見出し画像

デジタルマーケティング予算 年間300万円前後のローカル企業での施策の優先順位 【前編】

今回は予算が決して多くはない地方の中小企業さんがデジタルマーケティングをスタートするときの落とし穴や、勝ち筋を探っていきます。

自分の経験から書いていくので、何百件の実体験から一般化してるということはないのですが、前提を抑えた上で抽象化したり、失敗を避ける、同じ轍を踏まないようにする、ことはできると思っています。

マーケティング予算、とは言いつつも業態や売上規模などによって多い少ないは変わると思います。ざっくりですが、D2C、売上高広告費率0.3%程度、マーケティング部門なし、のイメージで書いていきます。


喫緊の課題は予算の上方修正

まずこれを言ってしまうと身も蓋もありませんが、年間300万円前後のマーケティング予算はフリーランスに外注するより、地方の中小企業さん向けにパッケージ化したサービスを提供してる企業と組むことに使えればベストのように思います。

例えば、FoundingBaseさんなどとても素晴らしい事業されていると思っていて、

地域おこし協力隊など行政とタッグを組むことで初期の資金や人材不足を解決し、自走できるところまでをやっておられます。自分が就職活動をしていた学生の頃に選考を受けかけたのと、社会人になってからもオンラインイベントに参加したことがあったのですが、こんな会社がどんどんと拡大していって欲しいなと思います。

とはいえ、FoundingBaseのような会社さんがまだ行けてない地域や、「顔なじみに頼みたい」といった経営者さんもいらっしゃると思います。ハードな中でもやらねばならない状況はやってきます。

初期はやるべきことが大量に存在している中で、十分なリソースがありません。寄り道をせずなるべくピンポイントに狙いを定める必要があります。「なんとなくこれを続けてたらうまくいく気がする」は失敗します。

とにかくまずは予算を大きくしていくことが最優先事項です。ファネルで分解して、なるべく売上にインパクトのあるところに絞ってコストをかけていくべきだと思います。例えばECプラットフォーム上での広告運用など、デザインや情報の導線にちょっと手を加えれば売り上げが上がるポイントがどこかに存在するはずです。あくまでもブランド価値を毀損しない形で、でも利益への意識を強めに持つようなイメージが良いかと思います。

何にどれだけ投資するかの意思決定には、社長さん意外にも、会計の方や、年配の方がむしろ影響力を持っていることがありますし、共通言語も全く異なります。「言葉」自体はあまり意味を持たず、目に見える「成果」「行動」または「スタンス」の方が重要だと感じています。

「ファネル」「マーケティング」「集客」なども共通言語にはならないかもしれませんが、ふわっとした議論だけで進めるわけにもいかないので、成果の可視化や、構造の図解、バランスシートを見ながら話す、といったことが効果的かと思います。


顧客のことを知る

当たり前のようなことですが、そもそもお客さんのことを知らなければわからないことだらけです。なぜ買ってくれているのか、普段何をしてるのか、どんなメッセージが刺さるのか、どんなライフステージの方なのか、他に何を買ってるのか、どんな状況で買ってるのか、何が心配なのか、何を目指しているのか、消費してみてどう感じたか、など何もわかりません。

個人的に好きなのがライオンの消費者に寄り添った商品開発なのですが、

こんな取り組みを見ていると、非常に高い解像度でお客さんのことを理解されてるのが見てとれます。

大規模な調査はできなかったとしても、SNSで頂いたメッセージなどから直接やりとりをしたり、足を運んで実際に会って話してみることで、たくさんの色々な発見があるはずです。

実際、お客さん(またはお客さんに最も近い距離で繋がっている人)のもとへ足を運んで話を聞くことで、「親子でこんな会話が生まれるんだな」「ここでつまづくポイントになってるのか!」「自分の知らないこんな世界があったんだ…」などの気づきがありましたが、それはデスクの上で考えていてもたどり着けない仮説だったように思います。今は直接会うことの難しさもありますが、オンライン上でできることをやっていくべきなのではないでしょうか。

そしてこの「お客さんのことを知らなければ進まない」ことに関する共通認識を取ることがまず重要なのではないかと思います。これに関してクリステンセンの『ジョブ理論』は本当に名著だと思います。

