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前書き:企業とは何か/経営とは何か

企業とは何か


人間一人一人には限界があります。一人では、鉄道やスマートフォンなど、社会に必要な様々なものを生成することができません。そのため、人間は、仲間を集め、社会に必要な様々なものを提供していきます。現代では、企業という仕組みを利用して、社会に様々なものを提供しています。

経営学とは、この企業という仕組みを考察する学問です。企業が円滑に作用するようになれば、より良い社会になっていくでしょう。経営学では、人々が働く理由、技術習得、上手は製品の作り方・売り方、会社の抱える課題と発見と解決、経営戦略という大きな方針を示す方法まで、幅広く「企業の活動をより良いものにする」を研究し、社会に還元しようとする学問です。

企業とは「社会に必要なものを仲間と協力して作り出していくための仕組み」なのです。

営利組織

企業とは「社会に必要なものを、仲間と協力して作り出していくための仕組み」であると述べましたが、違和感を感じる人がいるでしょう。それもそのはず。企業は法律でも、経営学でも「営利組織:利益を目的として行動する機関」と定義されているからです。 営利組織と言う言葉は、あまり良いイメージを持たれない言葉です。 しかし実際は、「利益のために競争を勝ち抜く企業のイメージ」と「社会のために仲間をとってを取り合う企業のイメージ」はどちらも正しく、表裏一体の関係にあります。

利益が上がるのは、どういう時か?

まず、利益を求める式から考えます、

利益=売上ー費用

この式から考えると利益を増やすには、売上を大きくし、費用を減らす必要があります

売上は企業の製品・サービスの販売総額です。企業が売上が増えるのは、それを必要としている人が増えるか、その製品の価値が認められてもらえる王になったとき(価格上昇した時)です。売上とは、企業が社会に提供した価値の総和と考えていいでしょう。

一方で、費用とは何でしょうか。費用とは、企業が事業活動をどれくらい効率的に行ったかを表す数値です。どんな資源も有限です。そのため、対価を払ってその資源を利用しています。つまり、費用とは、社会にある有限な資源のうち、企業が利用した資源の価値の総和なのです。

このように考えると、利益というものは、社会に提供した価値と利用した価値の差できています。以上のことを考慮すると式は次のように変換することができます。

利益=提供した価値ー利用した価値

つまり、利益とは、社会に提供している価値の純増分であるということが言えます。

このことを、考えると「企業は営利組織であり、利益をめぐって競争する」という意味を理解することができるでしょう。 利益を追求するとは、社会貢献を効率的に行うことに他なく、利益をめぐる競争とは、どちらが上手に社会に価値を提供しているの鬩ぎ合いのことなのです。

利益は何に使われているのか?

では、利益はどのように使われているのでしょうか。主に利益の使われ方は二つあります。

一つ目は、配当です。これは、企業へ資源を提供したものに対する対価です。労働の対価として賃金があるように、資金提供の対価として配当があります。配当がなければ、投資家は企業に寄付しただけになり、損することになってしまいます。配当とは、企業活動を金銭的に支えてくれる人々への還元なのです。

もう一つは内部留保です。内部留保とは、会社の事業を拡充するための新たな投資や、財政的に厳しくなった時のために企業が貯めておくものです。前者は、企業が取り望ましい姿で活動できるように行うもので、後者は企業が活動を継続できるように行われるものです。

このようにみると、利益の重要性を理解することができると思います。利益は、投資家への正当な還元や、企業の活動を維持・改善するために、無駄遣いすることなく活用されています。

対価はなぜ必要なのか?

対価を求めて行われる活動が営利活動、対価を求めない活動は非営利活動と呼ばれます。社会にとって意義のある活動であれば、金銭を要求しなくても良いと考える人もいるでしょう。対価を求めない奉仕活動は否定しませんが、社会貢献活動を行う際、原則的には営利組織という形を取るべきだと考えています。それが本当に社会に必要なものであれば、その活動は継続・拡大可能な形で続けられているべきであり、そのためには安定的な収入が必要だからです。もし、継続的に世界の貧困地域に低価格で栄養のある食品を提供することができれば、その地域での死亡率は急激に下げるでしょう。このように考えると、社会的に意義のある活動は原則営利的に活動すべきです。これがいわゆる。資本主義の基本精神になります。

もちろん、営利組織が適応することができない領域もあります。災害対策や生活保護など、利益を追求できないようなものがその例です。このような領域は、政府やNPO、ボランティアが適した領域になるでしょう。

