私を愛さないあなたなんて

夢の中でよく笑う、あなたはすっかり健康で
私なしでは呼吸すらままならなかったあの頃の面影は
どこにも見当たらないのでした
20年間、探し続けて、ようやく見つけた
心臓が口から飛び出そうなほど高鳴る鼓動
再会を遂げた魂の双子は、もう二度と離れることを知らない
そう、信じていた
たまらず口づけをせがむ私を、こらこら、と諫めるあなたは
明らかに、もう私を必要とはしていませんでした
神仏にすら唾を吐く私が、唯一信仰してきたものがあるとすれば
それはあなたへ誓った愛だけだった
あなたは笑顔で語りました
自分には心から大切に思うパートナーがいるのだと
夫がいる私は自分を棚に上げて、激しい殺意に駆られました
私以外を愛するあなたなんて、あなたなんかじゃない
絶対認めない、そんなことはあってはならないことなのだ
他人の輪に溶け込んで、穏やかな笑みを浮かべながら談笑するあなた
あなたはあれほど人間嫌いだったではないですか
全ての他人を遠ざけるためにわざと皮肉という鎧を纏い
私の前でのみ、心を許し、くつろぐことの叶う世界一不器用で
純潔な魂を、いつ、どこで、この穢れた社会に順応させたというのか
そんな真似ができる人だったなんて到底信じられない
目の当たりにしている今も、悪い夢を見ているだけのよう
時間はあなたの心の病を癒す代わりに、あなたをただの男に変えてしまった
呆然と立ち尽くす私の視線の先に、ピンと伸びた背筋があります
世界を呪うような猫背を、未だ矯正できていないのは私だけですね
ひとりになってしまった
今度こそ、ほんとうにひとりになってしまいました
愛する人の幸せを願えない者は、地獄に堕ちるのでしょう
でも、もう、堕ちたよ
私以外を愛するあなたを眺めるという刑罰は、指一本触れることすら
許されない拘束は、死罪に値するのですよ
もしも、また出会えたなら、転げそうになりながら駆け寄って
抱き締め合うのだと、これっぽっちも、微塵も疑ってはいなかった
別人のように、幸福な人へと変貌を遂げたあなたを見つめながら
いっそ自ら、ゴミ箱へと片足から踏み入れましょうか
あなたが愛さない私なんて、私なんかじゃないのですから

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