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【怪談・怖い話】俺が神社の参拝について誰よりも詳しい理由

はじめに

これは、俺が高校生の頃に体験した話だ。

ちょうど7月あたりで、夏休みに入る手前くらいだったと思う。

当時、俺は仲の良かった友人とたまり場にしている場所があった。

それは、高校から自転車で3分ほど歩いた先にある小さな小さな神社だ。

裏山を切り崩しして作ったであろうソレは、人が一人しか通れない程度の幅の階段を上った先にあるひっそりとした神社で、鳥居すらない。

また、本殿(と表現していいのか不明だが)もよくある倉庫くらいのサイズ位だったと記憶している。

高校から自転車で3分、というアクセスの良さから、学校帰りはほぼ毎日のように寄っていた。

当時それなりにやんちゃしていた俺たちは、コンビニで買ったお菓子を神社で食べる。

さらには煙草を吸って境内にポイ捨てするなど、今思い返すととんでもない使い方をしていた。


一人で神社に向かう

いつも通り友人とその神社でなんでもない時間を過ごしていたある日のこと。

友人はバイトがあった為、煙草を一本吸ってから早々に「帰る」と言い出した。

俺は物足りなさを感じつつも、一人で神社に居座る意味もないので一緒に帰る事にした。

友人と別れしばらく自転車を漕いでいたが、俺はある事に気付いた。

神社に煙草を忘れてしまったのだ。

今これをみている方は「別に煙草くらい…」と思うかもしれない。

しかし高校時代の俺は万年金欠だったと言っても過言ではない。煙草を買い直す金すらないのだから。

そんな俺にとって煙草がない事は一大事だったので、神社に取りに戻る事にしたのだ。


神社にいたモノ

神社前にある階段まで到着したのは18時くらいだったと思う。

7月くらいの話なのでちょうど夕暮れ時だ。

いつもはヒグラシが鳴いているのだが、当日は嫌に静かだったのを今でも覚えている。

汗で背中にシャツが張り付く感覚に嫌悪感を抱きながらも、俺は階段を上った。

階段を上りきり、ちょうど本殿が見えた直後である。

俺はいつもと違う神社の光景に思わず「えっ」と声を上げてしまった。

そこには、3人のおばさんが円になりニヤニヤと談笑をしている姿があった。

年齢は50代前後だろうか。

普段誰も参拝に来ることのない神社だ。

人がいる事自体が異常。

「ひょっとして見回りにきたPTAかなんかか?」と俺は考えたが、その疑いは一瞬でなくなった。

3人のおばさんは、全員が全員、同じ喪服を着ていたのだ。

スーツではなく着物の喪服。

さらにいうと髪型も似たようなパンチパーマだ。

あまりの異常な光景に驚きと恐怖を感じた俺は、立ちすくんでいた。

そんな俺に一人のおばさんが気付いたのだろう。

こっちをみるなり、満面の笑みで、

「あらー、俺くん、もう帰って来たのー?」

と言うと、3人が一斉にゲラゲラ笑いだした。

もちろん俺はこんなおばさん知り合いに居ない。

なぜ俺の名前を知っているのかとか、色々な疑問はある。

しかしそんな事はどうでもいいレベルで逃げ出したくなっていた。

笑い出した瞬間見えたのだが、3人のおばさんは全員、歯が真っ黒なのだ。

いわゆる「おはぐろ」を付けているのだろう。

ベッタベタに黒い歯を俺に見せつけながら、奇怪に笑っていたのだ。

俺はこの異常な状況に耐える事ができず、回れ右をし全力で階段を降りた。

階段を降り、通学で使っていた自転車の所まで戻る場所までおばさんたちのゲラゲラとした笑い声は響いていた。

セミが鳴いていない嫌な静けさも相まって、俺は自転車を全力でこぎ家に帰ったのだった。


友人の話

この話をいつも一緒に神社にいく友人に話した所、

「よし、そのおばさんみにいくぞ!」と好奇心でいっぱいだった。

友人と行けば心強いかもしれない。

しかしアレは異常過ぎる光景だ。

人間かどうかすら怪しい存在と対峙してしまった俺は、もうあの神社に行く気は心底失せていた。

それに、神社で煙草をポイ捨てする事自体に罪悪感を感じていた。

期待に胸を膨らませる友人をよそに、今後は神社に行かない事を友人に伝えた。

自然とその友人とは疎遠になっていったのだが、後悔はしていない。


俺が神社の参拝について誰よりも詳しい理由

当たり前だが俺はそれからあの神社にはいっていない。

しかし初詣などで大きな神社に行くことはある。

お参りをする際は必ず二拝二拍手一拝。

正しい参拝の仕方でこんな事を誓っている。

「あの時は神社を粗末に扱い本当に申し訳ありませんでした。絶対にゴミや煙草のポイ捨てなんかしません。今後、神社で参拝する際は礼儀を重んじ、正しい方法で参拝する事をここに誓います。」




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