無料の魔力(フリーミアム戦略)

無料には人を引きつける強力な力があります。最近は無料を利用したセールス手法やビジネスモデルがあちこちに見られます。このようなセールス手法は、フリーと呼ばれます。例えば携帯電話の端末を無料にして、月の利用料で稼ぐという手法はフリーを利用したセールスの一つです。また無料でWebページを公開し広告料で稼ぐのもフリーを利用した一例です。フリーは無料に弱い人間の特性に着目したセールス手法です。

ところで、あなたならどちらを選びますか。

①iTunes Storeの500円分無料券
②iTunes Storeの7割引1000円券  

いかかでしょう。①の500円分無料券を思わず選んだ人が多いのではないでしょうか。 しかし冷静に考えると、7割引1000円券だと、300円支払うことで1000円の買い物ができます。つまり700円得する計算です。無料券500円分よりもさらに200円お得です。ところが意外に、無料という言葉に惹かれて①を選んでしまいます。

フリーミアムとは?

フリーミアムの概念は2006年に投資家のフレッド・ウィルソン氏が提唱したものです。「フリー」(無料)と「プレミアム」(割増)を組み合わせた造語です。

フリーミアム とは、ソフトウェアや コンテンツ 、ネットサービスなどの提供方式の一つで、基本的な機能や内容を無償提供し、高度な機能や充実した内容を有償で販売する手法です。
従来、完全に有料の製品やサービスは敷居が高くなかなか顧客が増えず、一方で広告収益モデルなど完全無料の方式では製品やサービスの提供を維持するだけでは、十分な収入を得られないというジレンマがありました。そこで、 フリーミアムはこれを改善する課金モデルで、基本的な内容を無料で提供して利用者を惹きつけ、気に入ってくれた利用者にオプションとして高度な内容や便利な機能を販売する手法を取り入れたものです。

サブスクリプションとの違い

フリーミアムでは無料で価値を感じてもらい有料へつなげることでしたが、サブスクリプションは、継続課金のサービスとなります。ただ最近では、フリーミアムからサブスクリプションへつなげる方法が主流になってきています。
サブスクリプションは継続課金の仕組みになりますので、いかに継続をしてもらえるかが重要になってきます。
フリーミアムでは継続課金というよりは、無料で価値を感じてもらい本来買って欲しい商品を販売することになりますので、商品やサービスによっては単発で終わるものもあると思います。逆にサブスクリプションは継続課金になるので、単発で終わるビジネスとは違って初期広告費に大きく予算を導入できるものになります。

フリーミアムサービスの成功事例について

Microsoft Office365や、Google Workspace

Microsoft Office365やGoogle Workspaceもメール、ストレージサービス、会議ツール、チャットツール、オフィスツールなどをWEB版で無料使用できます。無料の範囲には、利用人数やデータ使用容量に制限があるため、有料にすることで、その利用範囲が大きくなります。ビジネスの規模や取引先との連携を考慮して有料版に更新することを検討することが多いです。

Eight

Sansan株式会社の提供するクラウド上の名刺管理システム、Eightです。スマホのカメラを利用することで、簡単に名刺をクラウドに登録できます。スマホを使えば社外にいても利用できます。このような名刺管理システムは無料版でも十分使えますが、会社全体で、セキュリティ管理や、CRMやMAの流し込み、API連携、名寄せ機能を活用するためには、サービスのグレードを上げる必要があります。

Zoom

日本でもテレワークが浸透したことにより、学校や学習塾、大学でもリモート授業や講義が実施されています。もともと、Zoomは、シスコ社のテレビ会議システムの開発を担当していたエンジニアが独立して始めたサービスで、少ないリソースでもテレビ会議が実現できる点が特徴の企業向けテレビ会議システムです。Zoomには、時間制限があるものの、無料でサービスを利用できる点、および、アカウント登録なしで外部の方を招待できる点が話題になり、テレビ会議が必要となった多くの企業や学校で採用されました。

Zoomが成功したポイントは、従来設定が難しいとされていたテレビ会議を、誰でも簡単に導入できるようにした点です。そして、人数規模や制限時間を増やす為には、アップグレードする必要があります。

このように、フリーミアムとは、こうした従来の常識を覆す技術の進歩と、とても相性の良いビジネスのやり方なのです。

最後に

もちろんnoteもそうです。無料で充分利用できますが、クリエイターの成長に伴い、プレミアムプランが用意されています。このようなフリーミアム戦略の拡大には、限界費用ゼロのクラウドサービスの浸透が背景にあります。もちろん回線やプラットフォームの限界があるので一定数を超えた段階でさらなる費用はかかりますが、その一定数までは追加の費用を使わずに顧客を増やすことができます。今後、クラウドサービスを検討していく上では、顧客アカウントをどのように増やしていくか、離脱を防ぐ改善は何か?、有料プランに結び付ける機能や価値は何か?など、ますますクリエイティブな視点を磨いていく必要がありそうです。

限界費用ゼロという言葉は、以下の書籍で有名になりました。ご参考まで

最後までお読みくださりありがとうございました。


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