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寒空の下でも脱力はできるのか?その2

前回のおさらい

 恒温動物であるヒトにとって、体温の維持は必須なので、体温を維持するための筋張(※1)はやむを得ない。
そこで、我々が考えるべきこと。それは、温度変化を逆に日常の筋張コントロールに生かすことである。

1.過筋張したままにさせない。(対策)
2.逆に脱力に用いる。(活用)

その答えは、この2点だろうということから、前回は1.過筋張させたままにしない方法を考察してみた。
今回は温度と筋張の関係を有効に活用する方法を提案していきたいと思う。

温度と筋張の関係とは

 自律神経系と温度の関係は密接だ。しかし、他にもいろいろな事で自律神経は交感神経優位になったり、副交感神経優位になったりする。副交感神経が優位になれば、過筋張しづらいリラックスの土壌が整うのである。
しかし、自律神経に影響する「いろいろ」の中にはやろうとしてできるものと、できないものがある。

 たとえば、メンタルの緊張状態はコントロールしづらい因子だと言える。ここぞという大事なシーンで胸がドキドキし、のどがカラカラになる。これは交感神経が優位になっている証拠だ。
しかし、このメンタル状況をあえて作ることは難しい。今やってみろと言われてもできない、普通は。

こういうコントロールしづらい因子は多いのだ。

温度刺激がイチバン有効かと。

では、自律神経を意図的にコントロールしやすいものに何があるだろうか?
やはり、温度刺激が最も活用しやすい。

他には…というと、消化が思い浮かぶ。食後にボーッとして眠くなっている時の感覚。副交感神経が消化を優先させようとしているのである。余程のことがない限り、その感覚は発生する。
ただし、いつでも食事をできるわけではないので、そこが難しい。

今回のテーマ、2.逆に脱力に用いる。

温度刺激を脱力に用いるためには当然ながら温めるという行為が必要であるのだが、この時どこまで温めるのか?がポイントである。どんな時でも副交感神経そのものは働いており、基準がわかりづらいのだ。

全身が放熱モードになるほど、温まっていなければならない。

放熱モード下ではじんわりと汗がにじむ。毛穴が開き体温を次々に放散している状態である。そこまで温まっていれば、副交感神経がバッチリ働いていると言えると思う。

入浴はバツグンの効果。

 昔から病には湯治をするという文化があるが、単に成分の効能だけではなく、入浴が副交感神経を刺激する効果があるのだろう。

 木野顎関節研究所のHP(※2)では交感神経系を「闘争と逃走」の神経と謳っているが、そう意味では副交感神経は「休息と回復」の神経と呼ぶのはどうだろうか?
その意味では、風邪をひいた時に布団で寝るというのも似ている。大量の寝汗をかいたらすっきり良くなっていた経験はないだろうか?

少し暑いくらいの布団で寝る。

これも入浴並みの効果がありそうだ。風呂よりも長時間できるのが良い。

ゆっくり風呂に浸かってる暇がない。

という方もいるだろう。時間があればやってもらいたいが。
しかし、我々の目指すところは此れである。

過筋張を、脱力で防ぐスキルの習得を目指している。

そのために副交感神経への刺激について考えているのじゃないか。
脱力教室的にはその場しのぎのリラックスは求めていないのだ。ちなみに過緊張をコントロールする流れの基本は下の通りである。

脱力を作って感じる→日常の過筋張に気づく→過緊張から脱力する
この流れを繰り返す(強化)

この方法を、副交感神経に特化して下のようなパターンを考案してみた。

温度を利用した副交感神経優位な生活の1例

朝:起床したら朝風呂もしくはシャワーへ
やや熱めの温度で、少し時間をかけてポカポカするまで体を温める。この状態では湯冷めしやすいので冷シャワーで一時的に交感神経を刺激してから出る。その後、さらに急激に冷えないように服装を選ぶ。

昼:昼食後などの副交感神経が優位な時間にしっかり休む。加えて、別ノート「脱力生活」を参考に過筋張を抑える。
朝に感じたリラックス感をベースに、なるべく過筋張が続かないように生活する。

夜:なるべく入浴し、少し暑いくらいの布団などで寝る。
副交感神経が優位な時は熱が逃げやすいので、風呂上りには冷シャワーをしたり、室温の管理、ルームソックスの着用など工夫をする。

こうして副交感神経が優位な状態を朝から体感し、その感覚を体に残して生活することが良好なサーカディアン・フロー(※3)を生むというやり方となっている。

おわりに

 2回にわたった温度と過筋張の関係の話。書いているとドンドンと話が逸れてしまい大変であった。きっとたくさんの因子が絡んだ話だからだろう。そして、あくまでもこれらは対策の1例。また機会があれば他のアプローチも考えてみたいな。

text by 斉藤ヒロユキ


※1筋緊張を筋張と表現。詳しくは「今、キン張してるかーい?」をお読みください。
https://note.mu/datsuryoku1116/n/nc5ab8f7b88bd

※2 木野顎関節研究所HP 
https://kinoins.com

※3  1日の周期を意味する「サーカディアン」とその中の変動を意味する「フロー」の個人造語。日周変化。


「寒空の下、脱力はできるのか?その2」最終更新 2019.Jan.22
text by 斉藤ヒロユキ(Dentist)
illustration by Moe Itoh(小児科専門医)

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