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研究レポートvol.4.0:2017年度『中小企業白書 第二部 中小企業のライフサイクル』における起業と起業後の課題

今回は、2017年の中小企業白書の面白い統計データがありましたので、それを紹介します。
結論から言うと、日本は起業に関するノウハウが浸透していない、環境が整っていない、起業に関する関心が低いということが言えます。起業したい人が実際に何を課題としているのかをこの白書から理解することができます。今回のnoteは断片的なな記述になります。さらに知りたい方は2017年度版の『中小企業白書』を手に取ってみてください。

我が国の起業の実態

総務省『就業構造基本調査』によると、起業希望者数、起業準備者数、起業家数は1997年以降減少傾向にある。その結果、起業家数も、2002年38.3万人、2007年34.6万人、2012年30.6万人と減少している。
兼業や副業による新しい働き方が謳われるが、実際に起業に至ったことは少ない。

学生起業意識の変化

総務省『就業構造基本調査』の「在学中の学生の起業意識の推移」によると、在学中に起業を希望するものと在学中に起業準備を行っている学生の割合は、1979にはそれぞれ2.9%,2.8%だったものが、2012年には、4.2%,4.1%と上昇傾向にある。
2012年における起業家の平均年齢は、男性49.7歳、女性44.7歳と高齢化が進んでいるなかで、この結果はよい傾向であると言える。

起業の実態の国際比較

厚生労働省の『雇用保険事業年報』による、日本は、2015年の開業率が5.2%に対して、イギリスは、14.3%、ドイツ12.4%、アメリカ9.3%(2011年)、フランス7.3%(2014)であり、日本は圧倒的に開業率が低い。

また、GEMの調査によると、日本は他国に比べて「周期に起業に有利な機会がある」、「起業するのに必要な知識、能力、経験がある」「周囲に起業家がいる」の割合が圧倒的に低く、起業環境の水準が圧倒的に低いことが理解できる。
また、起業無関心層の割合が、2012年では、日本77.3%、アメリカ22.9%、ドイツ30.6%、イギリス36.0&、フランス39.2%となっており、日本では、他国に比べて圧倒的に高い。
日本では、起業家支援をすると同時に起業に関心を向上させる必要があるといえる。

起業に至るまでの実態と課題

起業希望者が起業準備に着手していない理由
中小企業庁『起業・創業に対する意識、経験に関するアンケート調査』では、起業希望者が起業準備に着手していない理由を年代別、性別別に整理されている。
大きな理由として、「事業に必要な専門知、経営に関するノウハウの不足」、「起業にへの不安(収入の減少、失敗時のリスク)」、「資金調達方法のメドが立たない(補助金、自己資金を含む)」が多いことがわかる。
ほかにも、「具体的な事業化の方法がわからない」「時間的余裕がない」「起業の具体的なイメージがつかない」ということが見られる。

また、「男女別にみた、起業準備者が起業準備者が起業準備を始める際に利用したかった支援策」は、「起業、経営資源講座」と「起業支援補助金、助成基金があげられる」また、家庭との両立支援が男性には見られた。

「男女別にみた起業準備者が起業できていない理由」では、「資金調達できていないこと」が圧倒的に多く、次に「事業に必要な専門知、経営に関するノウハウの不足」、「起業にへの不安(収入の減少、失敗時のリスク)」が見られた。

起業後の実態と課題

起業後の成長タイプは、3つある。

高成長型:上場企業以上の売上高伸び率
安定成長型:企業規模が拡大
持続型成長型:企業規模が不変又は縮小

また、成長段階は3つに分ける事ができる。

創業期:本業の製品、商品・サービスによる売上がない段階
成長初期:売上が計上されているが、営業利益がまた黒字化していない段階
安定・拡大期:売上が計上され、少なくとも一期は営業利益が黒字化した段階

では、成長タイプ別にみた、各成長段階で直面している課題はどのようなものがあるだろうか。

中小企業庁による「起業・創業の実態に関する調査」によると以下のようになっている。ここでは、上位7位を記載する。
1)創業期の課題
①資金調達
②家族の理解、協力
③事業や経営に関する知識・ノウハウの習得
④質の高い人材の確保
⑤販路開拓、マーケティング
⑥自社の宣伝、PR
⑦量的な労働量の確保
2)成長初期
①資金調達
②質の高い人材の確保
③量的な労働力の確保
④販路開拓・マーケティング
⑤自社の宣伝・PR
⑥事業や経営に関する知識・ノウハウの習得
⑦製品・商品・サービスの競争力強化
3)安定・拡大期の課題
①質の高い人材の確保
②起業の成長に応じた組織体制の見直し
③量的な労働力の悪保
④資金調達
⑤新たな製品・商品・サービスの開発
⑥販路開拓・マーケティング
⑦製品・商品・サービスの競争力強化

以上の結果から、起業後に伴う問題として、①資金調達②人材確保③販路拡大が大きな課題であると言えます。

各成長タイプの販路拡大について

高成長型企業の、成長段階ごとの販路開拓における課題

中小企業庁「起業・創業に関する調査」に高成長型企業の、成長段階ごとの販路開拓における課題が記載されている。以下は成長段階における上位3位をまとめる。
創業期)
①市場・顧客ニーズの把握:56.0%
②新規顧客へのアプローチ:45.7%
③自社の強みの見極め:32.8%
成長初期)
①新規顧客へのアプローチ:57.9%
②自社の強みの見極め:50.0%
③市場・顧客ニーズの把握:46.5%
安定・拡大期)
①新規顧客へのアプローチ:57.6%
②販路開拓を行うための人材の確保:55.6%
③市場・顧客ニーズの把握:48.5%

成長するにあたって既存顧客とのつながりの強化も割合として多くなっている。

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