『甲子園』
そこには、笑顔と涙と、歓声とため息が混じった何とも言い表せない空間が広がっていた。
朝6時。布団から重い身体を起こし荷支度を始める。
天気予報アプリでは大阪は午後から雨らしい。
いつものように、神様に手を合わせ今日の幸運を祈る。
良い試合が見れますように。お願いします。
そんな願いを唱えながら家を出た。
たちまち曇り空が待ち構えていた。
新幹線に乗り、小雨が吹きつける車窓を睨みながら新大阪へ到着。
道中迷い、関西弁の駅員に戸惑いながら現地へ急ぐ。
あっという間に甲子園駅。
駅を出ると、不安を一瞬で吹き飛ばすような快晴。
さあ、始まるぞ。
聞こえないはずの歓声がなぜか聞こえてきた。
日本各地からサポーターが続々と集まってくる。
日が昇り気温が高まっていくとともに、球場内は熱気を帯びていく。
みなメガホンやタオルを手に、今か今かと待っている。
寸暇もなく選手が入場し、一気にボルテージが高まる。
審判の甲高い声とともに一列に並んだ。
さあ、試合開始だ。
先頭打者ホームラン。
歓声が沸き立つ。地鳴りのような声だ。
みな肩を組み歌を唄う。
呼吸を合わせ選手との繋がりを感じる。
こんな空間は今まで経験したことがない。
応援の力を肌で感じた。
こんなに選手に力を与えるものなのかと。
まさに試合の流れというものを
その空間にいる一人一人が作っていた。
そして、野球を全力で楽しみ笑顔でプレーする姿がそこにはあった。
選手の活力と覇気溢れる背中に圧倒された。
最後まで諦めない執念に奮い立たされた。
野球はこんなに面白いのか。
こんなにエネルギーを与えてくれるものなのか。
試合中、私の身体の中に沸き立つものを感じた。
そして、それを球場全体で共有し溶けこんだ。
世の中にはうまくいかない時は必ずある。
希望を持つことができない時もある。
ただ、今目の前にいる選手を見れば明日への原動力を得られる気がした。
高校野球よ、ありがとう。
あの舞台で、あの空間にいられたことを本当に幸せに思う。
そして、日本中に感動をありがとう。
また必ず帰ってきます。
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