「(商品を)雇用してもらうための鍵は、顧客の生活のストーリーを細かく理解し、顧客自身がことばにして要求できるものよりはるかに優れた解決策をデザインできるようになることである。画期的なインサイトは、あとから振り返ればあたりまえに見えるかもしれないが、あたりまえであったことはほとんどない。そうしたインサイトはむしろ、逆張り屋のこじつけに見えることすらある。その人に見えることがほかの人には見えないからだ。
……売るのはプログレス(進歩)であって、プロダクトではない。顧客が心から雇用したいと望み、しかも繰り返し雇用したくなる解決策を生むには、顧客の片づけるべきジョブの文脈を深く理解し、遂行を妨げる障害物も把握しなければならない。」

—『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (ビジネスリーダー1万人が選ぶベストビジネス書トップポイント大賞第2位! ハーパーコリンズ・ノンフィクション)』クレイトン・M・クリステンセン著
https://a.co/6aEfMfL

また、特にコモディティ化した商品の新規チャネル開拓やユーザー体験のブラッシュアップは、PMFを再検証するようなものなのではないかと個人的に思っています。新規プロダクトを開発するとき、ターゲットユーザーへのインタビューなしに進むことはまず無いように思うので、「やった方が良いこと」というより「やらなければいけないこと」として優先的にやっていくことに感じています。

顧客を知れば知るほど目標に到達するまでの速度や、仮説検証のサイクルが早まるはずです。

一人に絞り込まないにしても、失敗できる範囲の中でお客さんへアプローチし、仮説検証できる接点を増やして行くことが必要なのではないでしょうか。

専門家と企業との間に入り推進する

売上のボトルネックとなっているところを解決するのに必要な特定の領域での専門性を持った人と、全体像を描いて推進する人が、最低限必要ではないでしょうか。前者は、広告運用の専門家やデザイナー、後者は、PMMのようなイメージです。

推進するために必要な資質というのは、例えば「戦略性」「発想力」「実行力」「分析力」など、いくつか挙げられると思うのですが、どれかに特化すればいいというわけではなく、「戦略性」も「発想力」も「実行力」も「分析力」もあった上で、人と人の間に入り、先頭に立って推進したり、後方から支援したり、とにかく何でも泥臭くやれないと話にならないように思います。どれかに特化していたら最初は「一緒にやりましょう」という話になるかもしれません。が、おそらく成果は出ません。お互いがハッピーになるためには、オールラウンドな立ち回りが求められると思います。

それと、専門家は必ずしも地元の近くにいる人から探す必要はないように思います。例えば、JOINSという副業人材のプラットフォームを作っているような会社さんなんかはとても素敵だなと思っていて、

自分たちでなんとかしようとせずに、”誰と組むべきかを一緒に考えられる人や会社とまず組むべき” だと思っています。


得たい結果を最初に決める

時には、そもそも利益を上げたいわけではないこともあるのではないかと思います。OKRのようなテクニカルな話になるのかもしれませんが、「なんのために事業をするのか」というマインドのようなものです。「社会でこんな役割を果たしたい」「お客さんにこうなって欲しい」「こんなお客さんに喜ばれたい」「こんなものを作りたい」「社内で認められたい」「地元の経営者の集まりで認められたい」「自社の商品をもっと自慢したい」など。欲求は人によって様々だと思います。

まずは自分の心に正直に何をしたいのかをオープンに話し合うことが、意外とあとあと響いてくるものではないかと思っています。

例えば自分の心に嘘をついてきれいごとを言うよりは、本当は何がしたいのか?を深掘った方が建設的かもしれません。会社の外の立場から関わるときは、一層表面上の言葉だけ捉えるのではなくてその奥の本音と向き合うべきだと思います。

いつでも正論が正しいとは限らないし、絶対的な正解/不正解もありません。そんな中でイメージとしては"肉を切らせて骨を断つ" …というと何かと戦ってるみたいですが、強いていうなら思い通りにいかないことの多いこの現実と戦っているのかなと思います。

この記事が参加している募集

最近の学び

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?