自分の作品に対する感想に殺されないためのガイドライン
この時代、作品を作るハードルってのはけっこう下がってますよね。
漫画であれ小説であれゲームであれ、作るのに便利なツールがあり、気軽に作品を発表できる場があり、SNSなんかでエゴサをするのも簡単です。
んで制作者の方は簡単に、容赦のない感想・批評にも晒されるわけです。
またマイナスの言葉はけっこう影響力が強いもので、
ってのも珍しい話ではありません。
良くも悪くも作品の感想というのはクリエイターの心を揺さぶります。
なので自分の作品に対する感想との付き合い方をミスると、まぁ~筆を折りそうになるようなこともあるわけで、感想との付き合い方って大事だよなぁと日々思うのです。
また上記は「制作者が殺される」パターンですが、
みたいな「作品が殺される」パターンもあります。
今回の記事では、この両パターンの殺され方をしないためにはどうすればええんじゃろうな、という「自分の作品に対する感想との付き合い方」を色々と書いていきます。
◆肯定的な感想との付き合い方
はい、まずは肯定的な嬉しい感想。
これはですね……
喜びましょう。変に勘ぐったりせず。
時に喜びを表現してもいいです。歌ったり踊ったり。ガッツポーズをとったり。ちょっといいお肉を味わったり。今日はいい日だ、とつぶやいたり。
いやまぁここに関してはそう悪さをする所でもないので、適当なことを書いているだけなんですけどね。とりあえず、創作意欲への養分になれば何でもいいと思います。好きにしてください。
意識的に喜んでみると、ちょっと人生が楽しくなるかもしれません。
◆批判的な感想との付き合い方
さて、こっちが本題。
まず最初に、作品を発表していると色んな感想が飛んできますが、全部受け止めるのは無茶です。相当な強メンタルマンじゃない限りは殺されます。強メンタルマンも最大HPが高いだけなので、積み重なりすぎると殺されます。
特に私のような華奢で可憐で繊細なメンタルの持ち主は、受け止めるよりも
ことを目指した方が、殺されずに済むでしょう。防御力を上げてダメージを受けないようにする方向性。
ではこの「なんか良い感じに受け流す」にはどうすればいいのでしょうか?
それをこれから書いてきます。
◇批判的な感想を読んだときに、まずやる事は?
まずは落ち着きましょう。深呼吸です。ひっひっふー。
いや、気持ちは分かりますよ?
作品を作るのって手間も時間も金もかかったりするので、創作者にとっては我が子も同然。創作者自身の思い入れも強いので、それが否定されれば自分自身が否定されたような気持にもなり、
と冷静さを欠くのも分かります。ですが落ち着きましょう。どうどう。
あと批判的な感想をみると「こいつは敵だ!!」と思う激しい方もいらっしゃいますが、批判も様々で、アナタに対して悪意のある批判ばかりではありません。大丈夫。こわくない、こわくない。
そして落ち着いたところで、1つ想像をしてみましょう。
ズバリ
です。
と思う人もいるかもしれませんが、その判断をするのは『最後』です。多くの場合は「批判されている = クオリティに問題である」とは限りません。
そこを読み違えて「自分の作品が否定されている、嗚呼!」と落ち込んでしまうのは損です。
なので、感想の理由を探って「受け止めるべきなのか、受け流すべきなのか」を見極めましょう。より正確に言うと
の3つに分類できます。①を受け流したらもったいないけど、②と③を受け止めすぎると殺されるのでまずはそこの見極めをしましょうね、という話。
いくつかパターンを挙げながら説明します。
◇理由①:作品の方向性がその人に合わなかった
これは
ですね。
私もゲームクリエイターなので自分の作品の感想を集めたりしているんですが、よくあるのが
みたいな真逆の反応が「同じゲームに対して」送られてきます。
さて、この話。
Aさんがこきおろしているから、このゲームの質は悪いのでしょうか?
それともBさんが絶賛しているので、このゲームの質は良いのでしょうか?
