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物語ってやつはいつか終わるけどある意味終わらない

銀魂の映画完結編を観てきた。しかも舞台挨拶の中継付き。もちろん夕方・休日の上映であるため定価の大学生1500円だ。

「映画はなるべく安く観る教」の熱心な信者の私と、「ファンとして原作サイドに貢ぐ党」の幹部の私が脳内選挙で戦った結果、「原作サイドに貢ぐ党」が圧勝した。勝因は「舞台挨拶の中継見られて定価なんて安すぎるだろナメてんのか!」という「貢ぐ党」の一声だった。なお、「安く観る教」は速やかに敗北宣言をしたからどこぞの大統領とは違ってトラブルは起こさなかった。そろそろ怒られそうだからやめておこ。

まあそんなわけで、ワクワク銀魂ソロ活をしてきたんですわ。

映画が終わって席から立ち上がる時、普段なら頭の中は感想で一杯、早くスマホに書き殴ろう!と息巻いている。

だが、今回は違った。
何も言葉が浮かばなかった。完結したショックというより、思考停止に近かった。情報が完結していなかった。ハッ!これが無量空処ってやつか…!と思って自分を茶化そうとしたのに、やっぱり普段おしゃべりな脳内の自分は全然口を開かない。
頭の中が真っ白な珍しい自分に戸惑いながら、シアターの出口へ向かう人の波に呑まれた。ざわざわと人の話し声に囲まれながら進む。
そんな時だ。

右斜め前から、若い女性の声が聞こえた。

「あーあ泣いたけど涙乾いた笑」

ああ、これだ。
この一言に、私が愛した銀魂の全てが詰まっていると思った。私が言葉にできなかった気持ちが言葉になった。止まっていた頭が叩き起こされたような気分だった。

くだらなくて下品ででテキトーなのに、大事な所でカッコよくて。でも最後はまた笑わせてくれる。私は、銀魂でダメダメなかっこよさを知った。欲求に素直な人間の魅力を知った。自分が許せないと感じる事が減った。たくさん、本当にたくさんの価値観と笑いをくれる銀魂が、本当に大好きなんだ。

私が初めて銀魂に接触したのは、YouTubeの違法アップロードのアニメだ。
いや、悪いと思ってるよ!今は銀魂見る時アマプラから見てるから!!課金してるし合法だから!
まあそれはよくて。
あの頃、私はテストの点数のために勉強するのが嫌で嫌でしょうがなかった。漫画も好き、友達とも遊びたい、でも成績は欲しい。何も捨てられず抱え込んで、勉強をすべきと分かっているのにしない自分が悔しくて情けなくてたまらなかった。勉強できない自分には価値がないと思っていたので、机に向かって勉強しようとするのに全然集中出来ずに逃げて、そんな意志の弱い自分に嫌気がさしてまた逃げる。それを繰り返してどんよりした気分だった。
ある日の現実逃避の最中、YouTubeで一つのアニメを見つける。
白髪の男と黒髪の似た男2人が並び立つサムネイルだった。キャラクターの名前も作品も何も知らないまま見た。めっちゃくちゃ面白かった。声出してお腹が痛くなるまで笑った。
「似ている2人は喧嘩する」に、私の人生は狂わされてしまった、いい意味で。
勉強できる私でいなくちゃ、いい奴でいなくちゃと義務感で生きてきた私には、暴言もくだらない下ネタも自分の欲求に馬鹿正直なキャラクターたちも、どれも新鮮で眩しかった。
他の話も読むうちに、できれば働かずに金を稼ぎたいとか、人の成功を妬むだとか、やばいキャラばっかりだということがわかった。
でも、本音に素直でチャランポランだけど、仲間を大切にするためにはどんなことでも頑張ってしまう銀さんたちが大好きになっていった。

そんな彼らに出会って、少しずつ、自分の本音と向き合うようになった。そして少しずつ、下ネタとパロディの面白さから抜け出せなくなっていった。

今回の映画も、やっぱりヒドくて最高で、カッコよかった。
正直、映画として面白かったかと聞かれると自分でもわからない。ただ、観てよかった、銀魂にであえてよかった。それだけは、間違いない自分の感想だ。

完結した作品には、ロスがつきものである。そう思っていたけれど、本作を見終わって喪失感なんて微塵も感じなかった。
銀魂の連載は終わったし映画の新作ももうないが、私たちが銀魂に心を動かされた影響は、ずっとずっと残る。私の文章にも考え方に、銀魂カラーが残っている。そんな人たちがきっと日本には山ほどいる。
映画のラストシーンの新八のセリフが全てだと思う。これから観る人は是非聴いてほしい。

物語とは、作り手にとっては生きた証だ。後の世代にとっては時代の琥珀だ。そして、同じ時代に生きる人々の逃げ場であり学びの場でありつながる場であると、私はそう信じている。

人間は永遠に生きることはできないけれど、自分がこんなものを作った、こんなことに出会ったという事実は、回り回って受け継がれていく。永遠に人類にうけ渡されていく。

銀魂はこの映画をもって本当に完結してしまったけど、この作品が伝えた言葉や世界は、読者と観客がずっと持っている。その読者や観客が「銀魂」というタイトルを忘れても、銀魂から受けた影響は無意識に本人たちに残り続ける。そんな影響を受けた世代の人間がまた次の作品を作り、新しい物語が生まれる。ああ、こうやって物語は永遠に残り続けるんだなあ。エモい気持ちになった。

物語って完結するけど終わらない。

銀魂のおかげでまた新しい事実を認識できた。

ありがとう、銀魂。ありがとう、空知英秋をはじめ銀魂を生み出してくれた皆さん。
そしてさようなら、シンジ、アスカ、レイ、カヲル。さようなら、全てのエヴァンゲリオン。

銀魂は永久に不潔です。


大好きだ。

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