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卵と私の7日間伝説

卵と私の7日間伝説

ある朝目覚めると私は白い壁の中にいた。

硬い殻のような場所だった。

私は手を伸ばしてみた。

透明な膜が貼ってあって私を包み込んでいた。

私は人差し指でその白い壁を突いてみる。

パリパリと音を立ててその壁は割れていった。

私は外に手を伸ばしてみた。

そこは名もなきレストランだった。

お客さんが何人か私の方向を見る。

エヘヘと漫画みたいに私は笑う。

彼らはまたおしゃべりを始める。

私はお店の中を探検してみることにした。

よく見るとブラウスとジーンズしか着ていないことに気がついてお店の中の寒さに震えた。

「すみません、毛布持ってませんか?」

長袖の人に声をかける。

長袖の人は私にカーディガンを掛けてくれる。

「上着持ってないんですか?」戸惑ったような表情でその人は私を見つめる。

「はい、今生まれたばかりなので持ってません」

「そうですか。そういうことってよくありますよね」

「たまにあるかと思います」

「刷り込みって知ってますか?」

「なんですか?」

「最初に見た人を親だと思っちゃうっていう...」

「ああ、知らないですね」

「それになってませんよね?」

「なってますけど...」

「やっぱり」

「自分でも無意識なんです」

「ついてくるつもりですか?」

「それは...そうですけど、あたりまえですよね?」

「まあ、自然界のセオリーではありますよね...」

「摂理通りですよね?なにか問題ありますか?」

「無問題。無問題です。でも?私、まだ19歳...」

「私は、まだ0歳ですよ?問題ありますか?」

「いや、労るべき対象はあなたでしかありません」

「ですよね?奇跡に近い光景ですよ。これ?」

「わかります。目が輝いてますね?」

「そりゃそうですよね。ママですもんね?」

「だよね、だよね。理解に行動が追いつかない。心の言葉がすべて溢れてしまう。私は逃げ出したいがこの人は私をママと言う...」

「本音じゃないですよね?」

「本音ですよ?わからないですか?」

「赤ちゃんにそれは酷でしょう?」

「あなたの言葉ぜんぶ大人びてて怖いんですけど?」

「私生まれ直したんです」

「なにを言ってるんですか?人類ですか?」

「新人類でしょうね?」

「ニューマンですか?」

「それなんですか?」

「新人類って意味ですよ?」

「ですか?そうですか?そうですか?」

「さっきからなにを言ってるんですか?」

「自分でも言葉が頭に追いついていない事実を受け入れることができないで戸惑っております」

「あなた毛布ないってだけで赤ちゃんでもなんでもないでしょ?」

「バレました?卵に閉じ込められていた謎の人間です」

「もう三日経ちましたよ。不毛ですよね?帰らせてください」

「あなたが私をお世話してくれるまで帰りません」

「ここどこか知ってますか?」

「知ってますよ?」

「なんで私たちは東京タワーの展望台でデートしてるんですか?」

「楽しそうだからですよね?」

「あなた私と付き合いたいだけでしょ?」

「バレました?レストランであなたと出会ってからずっと一緒にいたくて仕方ないんです」

「刷り込みですよね?」

「違いますよ?運命の出会いってやつですよ?赤い糸がんじがらめですからね?はい?」

「ずっと指のところに赤い紐絡ませる遊びやめてくれませんか?いい加減内出血ひどいです」

「ごめんなさい。ミサンガ切れました」

「なに願ったんですか?」

「あなたがママじゃなくて私の恋人になりますようにって。問題あります?」

「いやないですよ。私も短冊に同じこと書いてしまいました」

「私たち両思いでしょうか?」

「違いますよ?」

「じゃあなんなのさ?」

「もう家族ですよ」

「なんでそう証明できるんですか?」

「あなたの右手」

「ハンコ押してますね。婚姻届いつのまにか双眼鏡に貼り付いてました。私が覗いてたのは2人の未来だったんですね」

「そういうことですよ」

「あと1日であなたと出会ってから7日間が経ちます」

「あしたはどうしますか?」

「ハネムーンに行きたいです」

「どこがいいですか?」

「海というものを見てみたいです」

「私はあなたの願いを叶えたいです。私にはあなたしかいません。結婚してくれませんか?」

「はいあなたのためなら生きていけると思います。よろしくお願いします」

「いつまでもそばにいてください」

「世界で一番あなたが好きです」

「私もです」

2人は海辺をオープンカーでドライブしている。

ウエディングドレスがよく似合う。

「とても綺麗です」

「あなたも見違えるようです」

「ここは思い出の場所です」

「私は昔海で生まれました」

「海で?」

「そうです。たくさんの卵の中の一つから生まれました」

「あなたも卵から生まれたんですか?」

「実はそうです。あなたと一緒です。ずっと黙っていようと思いましたがあなたが可愛すぎてしゃべってしまいました」

「あなたの本心が聞けて嬉しいです」

「だからこれからは一心同体です。ずっとあなたを守ります」

「心が愛で満たされるようです」

#原宿グルメ 🤍

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