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レノファなスタジアムの話(23)スタジアム計画が「停滞」するとき(2)

(※7/2 23:25追記:一部の文章の表現修正を行いました)
前回の続きです。(すみません、今回もレノファ分薄めです)

秋田で、新スタジアム計画を前提としてJ1ライセンスを取得したところ、計画が停滞気味であることを理由にJリーグから照会文書が届いたという話をしましたが、同じことが鹿児島でも起こっています。
そして、鹿児島の方が状況は深刻であると言えます。

鹿児島の事例

ライセンス申請

鹿児島ユナイテッドFCは白波スタジアム(鹿児島県立鴨池陸上競技場)をホームスタジアムとしていますが、施設基準においてJ2ライセンス相当に留まっています。白波スタジアムは鹿児島国体の際に改修工事を行っていますが、スタジアム基準に「新設及び大規模改修を行うスタジアムについては、原則として屋根はすべての観客席を覆うこと」という項目があり、これを満たす改修工事としなかったため、現在もライセンス基準を満たしていません。

余談ですが、この「新設及び大規模改修を行うスタジアムについては、原則として屋根はすべての観客席を覆うこと」というスタジアム基準はクラブライセンス制度が出来た際に出来たルールで、その前に改修工事を済ませていたレノファ山口FCの本拠地・維新みらいふスタジアムには適用されず、それ以前から存在した「観客席の3分の1以上を屋根で覆うこと」というルールだけが適用されています。

そこで鹿児島は、白波スタジアムの改修がライセンス基準に合致しないことを前提とした特認申請を2017年の申請(2018年シーズンのライセンス)から行っており、さらに2018年のスタジアムに関するライセンス基準の運用見直しを踏まえて「5年以内のスタジアム新設計画」を前提にJ1ライセンスを申請し、2019年の申請(2020年シーズンのライセンス)からJ1ライセンスが認められてきた、という経緯があります。

計画の紆余曲折

で、新スタジアムの計画という話になるのですが、一言で言えば「鹿児島市はかなり前向きに考えているものの、鹿児島県が比較的消極的である」という状況でした。

2017年に鹿児島県と市、経済界や関係団体で「サッカー等スタジアム整備検討協議会」というのが立ち上げられ、「都心部へのスタジアム整備」「収益性・公益性のあるスタジアム」などの方向性が示され、候補地として鹿児島本港にあった商業施設「ドルフィンポート」の跡地をはじめ、「住吉町15番街区」「浜町バス車庫」といった鹿児島港周辺の遊休地が適地とされました。

ところが、肝心の土地所有者である鹿児島県がこの構想に否定的な考え方を示しており、鹿児島県が「ドルフィンポート」跡地の活用方策について広く意見や提案を募る調査(サウンディング調査)を行った2017年の時点で「サッカースタジアムなどのスポーツ施設の立地は考えていない」と明言しており、最初からここにサッカースタジアムを建てさせる考えがないことがわかります。

後に、鹿児島県知事が元テレビ朝日の記者だった三反園訓氏から経済産業省出身の塩田康一氏に代わって若干の方向転換が行われたものの、結果的には「ドルフィンポート」跡地は、「コンベンション・展示機能を備える施設」、平たく言えば「展示場としても使える総合体育館」の整備という方向に舵が振られることになります。

一方で、市は2022年度に「スタジアム需要予測等調査・整備検討支援業務」を実施し、この中で「ドルフィンポート」跡地を含む3候補地の整備計画の検討を進め、特に「ドルフィンポート」跡地は県の計画を変更する前提で整備する案を提示しました。

この案に県側が反発し、県は当初計画の変更を拒否。結果的に「ドルフィンポート」と埋め立て拡張の必要な「住吉町15番街区」案は実施困難という結論となり、民有地を使う必要がある「浜町バス車庫」案も含め、今年の6月には市が3案を全て断念する事態となりました。

鹿児島市は別の案として鹿児島本港エリアの北埠頭を活用する案を提示しているようですが、ここも結局(県の管理する)港湾用地で、具体的な方向性が見通せない「泥船」状態に陥っている、というのが現状です。

タイムリミットを迎えて

で、今回のJリーグから鹿児島ユナイテッドFCへの通達文書、ということになるわけですが、

「新スタジアム整備」を前提としたライセンス申請の特例からかなり年数が経っており、特に鹿児島の場合は白波スタジアムの改修がライセンス基準に適合しないことを踏まえた特認申請を2017年(2018年シーズンのライセンス)の申請から行っており、そこから数えると今年がちょうど6年目、すなわち「計画策定から5年以内」のタイムリミットを越える…と判断される可能性が生じているわけです。

とはいえ、市も県も建設に向けた具体的計画の策定には至っておらず、むしろ話としては「振り出しに戻った」状況な訳です。
鹿児島県の塩田知事は今頃になって「白波スタジアムの改修じゃダメなの?」とか言いだしているらしいですし…(これは既にJリーグに却下されています)

結局鹿児島県は「審査に配慮を求める」とした意向表明書を提出したそうですが、これをJリーグ側がどういう受け止め方をするかですね…

鹿児島の事例を踏まえて

こういった鹿児島の動向を見てみると、新しいスタジアム(まあ、箱物全般にそうなのですが)を建設するときは大前提として「確実に建設が計画できる」「完成後の利便性の高い」土地の存在というのが不可欠なように思えてきます。

このことを山口で考えると、「確実に建設が計画できる」「完成後の利便性の高い」という観点で可能性が一番高そうなのは、県所有で土地の利活用に困っているきらら浜(ただし交通アクセスを改善させることが必須)と言うことになりそうな気はしてきますね。

というところで、こういったスタジアムの計画を出すと、必ずと言っていいほど反対の方向に顔を出す人たちがいまして。
次回はそういった方々の思考について考えてみたいと思います。

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