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旧暦のスゝメ

生活は年末・催事は霜月

 月桑庵は旧暦で催事を行う。
 といっても生活は新暦であり、不便といえば不便である。
 
 しかし、寒中でもないのに師走と言われてもピンとこないのだ。

 クリスマスは新暦でするものなので、いいのだが、どうにも年の瀬という気がしない(苦笑)

 先日催した霜月の「お茶会へ行こう」が終わると年の瀬という気がしないでもないのだが、それでも、ピンとは来ない。

 それもそのはず、日本語の季節感は旧暦に根ざしているのだから、当然である。

旧暦の意味

 旧暦十一月は子月である。十月が亥月であるのだから当然だが、子月は冬至の月であり、周王朝では正月であった。その前の商王朝は丑月が正月で、その前の夏王朝では寅月が正月であった。因みに周王朝の次の王朝である秦王朝は十月が歳首とされた。

 続く漢王朝は夏暦を正として、正月を寅月に置いた。これが春を正月とする現在の旧暦につながっている。

 実は日本の旧暦と支那の農暦(旧暦のこと)は微妙に異なっていて、これは江戸時代に日本と支那の経度がずれていることを織り込んで暦を修正したのが始まりである。

 日本に暦が伝わって以来、日本はずっと旧暦だった。当然そこで育まれた言葉と感覚は旧暦に根差している。

 故に新暦の正月に新春という言葉が当てはまらないのである。

 梅は新暦2月の花であり、正月は新暦2月に来る。

筒茶盌のボヤキ

 筒茶盌に目出度い柄など使ってほしくないのだ。筒茶盌には侘びて、枯れた景色が良く似合う。

 世の中が正月気分で初釜を開く中、私は一人師走の気分で茶の湯をする。新暦1月は蕎麦懐石をすることにしているのだ。

 年越蕎麦をテーマにした懐石である。

 蕎麦料理の懐石ではなく、飯の代わりに蕎麦を食べ、鴨南蛮だの、天麩羅だのを煮物椀やら焼物として出し、数種類の蕎麦を出す。

 だからといって、世の中とズレた生活をする訳にはいかない。会社は新暦で動いており、デパートも年末でないと売らない品物もある。だから、この時期に御節を作り、新暦で新年を祝う。

 仕方ないので、御節を冷凍保存して2月の初釜にお出ししている。御節の材料が年末にしか手に入らない苦肉の策だ(笑)

 それでも、初釜は2月が良い。
 余寒の時期になり温かい日もあり、偶にドカ雪が降るが、やはり陽射しは春らしい。

 茶の湯は旧暦に限る。 

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