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ヨガで身体が硬いとは(ヨーガ・スートラ)

 ヨガ初心者がよく「身体が硬いんですが」とエクスキューズを入れることがある、それに対してインストラクターが「大丈夫ですよ、繰り返し練習すると柔らかくなります」的な返答をすることがある。それは間違いではないものの本質的な話はしていないのがとっても歯がゆいのですよ。(スタジオヨガに何を期待しているんだ!という話なんだけど言っておきたい)
 まず『カタイ』という単語は固い、堅いとも書く、鋼鉄製の身体でもない限りこの字は使いませんね。この場合は柔軟性が乏しいとか関節の可動域が狭い。という意味の硬いだと思われるんだけど、ヨガが目指すのは柔軟性を高めるとかそんな事ではなくて、『肩に力が入っている』とか『緊張で身体が強張っている』ような硬直性の硬さから抜け出すための生き方(ライフスタイル)を手に入れることだと思っているのですよ。
 いくらしなやかな身体を持っていても大事な局面で緊張でガチガチになっているより、関節の動作が不自由であっても常にリラックスしている生き方の方が良いよね。ってこと。何もコレは私の個人的な意見ではなくてヨーガ・スートラを読むと、こう解釈できる記述がちゃーんとあるのです。
 ヨーガ・スートラのアーサナの定義は3つ有って

Ⅱ-46. स्थिरसुखमासनम् sthira-sukhamāsanam 安定・快適なのがアーサナ
Ⅱ-47. प्रयत्नशैथिल्यानन्तसमापत्तिभ्याम्prayatna-śaithilya-samāpattibhyām 緊張を緩和し無限[の力と]一体化
Ⅱ-48. ततोद्वन्द्वानाभिघातःtato dvandva-anabhighātaḥ それが出来たら鬱々とさいなまされることは無い(直訳では、2元性の桎梏による苦しみから解放される)

と、その概要を語っています。
 ヨーガ・スートラは大枠を案内する地図とかガイドブックという位置づけなので、どの路を通るのかは読者に任されています。具体的なアーサナ(坐法)は記述されていないけれど、アクロバティックなポーズをとることや柔軟性の限界に挑むことはそこから読み取れません。
 ちゃんと読めばアーサナとは『緊張を緩和する』つまり肩の力を抜く修練であり、それはじっと留まっているだけで快適である。ということですね。さらに極論をいえばヨーガ・スートラには直接の記載は無いけど、身体が硬いどころか、手足の無い人間であってもヨーガは可能だということなのです。
 裏付けとしてこんな話をご紹介します。
ハタ・ヨーガの宗家といわれるナータ派の実質的な創始者にゴーラクシャ・ナータという人物がいます。その師匠がマッツェンドラ・ナータ、この人は深海の海底でシヴァ神から直接ハタ・ヨーガを伝授されたと言われています。
 伝説によればチャウラーンギという王子が義母(昔の王様にはお妃様が何人もいた)に言い寄られた時に、やんわりとお断りを申し上げたという一件があった。ところがプライドを傷つけられたお后様の讒言によって手足を切断されて、生きたまま尸林しりん(死体を捨てる林)に放置された。そこにマッツェンドラ・ナータが通りかかり、灌頂して世話を牛飼いの少年(ゴーラクシャ)に任せた。【中略】なんやかんやあって成就した王子チャウラーンギはヨーガの超能力を得て、失った手足も復活したという。

身体が硬い?
全然へっちゃらだね(笑

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