これは、この感想だけで判断できることではありません。
人間にはそれぞれ好みがあるので「刺さる作品」と「刺さらない作品」は当然あります。
そして「その人に刺さらなかった作品」が「その人にとって評価の高い作品にならない」のは当たり前なんですね。なのでどんな良い作品にも批判的な感想はついてきます。
これに関してはもう、誰も悪くなくて、
という状態なので、こういった感想に対しては、
と受け流すのが良いです。自分が悪いわけでもないので、まともに受けて止めても不毛になりがち。
ちなみにボードゲーム界隈なんかだと
という言葉があったりもします。自分はこの作品を楽しめなかったけど、それは自分の嗜好に合わなかっただけだよ、という考え方。
作品に対する感想としてこの概念が広まるともうちょっと世界は平和になるのかなと思います。
◇理由②:攻撃欲や自尊心を満たしたかった
次。これは
です。いや、言葉にすると物凄いクズムーブな感じがしますが、私も何か学術的な研究の元で言っているわけじゃないので、それこそこの考え方が not for me な人はスルーしてもらってもかまいません。
ただ、ほとんど暴言や誹謗中傷、はたまた人格否定が入るような感想が存在するのも事実です。「批判をする」こと自体に暴言は必要ないんですが、
と読んでいて思うような事も、正直けっこうあります。
クリエイターの中には「自分の作品の感想は読まないようにしている」人もいらっしゃいますが、だいたいはこういう感想が原因じゃないですかね。読んでも嫌な気分にしかならないから。
じゃあ、そもそもなんでこういう行動をするんだろう?と考えるとですね。残念ながら誰かを攻撃したり、批判する事って快感を伴うんですよ。
特に「批判」っていうのは恐ろしい魔力を持っていて、
と感じやすい構造があります。批判をすればするほど自分の言っていることは正しい、自分が優秀な人間だと思えてくるので、自尊心が満たされていくんですね。
この辺の詳しく書き始めると長くなるので後回しにして、先に対処を書いておくと。まずこういった感想を目にした時に一番避けるべきは
です。感情が動くのって疲れるしどうしても意識をもっていかれてしまう。
そして「そもそも攻撃をするのが目的になっているような感想」と争った所で何も得る物がありません。まともに受け取って怒ったり落ち込んだりするのはめちゃくちゃ不毛なんです。
なのでそれを踏まえて考えると、これに関しては
と思った瞬間、一律でスルー対象として扱っていいと思います。
「一律で」というのがミソで、判定するために1つ1つを詳しく読もうとするとそれだけダメージがたまっていくので、読んじゃうとしても
くらいの感覚として読まないと殺されます。
殺されたら元も子もないので、怒りを感じる前に、もしくは怒りを中和するためにスルー対象として扱っちゃいましょう。
なお、真面目な純真な(そう!かつての私のような!!)人は、
と思う人もいるかもしれません。ですがそう思って受け止めようとした結果穢れてしまった人間として言うなら、無いです。そんなのは。
そういった意見を言ってくれる人はもっと冷静ですし。
0%とは言いませんが、0.01%みたいな確率のために筆を折りかねないダメージを負うのは収支が合いません。
よくわかんないソシャゲの渋すぎるガチャの最高レアリティを狙って課金した方がまだ有意義だよって言えるくらいには無かったです。
-------
このトピックに関しての最低限の話は以上なんですが、もうちょっと詳しく書けるので下に番外として書いておきます。
飛ばしてもいい奴だと思うので、飛ばしたい人は理由③に飛んでください。
◇番外:理由②についてもうちょっと詳しく
批判をすることでお手軽に自尊心を高められるよ、という話、これ「作品への批判」は特に強いんですよ。
批判の内容がどれだけ見当はずれで間違ってても、その人がそう思ってさえいれば成立するわけなんですが、批判された側からがっつり反論があり、内容を否定される……なんてことはほぼ無いんですね。
つまり作品への批判というのは、時に
として機能します。そして批判して気持ちよくなったという経験をすれば、また何かを批判したいという気持ちは高まります。(いわゆる正の強化)
つまり何かを批判したい、という気持ちを強くする仕組みもまた存在していて、批判をすること自体が目的になるのかなと。
ちなみにこの攻撃的な感想の話、私が関わったゲームの中でも印象的だったのが、「YouTuberによる批判を目的とした動画」でした。
