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SaaSビジネスでエンゲージメントが重要となる7つの理由

どうも!ExploratoryIkuyaです。

突然ですが、私のいるExploratoryではSaaS(Software-as-a-sercvice)のビジネスをやっているのですが、つくづく思うことがあります。

それは、もしMRRやチャーンといったSaaS特有の指標の中から一つだけ重要な指標を選ぶのであれば、それはエンゲージメント・スコアであるということです。

というのも、このエンゲージメントスコアこそがビジネスの上の意思決定や具体的な打ち手に役立つもので、他のどの指標よりもビジネスの成長に貢献する指標だからです。

そこで今日は、エンゲージメントがSaaSにとって重要であるということを説明する良い記事が、AppcuesというSaaSを提供する会社のブログに掲載されていましたので紹介したいと思います。Appcues自体の知名度は決して高くはないですが、要点が抑えられており、参考になる部分が多いので、こちらで紹介させていただきます。

以下、要約。

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顧客エンゲージメントは全てのSaaSのビジネスにとって血液のように、非常に重要なものです。例えばDavid Skokは以下のように言っています。

SaaSのビジネスに携わるCEOの最終目標は一人ひとりの顧客からの利益、つまり顧客生涯価値を最大化させることです。そして、営業やマーケティングの関わるコスト、つまりは顧客獲得コストであるCACを最小化することです。顧客エンゲージメントは、それらを達成の鍵となります。なぜなら、それらは無料トライアルユーザーのコンバージョン率の改善に役立つものであり、それらはCACを減らすことを意味します。また顧客エンゲージメントはLTVを増加させることを意味しています。

David Skok
訳者注:David Skok はMatrix Partnersというベンチャー・キャピタルの経営者で長きに渡りマーケティング・オートメーションツールのHubspotのボードメンバーだった人物です。

顧客エンゲージメントが存在しないSaaSビジネスは本当の意味で良いSaaSのビジネスとは言えません。なぜならSaaSのビジネスは(顧客がどれだけ継続してくれるかという意味において)リテンションによって成り立っているからです。

例えば(月額のSaaSのビジネスにおいては)毎月、毎月、サービスに対して費用を払ってもらう必要があり、そのモデルがビジネスとして機能するためにはある程度の期間、支払い続けてもらう必要があります。

しかし、もし顧客があなたのサービスを利用しなくなった場合、支払いを止めてしまいます。(最も、それは多くのケースにおいての話で、例えば私の父親なんかは未だにAOLに支払い続けていると思いますけど 笑)

訳者注:AOLは20年前に多くのアメリカ人が使っていたインターネット・サービス・プロバイダー

つまり驚くほどシンプルな話ですが、エンゲージメントなくして顧客の継続はありえず、ビジネスは成立しないのです。それにも関わらず多くのSaaS企業ではシステマチックかつ定量的に顧客のエンゲージメントをトラックしていません。なぜでしょうか。

例えばそれは多くの場合、想像しているより実際にやろうとすると難しいからです。一方でそれは顧客のエンゲージメントを計測することでSaaS企業の多くの部署がどれだけのメリットを享受できるかを理解していないからかもしれません。

以下、全てのSaaSビジネスがなぜ顧客エンゲージメントを指標としてトラックすべきかについて述べていきます。

理由1. 計測していないものはコントロールできない

ピーター・ドラッカーが言ったように、これが決まりきった格言であることは私も理解しています。ただし格言が格言たる理由は一種の真理をついているからとも言えます。

もし、あなた自身のSaaSのビジネスがユーザーの強いのエンゲージメントに支えられていると思うのであれば、それをコントールしたいと思うはずです。そしてエンゲージメントをより強くしたいと思うはずです。しかし、計測していないものの改善をどのようにして把握することができるでしょうか。もしエンゲージメントを把握できていないのであれば、自分が労力を掛けた施策がうまくいっているかをどう理解するのでしょうか。

コントロールしたいのであれば、まず計測すべきなのです。

理由2. 営業リソースを最適化できる

あなたのSaaSビジネスはフリーミアムモデルをとっている、もしくは無料トライアルを提供していますか?それとも営業チームを持っていますか?

