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AIに広告製作はできるのか - バーガーキングのAI広告事例

先日、ネットでこんなニュースが話題になっていました。

バーガーキングがAIにCMを作らせたらとんでもないデキになった

Twitter公式アカウントによれば、自社のCM1000時間分を学習させてテキストを作成したと公表しています。正確なところはわかりませんが、通常のアプローチでは、過去の動画+読み上げられたスクリプトのセットを学習データとしてAI(深層学習)モデルを作成し、あらかじめ準備された別の動画に対してモデルがスクリプトを付ける、あるいは最初の画像を初期値として与えその後の動画+スクリプトを全て自動で生成するという手法が考えられます。

(AIに作らせたというのは実は「演出」で、実際は人が作っていたという話もあります。記事はこちら

余談ですが、「画像や動画に対してテキストをつける」のは Image Captioning や Video Captioningと呼ばれる研究分野の一つで、例えばGoogleの研究例としてはこのようなものがあります。過去のテキスト付きデータを大量に学習させることで、あたかも人が情景を理解するように、写真や動画に対してテキストを自動で生成する技術です。

出典: JOHAN CHANG 2014, ideolog

今回のバーガーキングのCMが、動画生成までAIが実施したのか、テキスト付のみをAIで実施したのか、詳しい技術情報は公開されていないようですが、動画や画像とテキスト全てをAIで自動的に生成するという取り組みは各社で進められています。

現状では、AIによる広告の製作というのは、所謂獲得型広告の方から進んでいくのではとされています。それは、具体的なクリックやアカウント作成・オンライン上での購買等、ゴールとする指標のデータが取得しやすく、かつ広告作成の際の「幅」も小さいからです。ここでいう「幅」についてですが、例えば以下のようなことは、獲得型広告の文脈では一定の枠の中で行うので、あくまでその「幅」の中での最適化となり、結果として獲得型広告では広告作成の際の「幅」が小さくなります。

- ブランドの方向性そのものに関すること
- プロダクトに関わること(バーガーキングがおもちゃを売る、Smartnewsがクーポンを始める等)
- ブランドを認識するブランドアセットを変えること(ロゴ、ジングル等)
- 広告のトーン&マナー

実際、AdobeのAdobe Sensei等は、かなりこの部分を押し出しています。コストや、広告の効果を踏まえたよりマクロの戦略との整合性等の副次効果を含めてAIの利用がトータルで「良い」選択肢になるのかはまだ決まった答えはありませんが。(Adobe Senseiについてはこちらの記事が詳しいです)

一方、認知・プリファレンス(利用意向・購買意向)獲得の広告は自動化が進むのでしょうか。例えば、一部では「屋外広告やテレビの前にカメラを置いて、どういった属性の人が、どの程度見ているのかを把握する」という取り組みもあります。実際に広告を見て顧客の意向に変化があったという指標を適切にTrackingできれば、AIによる広告作成の自動化は進むかもしれません。しかし以下のことに留意する必要があります。

- 目線が行っていることと顧客の心理的変化は別の事象である(目線が行っているから意向に変化があったとは限らない)
- そのため、意向の変化を適切にTrackingする必要がある

意向の変化は、例えば定性調査では熟練のマーケターやモデレーターが顧客の雰囲気から把握していることも多く、その場合は、例えばですが声のイントネーションや表情の変化、集中度合いの変化でしょうか(良い広告やコンセプトを見せたときの反応を、こうした微妙な変化から読み取り、定量データでは把握できない「広告の良さ」を評価することもよくあります)。技術的には、カメラから取得して解析すればできなくはないですが、現状では決して簡単ではないと思います。

AIの世界でよく例に出される、生産ラインでの不良品検知や医療画像からのがん識別等との違いでいうと、獲得型でない、人の認識の変化を狙った広告で難しいのは以下のような理由です。

- 効果を測定することが難しい(会社毎に効果の定義がそもそも違う)
- 表現の「幅」が広い
- 広告制作・測定にコストがかかるため、データが溜まりづらい

ただ、今後も技術的な進歩は確実に起きていくと思われますし、実際には他の産業同様、人が完全にAIに置き換わるというよりは「AI」+「AIを使いこなす人」というのがベスト・プラクティスになっていくと思われるので、動向を注視していきたいと思います。

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