まぁ関わっている私も(そのIPでそのシステム使うのはやめて欲しいなぁ……)と思っていたタイトルだったので、私自身も思う所がなかったわけではないんですが。そのIP自体は好きだったので私のできる範囲での愛は込めたつもりです。
しかしその動画を見てみると、揚げ足取りのような内容のものを強い口調で批判して盛り上がっている姿がそこにありました。
視聴者の方たちと一緒にそのタイトルをバカにしながら強烈な快感に身を任せているのが印象的で、「攻撃による快感を目的とした批判」が行われるパターンがあるのだなぁと強く感じた例です。
※ちなみにそのタイトルは毎月億単位の売上を出したりしていて好調でした。今はどうなってるのか分からないですけど。
上の例は「最初から攻撃してやろう」というパターンで、攻撃するのがそもそもの目的なので最初から歪んだ眼で(悪く言えそうな部分を優先的に拾って)見られます。
こういった物をまともに受け取ったり、怒ったりしても不毛なので、スルーしましょうね、という話になります。
ただ、そうじゃなくとも攻撃的になってくるパターンもあります。例えば
とか。こっちの方が多いかもしれませんね。
だからといって暴言に近いことをぶつけて良い理由にはならないですし、冷静さを失っているので参考になる意見をくれる期待値はかなり低いので、スルー対象として扱ってしまって問題ないと思います。
さて、この話をするとたびたび
的な話が持ち上がってくるんですが、だいたい無駄かなーと思ってます。
理由としては
ですかね。つまり最悪の場合、
というすんごく素敵な状況になるので、私はあんまりお勧めしません。
たびたび見かける「繊細な人に合わせよう」的な話は理想論で終わりがちだと思っています。(だったら繊細な人の防御力を高めたる方法を探った方が有意義かな、という立場)
あと私個人としては、例えば暴言的な感想であってもその人がそう思うのは自由だよね、とは思います。攻撃欲を満たしたいのもその人の勝手。
ただそれをそのまま暴言や誹謗中傷としてクリエイターが見えるような場所で言う(時に直接ぶつける)のは違くね、とは思っています。攻撃したいなら見えない所でやっておくれ。
◇理由③:作品のクオリティが悪かった
さて、理由①と②をくぐりぬけた感想。これは
と言えるので、作品を改善するのに役立つかもしれません。なので
になります。どんな感想がくるのかは何とも言えませんが、とりあえず理由①と理由②のように「無理に受け止めて無駄に殺される」的な話にはなりにくいのかな、と思います。
なお、必ずしも受け止める必要はなく、またそれをどのレベルまで受け止めるかはクリエイターの匙加減次第ではあります。極端な話をするなら
という繊細な人は、それこそ批判は全スルーした方が健全かもしれないですし。
自分のメンタル強度に合わせて、どこまで受け止めてどこからスルーするのか、理由①や②のようにルールを作ると良いかもしれません。
◆感想に作品を殺されないためには
さて、話が変わりまして作品の方。
というパターンですね。
なんでこんなことが起きるのか考えていくと、少なくとも以下の3つを念頭に置いた上で感想を参考にした方が良いのかなと思います。
◇ユーザー目線は狭い?
「ユーザー目線は狭い」なんてことを言うとなんだか批判の的にされて撲殺されそうですが、ちゃんと説明するとですね。
例えば感想で「こうして欲しい」って書かれる時、
って思いながら書くと思いますか?
ほとんどはそうじゃないと思うんですよね。
なので感想での要望って
が混同されていることがほとんどなんです。あとまぁ not for me の自覚があるならそもそも要望を書くなよって話もあるかもしれませんけど。
「感想」って、その人が
という話なので、感想で「こうして欲しい」って書かれる時って言い換えると
って話になります。これ、批判したりバカにしているわけじゃないですよ。
私が感想を書く時もそうですし。
更に言えば作り手は自分の作品について理解していて、
みたいなことを考えますが、その内容は作品に触れる人達にとっては知ったこっちゃありません。自分が本当にこの作品のターゲットなのか、そうじゃないのか判断できるのは全てを知っている作り手だけです。
個人個人の感想は、それぞれ自分の嗜好に合わせて自分の向きたい方向を向いています。自分の向いている方向を見て話をしており、必ずしも作品の方向性と同じ方向に向いているとは限らない……という点は注意する必要があります。
◇誰のための修正なのか?
