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トキメキと、寧静

大学2年生で私はアメリカ留学をした。留学中のある雨の日、その時付き合っていたアメリカ人に「雨は嫌いだ」と言ったことがある。

すると彼は、"君の嫌いなものは僕が好きになる"と言った。

私は文字通りその言葉にキュンとした。

彼との生活はすぐに終わってしまうのだけど、今思い出してみてもあの数か月は、間違いなくトキメキに満ちていた。


後に夫になる彼と付き合って間もない頃、私たちは初めての旅先に静岡を選んだ。梅雨時期に行ったから、植物園に行った時雨が降っていたけど、一つの傘を二人でさして、鮮やかに咲いているアジサイを楽しんだ。

その傘から滴る雨を見てアメリカのあの日を思い出した私は、「雨やだな」と言ってみた。すると彼は穏やかな声で「俺も」と言った。

その言葉にトキメキはなかった。でも同じ気持ちで寄り添ってくれる彼と歩いていく人生は、きっと"トキメキ"より"寧静"に満ちたものになるんだろうなと、その時私は思った。





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