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【もったいない】ホンダがレース活動を販売に活かすためにやってほしい3つのこと


│ ホンダはどうしたいのか

「自動車をどういう人に売りたいか、そういう意思を持っているメーカーからすると、F1の価値は相当に上がっていると思います」
motorsports.com,2022年12月6日 (※1)

 12月6日、業界メディアの記事内で、HRC(ホンダ・レーシング)四輪レース開発部の浅木泰昭部長がホンダF1活動について言及した一節です。
ホンダはF1活動をマーケティングの領域からも重要視しており、
とりわけ得意とするアメリカ市場で、とりわけ若年層からのF1人気が上がっている背景を鑑みてのコメントのようです。

「では、ホンダは誰に自動車を売りたいんでしょうか」

とりわけ、レース活動が連想されやすいスポーツモデルは、
誰のために生み出しているのか。そう感じたのは、ラインナップにあるスポーツモデルが、500万円以上するCIVIC TYPE Rしかないからです。

 こだわりの一品を高い値段で売るのは、フェラーリなどのハイブランドだから成立します。稼ぎ頭のN-BOXやフリードを買う人が大半を占めるホンダは、経済的余裕がある方だけにスポーツカーを売る戦略のように感じられます。多大な開発費を、1台あたりの価格を上げて少ない販売台数でも回収する方法は間違っていませんが、掲げている「運転の楽しさを提供する」先は、一向に広がっていきません。

評判はいいけど、高級スポーツカーと化したTYPE R (画像はプレスリリースより引用)

│ レースだけやってもクルマは売れない

 ホンダ、強いてはレース活動に対するファンの好意を「車両購入」という形につなげるためには、特性的、価格的にも喜んでもらえる商品と、適切なコミュニケーションを長期的に続ける必要があります。

 では、誰に買ってもらうのか。それは、これまでホンダレーシングを応援してくれているファンにほかなりません。11/27にモビリティリゾートもてぎで行われたホンダ・レーシング サンクスデー2022では、コロナの影響で3年ぶりにも関わらず、19,800人ものファンが駆けつけ、ドライバーやマシンとの時間を楽しんだようです(※2)。
 この約2万人の方々のうち、TYPE Rを買える人の数は、どれくらいなのか。会場に止まっているお客さんの車は、すべてスポーツカーなのか。中にはフリードやN-BOXといったファミリーカーで来ている人もいるはずです。
 そんな方々が、日常のふとした運転の瞬間でもホンダレーシングという存在をわかりやすく感じられて、うれしくなれる。そんなニーズを叶えてこそ、メーカーとファンの間に一体感が生まれる。今回は、そうなるためにホンダにやってほしいことを、ひとりの消費者として3つ考えてみました。

│ ① 低価格なスポーツカーの販売

 まずは商品。免許取得後、数年経った20代あたりをメインターゲットにするなら、こんな要件が思いつきます。

  • ボディ幅と長さは現行FITと同程度(5ナンバー)

  • 1.2〜1.5Lのガソリンエンジン(レギュラー)

  • 車両重量も1,100kgまでに抑える

  • NAでFF  / MT & AT

  • 価格は130〜170万円以内(税金・諸経費除く)

狭い日本でもコンパクトだから運転しやすい。非力なエンジンでも軽いから楽しい。アルバイト、もしくは親に前借りすればなんとか手が届く値段。
内装は最低限でヨシ。でも、外装はS660のようにシャープでホンダらしく。
(S660だって荷物がある程度入って、もっと安ければ化けていたかも)

 ブランドや購買層が違うでしょうが、270万円から買えるロードスターでさえ、今じゃ月販855台(※3)を叩き出す月もあるくらいですから。長く売れば、入門モデルとしてロイヤリティの高い顧客になり、将来代替えしてくれるかもしれない。2011年に発表されたEV-STARのような存在があれば話題になるのでは。

