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「異日常」34/37
ピンポーン ピンポーン
俺はインターホンの音で目を覚ました。どうやら日記を書いた後、寝落ちしてしまったらしい。
ピンポーン ピンポーン
再びインターホンが鳴った。相手は二度インターホンを鳴らす。空はまだ夜が明けるか明けないか。青黒い。デジタルカラスもまだ寝てる。そんな時間に訪れた非常識な来客を完全無視だと決め込んだ俺の耳に、
「すいませ~ん。パラグアイchですけど~。受信料の集金に来ました~。」
という不審な声。寝落ちする前に味わった猛烈な違和感が蘇る。
日記を書いた後、風呂に入る気力すらなかった俺は雪崩れるようにベッドに寝転んだ。なんとなく無音が苦しくてテレビを点ける。そこに、違和感の元となった何やら気になる映像が。安っぽいリビングを舞台に、南米カリブ風の美女が一人。スペイン語を操る彼女の下には日本語字幕が流れていた。画面右上には「パラグアイch」という血文字。
ただならぬ違和感を感じた俺は、ベッドから身を起こし第三の眼でテレビを凝視した。
美女「卵を食べるっていうのは一体どういう了見なのでしょうか?私は幼少の頃、卵が鳥の赤ちゃん玉だと知ってからどうにも食べられないのです。」
-じゃあもう一枚脱いでくれる?(カメラの側から聞こえる音声。無論スペイン語で字幕表記。)
美女「え?脱ぐんですか?はい。卵は人間で言いますところの胎児でしょう?その胎児を食べてしまうっていう行為がどうにも残忍に思えて。勿論、全ての食事が多くの命の犠牲の上にあるのは百も承知です。私だって食事はしますし、日々全ての命に感謝しているつもりです。だって、人間の食事の為に毎秒四万の命が殺されているのですよ?そういった背景がある中で、敢えて、未来ある胎児に手を出すという行為は如何なものでしょう?」
-ちょっと股開いて?
美女「え?それはちょっと、、」
-お小遣いアップさせるから?
美女「は、はい。それで親鳥目線に立ってみてもなんだか切ないのです。毎朝希望を込めて卵を産むでしょう?それを業務的にサッと取られて『産みたては美味しいから』なんて食べられるんですよ?私なんだかゾッとしちゃって。ちょ、ちょっとカメラ近くないですか?」
-いいじゃん、そこにある卵で恥ずかしいところは隠していいからさ。ブラ外してよ?
美女「え?」
-お小遣い弾ますから?
美女「は、はい。こういった理由から私は卵を食べないのですけど、考え過ぎでしょうか?だって自分の赤ちゃんが産まれてすぐ食べられたらどうです?」
-それよりちょっと触ってもいい?
美女「え?ちょっと、ダメ、あ、ちょ、そこは、アン、、いやん、、」
ペイチャンネルの類だろうか。スケベ心より道徳心を強く掻き立てられ、股間は萎え、目が冴えた。卑猥だが倫理観を揺さぶられる新感覚。
俺は、引き続きパラグアイchを視聴することに決めた。
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