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一蓮托生

けむくじゃらのお前は愛嬌だけを振り撒いて、今日も私に寄ってくる。
粒のような目玉の中には私しか映っていないようだ。
コーカソイドのあの金髪よりも綺麗な毛並みで、歩くたびに爪が地面に当たっている。

こつこつ、

骸骨。
風に揺らされて、雨に濡れて、それでもずっと外にいる。
木の棒に刺さったあんたの頭は、ただ横に揺れるだけ。
ここには俺しか近づかなくなってしまったな、
あれほど愛されていたあんたがここまで惨めな思いをするなんて、俺も思っていなかったよ。

ぽつぽつ、

お前とはあの公園で待ち合わせだ。
泥に濡れたお前に豪華な晩餐をくれてやった。
お前は絡まった毛も、汚い身体も、蔓延する刺激臭も気にしないで、傲慢に私の足に擦り寄ってきた。
お前に汚されたスーツのことは絶対に忘れない。

大好きだったよ、お前のこと。
だからあの日、お前を抱こうとして噛まれて、
無意識に殴ってしまったんだ。

手から滴って地面に落ちる血をお前は舐めた、
それでニヤニヤしていったんだ。

「あんたは愛されていいなあ、羨ましいなあ」

「あんたが俺になって、俺があんたになれたらいいのになあ」

がらんがらん、

あんたは俺にいっぱい餌をくれた。
あんたは俺を綺麗にしてくれた。
街で見るたび思ったよ、あんたってどれだけ愛されてるんだって。
皆、おまえのこと好きだったよな、俺もだよ。

惨めな犬の俺だって、骨を咥えて生きてく一生望んじゃいないんだ。
おまえには申し訳ないけどさ、

優しいおまえだったら許してくれるよな?

これからも骸骨になったおまえを拝みにちゃんと公園に行くよ。
おまえが俺にやってくれたように、豪華な晩餐を一緒に食おう。
おまえを綺麗にしてやるよ。





はぁ、偉そうだよな。
本当はわかってる。おまえが皆の事嫌っていて、

俺を見下してたことくらい。

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