時代へ徐々に変化してきました。でも、今回のコロナウイルスの影響で、
一気にワークとライフが近接し、多くの人がそのカオスな状況の中で仕事や暮らしと向き合っています。

小国:生活が一変してまさにカオスですね。今ってすごくおさまりが悪くて、気持ち悪い感じがしませんか?仕事や家族との距離感など、自分の立ち位置をどこに取るべきなのか。ただ、今の経験が、何年か経って普通になったときに、自分を形成する何かになっている気がしています。何かを決めるときも、この経験があったうえで決めることが重要になってくると思うので、今のおさまりの悪さを覚えておきたいですね。

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●ワークライフ・バランスから、ワークライフ・カオスへ。


「ワークライフ・カオス」から大切なものを再定義する

江畑:テレワーク環境になってワークライフ・カオスな状況が生まれていますが、むしろこの状況だからこそ生まれるポジティブな変化を捉えることが、これからの組織や働き方を考える上で重要だと思います。韓国のGS Caltexという石油会社では、テレフォンオペレーターにつなぐ前の保留アナウンスの中で、これから電話に出るオペレーターのライフ側の情報を家族が紹介するという取り組みを実施したところ、クレームが減ったという話を聞いたことがあります。今まではワークとライフを混ぜずにスイッチを切り替えることが美徳とされていましたが、ワークの中でライフをオープンにすることで得られる効果もありますよね。

小国:以前お話を伺った、江畑さんたちが実施されているワークショップも、ワークの中でライフを発揮するという点で、考え方が近いですよね。

江畑:インナーアクティベーション・チームは、社員の働きがいを引き出すひとつのアプローチとして、社員の個を発露させて仕事と結びつけることが、結果的に企業の成長につながっていると考えて活動してきました。

例えば、『オリジナルカタガキワークショップ』。会社から与えられる「Must」と、ライフ側も含めた自分が叶えたい「Want」をミックスして自分らしい肩書きを作ることを通じて、社員のみなさんに働きがいを見つけてもらえるような機会を設計しています。

また、職場の中での『ライフシェアリング』も設計してきました。例えば、「自分の大切なもの」を持ち寄り、プロのカメラマンに社員一人ひとりのポートレートを撮影してもらう。それをポスター印刷して、全社員が必ず通る会社の廊下にズラーっと貼り出す施策を行った時は、同僚のライフ側の一面を知ることができて社内コミュニケーションに変化をつくることができました。

ワークとライフを融合することで働きがいを生んだり、ライフを公開することで心理的安心や相互理解を促進し、社員同士の関係性を向上させたり。それらが企業の成長にもつながるという設計になっています。この考え方はこれからますます重要になっていくのではないでしょうか。

オリジナルカタガキ

●ライフをワーク側に発揮する気づきをつくる『オリジナルカタガキワークショップ』

小国:オフラインで実施していたことを、オンラインで行うことになる中で、関係性の良さを企業の力にしていくことは大事ですよね。これからの時代に必要になるマインドを育てるための、土壌を耕していた感があります

江畑:今のこのワークライフ・カオスの状態は、実はチャンスなのではないかと思っていて。グラデーションやカオスを、一過性のもの、悪いものとしてではなく、新しいものが生まれるきっかけと捉える思考が重要な気がします。

小国:今までの「密の時代」に大事だったものが、実は無駄だったことに気づいたり、今までそれほど重要視していなかったものが、実は大切だと気づいたり、そういうことが組織や働き方にも出てきそうですよね。自分たちにとって何が重要か、再定義する必要があります。

江畑:同感です。それぞれの会社に合った新しいスタンダードを整理することになりますよね。先の話にもありましたが、「元に戻るのではなく、前に進む」。デジタル化することを良しとして一方向に進むのではなく、逆にアナログである価値に目を向けて、いかに自分の会社に適合したトランスフォーメーションを起こしていくかを、各社議論をしていく機会が増えそうです。

先ほど小国さんのプログラマー時代のエピソードで「翻訳」という言葉が出てきましたが、これからの時代は論争が生まれる間に立って、翻訳する行為も重要になってくるのではないでしょうか。

小国:私の言う「翻訳」とは、組織の中にある人の違いを埋める行為のことを意味しています。企業には総論で判断しがちな経営層がいる一方で、各論でしか話せない人もいる。以前から両者の間に立って「翻訳」を担う仕事をしてきました。おっしゃる通り“AFTERコロナ”の時代には今までに増してさまざまな論争が生まれると思うので、翻訳して伝える人が介入して、これからの時代に合った新しいルールをつくっていけるといいですよね。

江畑:ワークとライフの境界線が溶けていく中で、組織や働き方も変わっていく。だからこそ、異なる意見や価値観の間に立つ存在が必要ということですね。答えを誰かが持っているわけではなく、正解がないからこそ、企業ごとに「納得解」をつくることに、インナーアクティベーション・チームも力を発揮できるのではと思いました。

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●翻訳者が間に立ち、組織ごとに新しいスタンダードを見つけていく

今回の対談を通じて、グラデーションやワークライフ・カオスの状態を、いかに組織や働く人の成長につなげていけるかを、インナーアクティベーション・チームとしてサポートしていきたいと感じています。「元に戻らず、前に進む」。その実現のために、活動していきたいと思いました。本日は、ありがとうございました!

(※この対談は2020年5月13日に実施したものを編集しました)

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●お問い合わせメールアドレス: ia@dentsu.co.jp
●電通ビジネスデザインスクエア: https://dentsu-bds.com/
<この記事を書いた人>
江畑潤
株式会社電通 | 電通ビジネスデザインスクエア
インナーアクティベーション・スペシャリスト/コピーライター
「ひとの全能力発揮」を個人テーマに活動。「クリエイティビティで組織を内側から動かす」ことを目指す『インナーアクティベーション』のチームリーダーを務める。肩書きを転々としてきた経験をいかして、自分なりの仕事のつくり方を探求中。
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