桜散る道
薄目で見ると雪に見えそうだ。足元に薄桃色の花びらが積もっている。さくら名所百選に選ばれたことも納得だ。
10年以上前のことだ。広島市内から鈍行列車で尾道へ1泊2日のひとり小旅行に行った。
肌寒さの残る春。月並みだが当時の彼氏と別れた。
センチメンタルジャーニーかよ、と自嘲しながらの旅。
飲み屋で出会い、まともな職につかず、見栄っ張り・嫉妬深い・遠距離。「早く別れたらいいのに」と友人に鼻で笑われ、苦笑いもした。この人は運命の人だ、と惚けていた。結局、彼の嘘が露呈して別れた。運命の恋なんてそんなものだ。
一歩一歩、新しい靴で花弁の敷かれた石畳を歩く。その度靴ずれが少し痛んだ。でも不思議と気にならない。これからは彼の気持ち振り回されず自分の道を歩ける。それがこんなに自由で不安定なことなのかと感じた。
桜の下で伸びをし、私は私を歩かねば、と心に決め。
桜散る尾道を歩いたことは、別の人と結婚した今も思い出す。
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