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ジブリ×チャゲアス『On Your Mark』はなぜあんなに不気味なのか

(「画像は常識の範囲でご自由にお使いください」とのことなので、スタジオジブリ公式ホームページから画像をお借りしています。)© 1995 Studio Ghibli



風力発電の風車ってなんであんなに怖いんだろう。不気味だ。

あれは物言わぬ、意思ある人工物だと思う。気味が悪い。
私は風力発電自体には何の意見も持っていない。ただ感覚的に、あの風車はすごく怖い。ひと気のない海辺にズラリと並んでるのを見ると、怖気が立つ。

原子力発電のあのマークも、目にすると、なんとなく身構えてしまう。身構えたところで何もできないし、するつもりもないのだが。

チャゲアス×ジブリの映像作品「On Your Mark」なんか、あのマークが随所に出てくるから本当にゾワゾワする。

公式な設定かは知らないけれど、あの映像は、放射能汚染された近未来世界が舞台と言われているようだ。

作中には、不穏なモチーフがこれでもかと散りばめてある。
暗い空。超高層ビル。瞬きするネオンの目。
新興宗教の信者は赤いKKK頭巾を被っている。
本能的に「うわっ」と目を背けたくなる感じは、映画『アイズワイドシャット』を思い出す。

CHAGE&ASKAをモデルとした警察官のキャラクターは、愛嬌があって可愛い。しかし、彼らの置かれた状況はおそらく絶望的である。

バイオ居酒屋(?)で憂いの表情を浮かべる2人。
日本なのに、なぜか街は中国語だらけ。
彼らが生きているのは、色んな意味で「日本が壊れた後の世界」ではないか?と嫌な想像が膨らむ。

映像の大まかな流れはこうだ。
MVであるため、セリフはない。

2人は荒廃した街で、翼の生えた少女を救出する。
しかし少女は、どう見ても「悪」な研究所に収容されてしまう。
2人は少女を研究所から奪還する。
「エクストリームデンジャー」と書かれたゲートをくぐり、少女を大空に解き放つ。

少女はともかく、チャゲアスは人間だ。なんの装備も無く、オープンカーで「エクストリームデンジャー」地帯に入っちゃって大丈夫なのだろうか。
みんな厳重な防護服を着て外出するような世界なのに。

悲しいことに、その危険地帯とされているゲートの向こうに広がっているのは、我々にとっての「普通」の世界だ。緑が美しく、風が吹き抜けて、広い青空に白い雲が浮かんでいる。
この作品が公開されたのは1995年だが、この状況、福島の帰還困難区域を連想する。

2人は、なぜあの少女を助けたのだろう。
あの子は「危険地帯」で伸び伸びと羽ばたいていた。ということは、「それまでの世界」の人間の生き残りだったりするのだろうか。
つまり、少女を故郷に返してあげた、ということ?

ラピュタにあった「土に根をおろし、風とともに生きよう」という台詞がこの世界にも通用するなら、少女は危険を冒しても「風とともに」生きることを選んだことになる。

しかし、そもそもあの翼は何を意味するのだろう。放射能汚染というと生物の奇形化を連想するけど、もしや…。

いや、序盤に出てきた宗教絡みの可能性もある。天使に翼はつきものだ。
この子はあの教団の信者だったのだろうか。あるいは、崇拝対象として厚遇を受けていたりして。もっと言えば、この子がご本尊だった可能性すらある。
もしこの作品の製作がオウム事件のあとだとしたら、少なからず影響があるはずだが、時系列で言うとこの作品のほうが先だ。これは偶然の一致だろうか?
私は当時を知らないが、事件前からオウムが報道で取り上げられたりしていたなら、イメージソースにはなっているんじゃないかなぁと思う。

さらにこの作品の解釈を難しくしているのが、場面が繰り返したり前後したり、直前の場面と矛盾する描写が平気で出てきたりすることだ。夢なのか?錯乱なのか?
言葉による説明がない分、はっきり言って、どうとでも解釈できるので、観ている側がどこまでも想像を膨らませることができるのだ。
岡田斗司夫がイキイキしちゃう。

この作品の意味を考え出したら眠れなくなりそうなので、考察はこの辺でやめておこう。
曲中に「答えを出さない それが答えのような」というフレーズもありますし、ね。

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