見出し画像

いつも「時間がない」あなたに

うまいタイトルですよね。この書籍を見たときに感じた感想です。コーチングをしているときに、クライアントが行動できない一番の理由はこれです。「時間がない」。今回は、書籍にある欠乏の行動経済学について整理しました。

いつも時間に追われていて、なかなか同じ状態から抜け出せないのはなぜなのか。本書の著者2人は、経済学に心理学を組み込んだ「行動経済学」の専門家です。時間の管理が苦手な人以外に、何度ダイエットに挑戦しても長続きしない人、それなりの収入はあるのに借金を重ねてしまう人などを取り上げています。これらの原因は、その人個人の資質でなく、時間やお金などの「欠乏」が人の行動に潜在的に与える影響があるようです。

欠乏は集中を生み、目の前のもの以外が見えなくなるトンネリングを引き起こす

締め切りが迫った仕事がある場合、知らないうちに頭はそのことでいっぱいになる。目先の欠乏に対処することだけにひたすら集中する「トンネリング」の状態を引き起こします。トンネリングは、能力や生産性を高める一方、それ以外のことはすべて意識の外へ締め出されてしまうという代償も伴います。目先の欠乏に対処することだけに集中してしまい、本当に大切なことや、放っておくと将来困るようなことも無視されてしまう現象を陥ります。

「欠乏」により問題の処理能力が落ちる

何かが欠乏していると、無意識にそのことが心を占拠します。それにより論理的に考え問題を分析し解決する処理能力を低下させます。つまり、個人の資質や能力に関係なく、誰もが時間やお金が不足すると処理能力が落ちるということです。その結果、賢明な判断を下せなかったり、抑制が利かなくなったりして、さらに苦しい状況に陥ってしまうようです。また欠乏への集中というものは無意識であり、人の注意を引きつけるので、ほかのことに集中する能力を邪魔してしまいます。
欠乏は、重大な心配ごとが連続発生することと言えます。貧しい人はひっきりなしにお金の心配をしなければならず、多忙な人は、時間の心配と戦わなくてはなりません。

その場しのぎが次なる問題を生む

今週の予定をこなすのに精いっぱいで、翌週の予定にまで気が回らない。そんなときは、翌週に起きることが事前に予想できたことであっても、まるで不意打ちのように感じてしまう。目先の問題の応急処置だけをしていると、それが次の新しい問題を生み、どんどん深みにはまっていく。そうするうちに「欠乏の罠」からさらに抜け出しにくくなるようです。

「欠乏の罠」から抜け出す「スラック」

欠乏はトレードオフ(一方を追及すれば他方を犠牲にせざるを得ないこと)思考に陥りがちです。ほかのことに1時間を費やすことを考えるとき、1時間何かを犠牲にしようと感じます。トレードオフ思考は欠乏状態に特有の結果のようです。
ですから時間に追われている状態から抜け出すために必要なのは、生活のなかに常に「スラック」(ゆとり)を持つことが大切です。人はやるべきことが多いと、予定をぎゅうぎゅうに詰め込みたがるものです。あえてゆとりを残しておくのは一見、非効率に思えるかもしれませんが、何か突発的なことが起きて予定が遅れた場合、スラックがあるとその遅れを吸収してくれます。
心理面においても、スラックは豊かさを与えてくれます。スラックは非効率ではなく、心のぜいたくです。豊かであれば、考えなくていい、まちがいを気にしなくてもいいぜいたくな時間が許されるのです。

最後に

コーチングのなかで、10年後の自分についてクライアントに良く尋ねます。あっさり応えられるクライアントは一握りです。理由は、現在のやりたいこと、やるべきことは明確なの対して、将来は非現実的だからです。このことが、欠乏を引き起こす原因になっていると感じました。少なからず、将来のことを考えるのを避けて、今忙しくすることでモチベーションを高めているクライアントはいます。そうすれば、将来結果がついてくると。そういった意味では、コーチングは、時間管理のツールとして活用いただけると思いました。「目先のことしか考えられないから時間が無いのではなく、時間が無いから目先のことしか考えられない」のです。クライアントの「スラック」を一緒に考えるところからサポートしていきたいと改めて思いました。
年度はじめに読むの最適な書籍だと思いますので、皆さんも関心があればどうぞ。

最後までお読みくださりありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?