凶暴乙女
左手でスキンケアをしながら
右手で詩を書いている
さてどちらの手のほうが忙しいでしょう
どちらの手のほうが重要でしょう
どっちも欠かすことは出来ない
うら若き乙女の詩人
上手なマスカラの塗り方は
ニーチェは教えてくれないから
パンダになりながら自分で孤軍奮闘
哲学の道で哲学してる奴に
ドロップキック入れる脚力も嗜みのおひとつ
街に出ればうようよと男たちが寄って来るけど
あんたたちの中に詩になりそうな人はいないわ
未だに後悔してるのは
いつも授業サボって図書室で本を読んでた
中村くんに好きって伝えられなかったこと
彼こそ創作の源になり得る人だったのに
あたしこんなに凶暴だけど
言いたいことも言えない怖がりな一面は
乙女だから仕方ないよね
下駄箱のラブレター焼却炉にぶち込んでたけど
だって要らないものは要らないんだもん
おパックしながら紡ぐ文章にも
潤いが浸透しますように
プルプルなあたしのお肌を撫でるように
どうか言葉たちを可愛がってあげて
最近lineでやたらとしつこい男に
どんな報復を与えようか悪どい事を考え中
左手で返事打ちながら右手で詩を書くような真似は
詩の神様に叱られそうだからやらないわ
可愛いあたしがより可愛くなるための行為は
許されるって自分で決めてるの
だって乙女だもん
自分勝手に生きることをモットーとしたあたしが
どこかにいる大切な人に向けて
一文字一文字心を込めるなんておかしいかしら
だって外は雨
濡れてる人を可哀想だと思うのは
ごくごく自然なことでしょう