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放送事故・ハプニングマニアとしての活動と、その思い出。

ネット黒歴史第二弾。
10代の頃、放送事故マニアだった話。


一口に放送事故と言っても、一般的には2種類の意味で使われる。

・本来の意味での、機器のトラブルなどによって映像が乱れる放送事故。
・俗語としての、ハプニングやアクシデントを指す放送事故。

私はどちらかと言うと、後者の「放送ハプニング」に興味があった。
起きてはいけないことが起きているという不謹慎なワクワク感や、放送倫理を通して「日本人の倫理観」が垣間見られる所が、なんとも面白いと感じていたのだ。

10代の頃のフェイバリットは、BPO(放送倫理・番組向上委員会)のホームページである。
「視聴者からのご意見」のページを読むのが好きだった。アーカイブがそのまま“テレビ事件簿”になっているから、月ごとの放送ハプニングが把握しやすいのだ。

「視聴者からのご意見」のほとんどは、放送内容への批判である。
どんな人が、テレビの何に対して怒っているのかが、淡々としたお役所風の文章でまとめられている所が、妙に面白い。

内容的には、「ワイドショーのコメンテーターの発言が不適切と感じた」とか「バラエティ番組の罰ゲームが過激すぎる」、「夕方のアニメが青少年に悪影響な内容だった」といった感じ。
中には「報道番組で悲惨なニュースを扱っているのに、それを伝える女性アナがイヤリングをしていた」といった批判意見も載っている。

ここまではまぁわかるが、たまに「その視点はなかった」という興味深い意見が寄せられていたりする。

個人的に唸ったのが、「小松左京『日本沈没』をパロディ化した内容のCM。作品が描かれた当時はSFだったかもしれないが、近年は地球温暖化により、“日本沈没”は現実的な問題になっている。こんな風に軽々しく扱うべきではない」(意訳)という意見。
「そんなことを考えてCMを観る人が居るなんて」と驚きだった。

テレビ局やBPOに意見・クレームを入れる人というのは、きっと生真面目で正義感の強い人が多いのだと思う。

そんな人々にとって、倫理的放送ハプニングは、もっとも許しがたいものであろう。

現在のようにコンプライアンスが叫ばれる以前のテレビは、問題が多々あった。
「『ワンナイR&R』“王シュレット”事件」、「『カミングダウト』あびる優窃盗告白事件」など、枚挙に暇がない。

私はそういった事件が起こると、「これはヤバいぞ・・・!」という変なお祭り感を内心で感じたものだ。

当時はSNSでなく、放送事故マニアの集まる掲示板で情報収集や意見交換をしていた。
どの事件についても言えるが、番組打ち切りレベルのことが平気で放送されていて、あまつさえ謝罪がない場合もあったりして、視聴者はそれに対して意見する手段も限られていたから、「このヤバさ、どう収集つけるんだ?」というモヤモヤの解決策を、ネットに求めるしかなかった。

例で挙げた件で言えば、その顛末はこうだ。

・王シュレット事件
王貞治監督の顔を模したウォシュレットが登場するコントを放送し、批判が殺到。
放送後、球団側が抗議し、フジテレビは謝罪。しかし、その年フジ系列は、プロ野球日本シリーズの中継が出来なくなったらしい。
『ワンナイ』内でもアナウンサーが謝罪、当該コーナー打ち切り、複数のスポンサーが撤退するなど波紋は広がったが、番組打ち切りは免れる。

・あびる優窃盗告白
タレントが話す内容が真実かを見極めるクイズ番組『カミングダウト』にて、あびるは「小学生の頃、ある店の倉庫に忍び込んで集団窃盗を繰り返し、結果的にそのお店は潰れてしまった」という“真実”エピソードを話し、視聴者から批判が殺到。
翌週の番組冒頭、テロップにて謝罪。あびるは芸能活動自粛。放送局の日本テレビには行政指導が入る事態に。

これらはハプニングというより「放送事件」と呼ぶにふさわしい重大な事案だ。

しかし、前述の掲示板では、もっと気軽なネタもたくさん取り上げられていた。
若槻千夏が「やる気満々、略してヤリマンです!」と発言した!とか、ゆうこりんが「こりん星はウソ」と認めた!とか、アナウンサーがホワイトソックスをホワイトセックスと言い間違えた!とか、今思うと本当にしょうもないことで盛り上がっていた。それはそれで面白かったが。

――ところで、放送事故やハプニングって、なんとなく怖い。
理由はわからないけど、下手な心霊モノより怖いと感じることがある。

『笑っていいとも!』の「テレフォンショッキング不審者乱入事件(1983年)」なんかめちゃくちゃぞっとする。これは映像も残っている有名な事件だ。

「テレフォン」では2005年にも不審者騒ぎが起きていて、これは私、たまたまリアルタイムで観ている。
山崎邦正(当時)がゲストの回で、「いいともって年内に終わるんですか?」などと声をかけた観客が、CM明けに退場処分を食らい、彼の席にはぬいぐるみが座っていた・・・・という事件。
空気を読まずタモリに呼びかける観客の様子に、過去の乱入事件の映像が思い出され、私は鳥肌が止まらなかった。
(ちなみにCM明けにぬいぐるみが置かれていたのは、『ロンパールーム』にまつわる都市伝説の再現である。放送事故ファンとしてはニヤリとさせられたし、機転に感心した。)

かつて、こういった放送事故やハプニングをまとめたホームページがあったが、今はもう削除されてしまっているようだ。
このHPの挿絵イラストの募集に応募したら、いくつか採用されて嬉しかった。

ある時、HPの内容が書籍化(自費か商業かは覚えてない。多分自費出版)されることになり、私のイラストも載るということで、本とお礼の品が送られてきた。
お礼の品は、サイトには載せられない放送事故動画をまとめた、管理人さんお手製の裏DVDであった。ラベルすらない真っ白なDVD。「裏」感が満載過ぎて、怖くて再生できなかった。

というわけで、一番怖いのは放送事故ではなく、ネットで知り合った人に本名と住所を教えてしまった10代当時の私だった、というオチ。


黒歴史シリーズ第一弾はこちら↓


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