ショートショート「アンナ カレーニナ」
アンナカレーニナという言葉を探してみてください。
本編
「話聞いてくれる?」
トルストイの「アンナ カレーニナ」を読んでいると、れになが話を聞いてくれというように体を寄せてきた。暑いのだが。
「ええよ」
「あんな、彼にな、告白されたんよ」
「彼 誰?」
泉だと言う。へー 気難しくて真面目そうな あんな彼にな
「陸上部やんなあ」
「うん」
「日曜日でもうちの近くの公園走っとるよ」
私にさえ好きな人がおらんいうのに、恋しとる ストイックな彼がなあ
「そうなん?」
「うん。で、その泉が、れになを好きになってしまった―と、」
「そう」
「へー そりゃまたなんで」
「文化祭でカレー作ったやん」
「ああ れになの得意なカレーな」
あの時も言ったけど
「あーん」
「いやカレー熱いから自分で食べるわ」
「あーん ほら」
「ええって。煮込みが足りなそうだし」
「ええやん。あーん」
「な カレー煮な 言うた通りやん煮込み足りんて」
美味しいとは言えなかったけど。私の幼馴染である安中れにな よく泣くので<泣かれにな>と私が言っているくらいだから、本当のことは言えない。
「あれめっちゃ好き好き好きーで 私のことも好き好き好きーになったんやって」
あんなカレーになあ 胃袋掴まれる男もおるんやなあ
「よく観たら顔もかっこいいし」
「え ヒラメ いや あんなカレイ似な顔がかっこいい?よくわからん。」
あ また泣かしてしまった
「あーん」
泣かれにな
解題
「あんな、彼にな、告白されたんよ」
へー 気難しくて真面目そうな あんな彼にな
「あーん」「な カレー煮な」
私の幼馴染である安中れにな
あんなカレーになあ 胃袋掴まれる男もおるんやなあ
「え ヒラメ いや あんなカレイ似な顔がかっこいい?よくわからん。」
あ また泣かしてしまった
「あーん」
泣かれにな
「アンナカレーニナ」の作者はトルストイ
恋しとる ストイックな彼がね
ずっと前に思いついて いろんなバージョンを書いているテーマです。
この記事を書いたのは2024年1月で、
2024年10月に読んだ「君のクイズ」という本に
なんとアンナカレーニナという題名で同じようにカレーの話を創作するというエピソードが書いてありました。初版は2022年ですね。
たぶん世界中の人が、アンナ、カレーでいろいろなことを想起しているのでしょう。そのうちにアンナ カレーニナ創作文学賞のようなことを企画してもいいかもしれません。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?