もしあなたが両方の質問に「はい」と答えるのであれば、まずあなたは、有料顧客になる可能性が高い顧客に営業リソースを割きたいと考えるはずです。最もコンバージョンしやすい顧客はもっともエンゲージメントが強い顧客だからです。これは当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが驚くほど多くのSaaS企業が未だにフリートライアルのユーザー全員にアウトバウンドしていたりします。

訳者注:アウトバウンドとは企業やコールセンターから電話をかけるなどして行われるサービスの提供や商品の販売などの営業行為のこと

これが意味することは(サインアップ数が多いサービスなのであれば)大量のインサイドセールスが必要ということで、そうすると必然的にコンバージョン率も低くなり、それが問題となり、くだらないミーティングが何度も開催されることになるのです。

少し脇道にそれてしまいましたが、ポイントはいかなる時も、リソースを最適化することが非常に重要だということです。

コンバージョンする可能性が高い顧客を予測し、エンゲージメントが高い顧客にリソースを割くよりも良い方法はないのです。

理由3.カスタマーサクセスのリソースを最適化できる

顧客のエンゲージメントに関する計測可能な情報が、解りやすくかつ簡単にアクセスができること抜きに顧客マネジメントは実現しません。

優れたカスタマーサクセスチームは全ての顧客に対して、ユーザーレベルでエンゲージメントスコアを持つべきで、なおかつそれに簡単にアクセスできるべきです。

カスタマーサクセスにおいて、なぜこれらの情報が重要なのかを以下説明していきます。

1. オンボーディングの取り組み結果を見える化する

オンボーディングの全てのプロセスは、初期段階のエンゲージメントを獲得するために存在します。例えば必要な情報やトレーニングを提供するのは、可能な限り新規ユーザーのエンゲージメントを獲得するためです。にも関わらず、それらが計測できていなかった場合、オンボーティングによって、エンゲージメントが獲得できているかをどのようにして理解するのでしょうか。

2. エクスパンションが見込める顧客へのアクションを優先できる

もしあなたのカスタマーサクセスチームが既存顧客のエクスパンジョンを担当しているのであれば、どの顧客から着手すべきかはエンゲージメントに関するデータで分類されるべきです。エンゲージメントがない顧客に直接会おうとしたりして、高い営業コストを掛けることは無意味で、生産性を損なうものです。

3. エクスパンションに向けて戦略が立てられる

エクスパンションに関する取り組みを始めるのであれば、まず顧客の中でも最もエンゲージメントが高いユーザーを見つけることから始め、何に価値を見出しているのかを明らかにして、それを決済者や意思決定者との会話に活かすべきです。一人の強いエンゲージメントを持った顧客は、ある種、第三の従業員とも言える存在で、彼ら・彼女らがいかにビジネスに貢献するかに驚くことでしょう。

4. エンゲージメントを獲得するための行動を起こすべきターゲットを明らかにする

エンゲージメントを得られなかった顧客は、もう一度エンゲージメントを得るための取り組みをする対象となります。これらの顧客には自動化したメールでのコンタクトや個別メールの送付などの取り組みができます。

5. サポートに情報を提供する

顧客に関する情報があればあるほど、サポートは良い仕事ができるものです。事前にエンゲージメントに関する情報がわかっていれば、顧客のサポートにあたって、どのように対応するかについて、より良いアイディアが浮かびやすくなります。

6. 工数を減らす

信じてほしいのですが、カスタマーサクセスチームというのは、信じられないくらい多くの時間をどの顧客やユーザーの、エンゲージメントが強いかを理解するのに時間をとられています。
分析ツールを使ってみたり、サポートに寄せられた問い合わせを参照してみたりして、どのユーザーのエンゲージメントが高いかを調べています。もしエンゲージメントに関する情報がシンプルかつ簡単にアクセスできるようであれば、そのような無駄な時間を減らすことができるのです。

理由4.サービスの訴求方法の改善に役立つ

計測可能なエンゲージメント、エンゲージメントスコアは製品やサービスにより役立つものです。

例えば、エンゲージメントが強いユーザーにはメールで訴求をするのではなく、サービス上でメッセージを出して、新しい機能など製品に関する情報を伝えることもできるわけです。