さて、同じ作品に対して
という真逆の感想が出る以上、「全ての人が喜ぶ修正」というのは一部しかありません。大抵はこれみたいに、
という「誰かは喜ばない」話になります。
なので感想での要望は実のところ
に分かれます。
①みたいな普遍的な修正(例えばロード時間を10秒から0.1秒に短縮しましたとか)や、②の作品の方向性と合った修正は取り入れるべきでしょう。
しかし③みたいな作品の方向性と合わない修正を取り入れると一部の人の不満は解消されるものの、元々その作品のファンだった人は不満を持ちます。その上不満が解消された人たちはそもそも作品全体の方向性が合っていないので、不満が解消されてもその作品は特別刺さる物にはなりません。
その結果、最終的に作品の方向性が迷子になって誰も喜ばない作品になり、作品が感想に殺されることになります。誰も幸せにならない。
なので、感想を読んで自分の作品を改善しようとしたとき本当に色んな意見がくると思うんですが、その時
というのを念頭に置いてみると良いかもしれません。
◇「適切な対処」はプロでも難しい
自分の作品のファンから要望が届いたぞ!
作品の方向性とも合うし、取り入れた方が良さそうだぞ!
という時も、もうちょっと考えた方が良いことがあります。
作品を改善する上で、
というのは簡単な話ではありません。プロでも難しいし、その上感想を書く人の多くはプロではなく、またその作品を100%知り尽くしているわけでもない(前述したようにユーザー目線は狭い)ので
という話が出た時に、
みたいなパターンもよくあります。もちろん的を得た意見が出てくることもありますが、ここで重要なのは疑うことです。
例えば、喜ぶ人が多そうな
であっても、感想を盲信して見当はずれな修正を繰り返したら作品がつまらなくなるのは当然です。これは誰も幸せになりません。
不満を解消するために、何を、どういう方法で修正するのかは作り手がしっかり考える必要があります。
言い換えると
という話ですね。なので
というのが、感想を活かして作品を改善するのに大事な話になってきます。
◆補足:感想は数だよ兄者!!!
冒頭で
って話をしたんですが、これ、逆に
と認識するのも精神衛生上、大事なことだったりします。
無論「1割だから参考にならない」という話ではないんですが、批判的な話というのは特に目立つので、カウンターとして
と考えることで、過度に落ち込むことは防げるのかなと。9割も肯定してくれているのなら、決してクオリティの低い作品ではないでしょうし。
逆に批判が8割とかある場合も、まずは「批判の理由」を探ることが重要です。例えば
としたら、作品のクオリティ云々の前に「届いて欲しい人に届いていない」という問題があるので、落ち込む前にやるべきことが見えてきたりします。
あとその5割を除いて考えると、肯定的な意見が勝ったりはしますし。
いずれにせよ、「自分の作品を悪く言われた」時の引力は相当なもので、1つ1つの感想に引っ張られると苦しくなってくるので、時には感想を「全体の一部」として一歩引いたところで見ると良いのではないでしょうか。
◆ガイドラインまとめ
以上です。これまでの話をまとめると、
ですかね。(最後は本文にないけど)
感想は本当に良くも悪くもクリエイターのモチベーションを左右したりするので、上手く付き合えたらいいなぁと思っております。
筆を折らないための1つの意見として、参考になれば幸いです。
◆宣伝
皆様の忌憚なき感想を生かしながら個人でゲームを作っております。
主人公の「執着」によって結末が変化する、ゲームブック風RPGです。
あと普段は note でゲーム制作に役立つ記事を(できるだけ分かりやすく面白おかしく)書いてます。(不定期更新)
例えばこういうの。
Twitterもやっているので、そちらもよろしければー。
サポート(投げ銭、金銭支援)歓迎です。 頂いたお金はゲームの開発費に使用させていただきます。 ↓ 支援が多いと私のゲームのイラスト枚数が増えたりオリジナルの曲が組み込まれたりします。美味しいお肉を食べに行ったりはしません。