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朝ごはんに、プラスしてヨーグルトを買う奴が羨ましかった。


合宿終わりの朝ごはんに、プラスしてヨーグルトを買う奴が羨ましかった。

ゼミ合宿の翌日は大体1,2限が授業なので朝食を買ってから3人でぶらぶらと研究室に向かう。この何でもない時間が自分は一番苦手だった。

入校口の前にあるセブンイレブンのドアが開いたら、目の端に映るピザまんをガン無視しながら菓子パン売り場へ直行して、スティックパンの袋を無造作に掴む。いつもと変わらぬ無表情ルーティーン。

寒い日のセブンのピザまんは特別美味いしその気分でないなら選択肢No.2は絶対米がいい。ましてや甘い菓子パンなんて大嫌いで、せめて惣菜パンを食べたい。何なら朝からガッツリ温かいカレーか親子丼が食べたい。ああ、親子丼食べたい。そう思いながらスティックパンを握ってレジに向かう。

ここまでで10秒、自分にはこれが精一杯だった。
「何贅沢に美味しいもの選んじゃってんの、ププッ」
自分にとって美味しくて贅沢なものを自分に選んでいるなんて、
誰にも思われたくなかった。

菓子パンを握ってレジに行く私に対して、あの子はおにぎり売り場を一巡りしてデザート売り場までゆっくり物色して、その日その瞬間に自分の口に合う最高の朝ごはんを探していた。5分以上待たされてようやく入校。すごくいらいらした。

研究室に入ると、あろうことかそいつはお湯を沸かし始めた。
インスタント味噌汁のカップを開けながら他の戦利品を次々に出していく。
おにぎり、カットりんごにヨーグルト。何と自分の欲望に忠実な奴だ。
何で人前でこんなことができるんだ、恥ずかしくないのか。

甘い菓子パンを口に詰め込みながら、
その光景が本当はすごく羨ましくて泣きそうだった。

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