逆に、エンゲージメントが得られなかったユーザーは、おそらく製品やサービスをあまり活用していない可能性があるので、メールなどで情報を発信した方が良いものです。

また例えば製品のアップデートがあった際はエンゲージメントの強さでコミュニケーションを変えることもできます。最もエンゲージが強い顧客やユーザーは新機能に対する反応が高いと考えられるので、例えば、あたたの体験をより良いものするために製品に新機能をつけました!」とよりアグレッシブな伝え方をしてもいいかもしれません。

一方でエンゲージメントが得られていない顧客は、新機能について特に興味がないかもしれません。というのも、そもそも既存のサービスは製品を利用していないからで、それであれば、「まだ我々の製品に確信がもてませんか?もしかしたら、新機能が役立つかもしれません」といったメッセージを送っても良いわけです。

いずれにせよ顧客の状況に合わせて、コミュニケーションをするべきなのです。

加えてあなたのSaaSサービスにはリファラル(紹介)プログラムはありますか?もしあるようであれば全ての顧客に新しい顧客を紹介してもらうようお願いするのは時間と労力の無駄です。

エンゲージメントが得られてない顧客が新しい顧客を紹介してくれる可能性はないので、そういったことをお願いするべきではありません。もしそのようなことをしたら、顧客が向けてくれる興味を浪費するだけでなく、ちょっと真抜けに見えてしまうわけです。

従って、これらの紹介プログラムはエンゲージメントが強い顧客にだけ絞った方が良いものです。

上記で説明したことはあくまで、顧客とのコミュニケーションの取り組みに活かせるもののほんの一例にすぎません。重要なことはエンゲージメントは、あなたが発するメッセージが送った人に自身に関係があるメッセージであると思ってもらうことに役立つということです。

理由 5: 賛同者、サポーターを特定する

賛同者・協力者・エバンジェリストを得ることは全てのSaaSビジネスにとって非常に重要なことです。なぜなら、彼ら・彼女らはリファラル(紹介)をもたらすだけでなく、製品を改善させる重要アイディアやどのようにサービスが使われているかといったケーススタディーなど様々なフィードバックをもたらしてくれるのです。
では誰が協力者になるでしょうか?最もエンゲージメントが強い顧客です。エンゲージメントを計測することで、これらの協力者候補を瞬時に特定することができるようになるわけです。

理由6: 製品・サービスに対する改善の取り組みがうまくいってるかを確かめられる

全てのプロダクトチームは世界で最高クラスのエンゲージメントを得るために、製品やサービスに機能を追加するわけです。もし顧客のエンゲージメントを理解する客観的な方法がない場合、製品やサービスの改善にかけた時間が報われているかをどのように計測することができるのでしょうか。

理由7: ビジネスを予測することに役立つ

SaaSのビジネスにとってエンゲージントスコアは将来のビジネスの予測に役立ちます。例えばユーザーエンゲージメントスコアが上昇しているのであれば、ビジネスが成長することが想定できますし、逆なのであれば、チャーンがより多く発生すると言えるかもしれません。
実際のビジネスにおいては物事はここまで簡単ではなく、確実だということはできませんが、ある程度は正しいはずです。ビジネスの予測に役立つ指標を計測せず、みすみす見過ごすべきではありません。

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以上、要訳終わり

あとがき

本日はエンゲージメントを計測すべき理由についての記事を紹介しました。

本文でも簡単に言及されていましたが、エンゲージメントを計測する意義はそれがビジネスを左右するコンバージョンやチャーン、リテンションに関わるからです。逆にコンバージョンやチャーン、リテンションと関係がないものをエンゲージメントとして計測しているのであれば、それは再設計の必要があるかもしれません。

またマーケティングの世界ではRight Person, Right Place, Right Time, Right Messageが重要という話があります。これは適切なターゲットを選定し、適切なタイミングで適切な媒体を使って適切なコミュニケーションをとることの重要性を説いたものですが、エンゲージメントを計測すると、まさしく誰をターゲットとして、そのターゲットにはどういった方法やタイミングでコミュニケーションを図るべきかということも検討できるという意味で様々な部門や切り口で活用が見込めるわけです。

SaaS アナリティクス

SaaS(Software-as-a-Service)やサブスクリプション型のビジネスに特有のKPI(指標)を以下のページにまとめています。ご興味ある方はぜひご参考ください!

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