社会的責任の伴う経営

利益の本来の意味

「社会的に役立つものを提供することを通じて、対価をもらう」ということを忘れ去られてしまった時にはどうなるでしょうか。例えば、消費者を騙して質の良くない製品を作ったり、不当な賃金で労働してもらったりなどです。このようなことをしてしまうと地域社会に影響が出てしまいます。企業活動は地域社会の理解があってこそです。企業が社会を無視して経営をしてしまったら、社会は荒んだものになってしまい持続可能な社会は困難でしょう。

企業の社会的責任

こうした企業への警鐘を鳴らしたのがドラッカーです。ドラッカーは「企業は、社会が資源を提供してくれるからこそ、企業が活動できる。企業がより良い経営をおこなっていくには、資源を提供する利害関係者(ステークホルダー)と良好な関係を構築していく必要がある」と提言しています。

ステークホルダーには、従業員、出資者、地域住民、顧客、取引先、政府・自治体が含まれます。つまり、彼らに十分な配慮を怠ると企業は長期的に存続していくことが難しくなるとドラッカーは言っているのです。これがドラッカーが提唱した企業の社会的責任(corprate social responsibility)の理論です。CSRは多くの人が聞いたある言葉でしょう。このような活動には、地域の美化活動、障害者雇用、スポーツ支援などが含まれます。

しかし、昨今ではCSV(creating shered value:共通価値創造)という言葉が使われるようになってきています。CSRは副業やボランティアになりがちになっていたものだったのに対して、CSVは企業が本業で社会貢献を果たすといった考え方です。この例としては、日本理化学工業の「ダストレスチョーク」が含まれます。利用者に健康被害を及ぼす粉塵を抑えたチョークで、この生産の8割を障害者雇用で担っています。

現代は、経営の転換点

今日、企業と経営は大きな転換点を迎えています。いわゆる「よい企業」の概念が変わりつつあるのです。そのため、経営学も転換を求めれられています。つまり、「人々に安定をもたらすための手段」から「変化に対応するための手段」へと変化をしているのです。かつての経営学は、自らの目的達成のためには、どのように他者と関わっていけばよいかという点で考え得られていました。それは、経営の定義「getting things done through others」に明確に表れています。そのため、従来、経営とは「働きやすく、環境の変化に強い、安定的に機能する事業や組織を構築することになりました。
しかし、現在においては、このような考え方は時代遅れになりつつあります。なぜなら、経営を学ぶ目的が自己実現のためになりつつあるからです。

まず「自己実現への変化」を見ていきます。現在では、仕事に対する考え方が大きく変化しています。以前は、身を粉にして会社のために働く「滅私奉公」が美徳とされていました。しかし、現在ではそういった働き方は、ブラック企業の働き方を称されるようになり、労働者を搾取する考え方であるとされています。仕事が「自己実現の手段」となりつつあるのです。

次に「組織づくりの変化」について見ていきます。以前は、経営は「安定した成果を生み出し続ける事業と組織を作ること」であったの対し、現在では、「激変する社会環境の中でいかに変化できるかが大切だ」という考え方に変わっています。昨今のウイルス対応の事例を考えるとそのことが容易に理解できるでしょう。大きな変化への対応が短いスパンで起こっていることが肌感覚で理解することができると思います。さらに技術の大きな進歩も、社会の大きな変化に拍車をかけています。

このように考えると、「経営の正解が環境によって左右される」ということが理解できるでしょう。昔うまくいっていたことがうまくいかなくなるのが当たり前なのです。つまり、現在の経営はベストプラクティスの背景も考える必要が出てきています。ビジネス書、経営学が適時する理論や手法を鵜呑みにするのではなく、「時代背景を考えて、事業のデザインはこうあるべきだ、組織の管理はこうあるべきだ」と自ら考え、行動することに現在の経営のあり方なのです。

今回のマガジンは、「自ら考えて、経営する」ということをコンセプトに事業領域と組織領域をメインに経営学の知識を提供しています

一つ一つの記事の値段は220円。翼を授けるで有名な飲み物と同じ価格設定にしています。この記事を読んだ学生、ビジネスマン、経営者の方々が授かった翼で自己実現の壁を容易に超えていくことを望んでいます。

※尚、これらの記事には、「デザインする」という言葉をよく使います。デザインとは、「インプットを自分なりに理解して、アウトプットする」/「アウトプットを何度も繰り返すことでより良いアウトプットを近づけていくこと」の意味が込められています。このインプットとアウトプットの繰り返しが良い経営を築くためには重要な要素になりますので、この定義にはしっかり理解しておく必要があります。


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