│ ② 全車適用スポーツグレードの設定

N-ONEやFITにRSがあるじゃないか。
あれだって乗り味やデザインもこだわっている。

それにModuloや無限の用品だって揃えてる。
コンバージョンラインだってやってた。

 ここまでの内容を見ると、こんな声がホンダから聞こえてきそうですが、
そうじゃないんです。見ればわかりますが、統一したブランドアイコンがないんです。RSは専用ロゴだけで、内外装や装備に一貫性があるわけじゃない。Moduloも無限もSGTなら名前出るけど、1チームとして見える。(無限も技術支援が大きいけど、あまり名前出ない)今のF1では、どちらの名前も出してない。

 TGRやNISMO、STIのように、メーカーで統一され、かつレースシーンでも目にすることの多いスポーツブランドがない。車種や手がける会社ごとに、それぞれが理想とするスポーツモデルを体現している印象が強く、ホンダとしてのレースイメージが想起しづらい。TYPE Rがホンダスポーツの頂点ならば、後に続くスポーツブランドをピラミッド型に整備すればわかりやすい。HR editionでも名前はなんでもいいのですが、統一された専用の内外装や装備を持ったアイコン的グレードが人気車種だけでも設定されれば、①のスポーツカーを買えなくても、他のホンダ車で楽しむことができますね。

│ ③ホンダレーシングを主語としたミュニケーション

 商品が用意できたら、あとはお客さんへの知らせ方です。人気アイドルを起用した「Hondaハート」もいいですが、ホンダカーズに若いファンの女の子がポスターもらいにくるのが関の山では意味がありません。

  • 創業の理念を持って、積極的にレース活動を続けていること

  • 結果を出していること

  • その活動が息づく製品があること

 主にこの3つをあらゆる手段で伝えていかねばなりません。CMなどの広告物も大事ですが、私が一番大事だと思うのは、ホンダカーズにおけるコミュニケーションです。こういったスポーツモデルを好む方はこだわりも強く、冷やかしまでいきませんが、話すだけ話して満足して帰ってしまう。結果的に、時間だけ取られて何も注文してくれないといったケースも少なくないです。スタッフの皆さんは忙しく、毎月のノルマをこなすことに追われているので、こういったスポーツモデルを扱うことに苦手意識が残ってしまう。
 つまり、メーカーと販売現場の間に温度差があります。普段N-BOXを買うお客さん相手に商談していれば尚更です。常識があるホンダレーシング好きのお客さんは、どこか寂しさを感じてしまうなんてこともあるでしょうから、ホンダで働いている以上、スタッフの方にはモータースポーツに関する最低限の知識や熱意を持ってもらえるよう働きかけるべきでしょう。最終的に買ってもらえるようなモデルも用意すれば、取り越し苦労の回数も減ります。メーカーはブランドに好意を持ってもらえるし、販売店はお客さんが増える。双方にとっていいことなはず。
 本来はトヨタのGR Garageのような店舗づくりも重要でしょうが、やはり私たちにとって一番身近なホンダは販売店であり、そこで働くスタッフの方々でもあります。文字通り生販一体となってこそ、ホンダレーシングブランドは売りに生かすことができます。

│ もったいないホンダレーシング


 ここまで私見を書き連ねてみましたが、皆さんはどう感じましたでしょうか。スポーツモデル商売は正直どのメーカーも悩んでいるはずです。ガソリンを排出することは良くないこと。そんな風潮がますます強くなる一方で、わざわざ早く走るためのクルマは必要なのかと。ただ、仮に全ての車がEVになったとしても、それまでモータースポーツを好きでいた人たちが消えるわけではありません。スポーツモデルの需要もこの先残っていきます。
 ホンダはF1をはじめとした多くのジャンルに参戦してからこそ、実績に基づいた製品へのフィードバックがしやすい状況にあります。多くのホンダファンが喜ぶような製品を出してもらえるように願ってやまない。

【 参 考 】
※1…元にした記事はこちら,2022年12月11日
※2…元にした記事はこちら,2022年12月11日
※3…元にした記事はこちら,2022年12月11日
タイトル画像のHRCロゴは公式HPからの引用です


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