『ボス戦で有効に使える状態異常』を作るにはどうすれば良いのか?
ゲームのボス、状態異常が効かない(効きにくい、ほぼ有効に使えない)ことも多いです。こういうツイートがバズるくらいには効かない。
私自身、ゲームを遊んでいてボスと戦うときなんかは
と思いながら戦っている節はあり、何の情報もない状態で戦う時は攻撃方法から除外していることも多いです。
ちゃんと作られていないと
みたいなことにもなりかねません。もったいない。
ボスに状態異常が効かないのは制作上都合が良いこともあるんですが、1つのシステムの使い方が非常に限定的になったりするので、ゲームデザインとして良い形か?と言われるとけっこう微妙です。
ということで、この記事ではですね。
を考えた上で、
というのを語っていきたいと思います。
あ、ちなみに前提として、『ステータスを下げるもの(デバフ)』と『毒などの特殊な効果がつく状態異常』は分けて語ります。全然ちがう話だし。
今回の話は後者、『毒などの状態異常』が対象です。
◇なぜ『ボスには状態異常が効かない』形がよく採用されるのか?
ゲーム作る人だって何も考えてないわけじゃなありません。
こういう仕様が多くなるのは、この仕様にするメリットもあるからです。
考えていくと、複数の話が絡み合ってこうなっているので、順を追って説明していきます。
1. 状態異常は厄介な存在じゃないと意味がない
まず最初の前提として、状態異常の効果自体が弱かったら、存在価値がないわけですよ。別に無視をしても良いんだったら毒消し草なんて要らないし。そうなると宝箱から毒消し草が手に入っても何も嬉しくない。
状態異常には『厄介』と思えるくらいの強さが必要なのです。
2. ボスは強くないと意味がない
その一方でボスもまた強い存在として作りたいところ。
ボスが弱かったらキャラが成長した時の嬉しさが弱くなりますし、ゲーム的にもメリハリがなくなります。
ゲームの乗り越えるべき『壁』として、役割を果たしてもらう必要があるのです。
3. 強いボスでも、厄介な状態異常が効いてしまうと……
さて、1と2を達成しようとすると面倒な問題が出てきます。
という問題。
極端な話でいえば、ボス敵をずっと麻痺状態にして行動を封じたとしたら、それはもう一方的に「ずっと俺のターン!」と叫びながら攻撃できるわけです。こうなってしまうと、どんなにボスのステータスが高くても意味がありません。ボスの強さが保てなくなるわけです。
もう少し根本的な原因に突っ込むと、『状況が非対称』であることがこの問題を作りがちですね。
例えばRPGなんかだと味方PTと敵でかなり状況が変わります。
味方はステータスが低いけど4人で戦える。ボスはステータスが高いけど1人で戦う……みたいな。状況として、人数もステータスも違うわけです。
この『PT4人 vs ボス1体』みたいなありがちな状況、比較してみると1人分の行動の重みが大きく変わります。
麻痺によって4人のうち1人が動けなくなったら1ターンの行動数は25%少なくなるけど、ボス1体だけなのに動けなくなったら1ターンの行動数が100%減るわけです。同じ「1人動けない」でも、重みが違う。
とはいえプレイヤーに『厄介なもの』として認識してもらうためには味方側に有効なレベルで作らないといけないので、それがそのままボスに刺さると超強いわけです。
ちなみに『ポケモン』はこの辺が上手くて、味方と敵でかなり近い状況を用意しています(基本は1対1 or 2対2で、ステータスも大きくは変わらない)重みは同じなのでボス級の存在に状態異常が効いてもわりと問題ないのです。
4. 状態異常を与えることが前提に?
このあたりの話を乗り越えて『ボスにも状態異常が効く』という仕様にした時に、また別の問題が出てきます。バランス調整。
基本的にバランス調整は「プレイヤーによって状況が変わらない」ほど楽です。なので
みたいな話があればあるほど調整するパターンが増えて大変です。
単純なダメージ量が大きい、小さい、くらいならまだ調整のブレは少ないんですが、状態異常なんかは単純なダメージ量とは別軸の話になってくる(戦闘が全然違うものになることもある)ので、状態異常が効けば効くほどバランスが崩れて
みたいな状況が起きがちです。
これについては似たことがステータスのバフデバフにも言えますね。バフデバフが強いために、それを使うことが前提の難易度になってるパターンとか。
そうなるくらいだったら状態異常を効かなくする方が断然、安定して面白いゲームバランスが作れます。殴り合いの調整だけすれば良いし。
特に個性が広がるゲームの後半なんかは、無効にして限定しちゃった方が楽ですよね。はい、冒頭のツイートの状況が完成です。
5. 状態異常になる確率を下げると……
それでも頑張って、状態異常を効くようにしつつでも状態異常が暴れすぎないようにしつつ……と対策しようとすると、よく挙げられる手法が
です。しかし、個人的にはこれはあまりおススメしません。
なぜか?
次の問題が出てくるからです。
◇殴った方が早い問題
状態異常って、わりと
みたいな状況が起きがちです。
特にボスに状態異常が効かなかったり効きにくかったりすると、そもそもどんなに強い効果を持った状態異常でも意味が無いので。
さて、問題になるのは
って時です。状態異常を活かす上でなぜこれが大きな問題になるのか、これから説明していきます。
1. かけた行動数分の利益を『回収』できているか?
ステータスを上昇させるバフの話題でちょくちょく出るが、
という話があってですね。要は、
という話なんですが、これは状態異常にも同じことが言えます。
例えば
という状況だったら、毒の総ダメージ量が普通に殴った分よりも低いので、毒を使わない方が良かったって話になります。
いわば使った行動数分の利益を『回収』する必要があるんですが、ここに『低確率で状態異常がかかる』という仕様の落とし穴があってですね。
という話になってくるわけです。
状態異常は色んな種類があって、毒のように単純にダメージで比較できるものばかりではないですけど、考え方は変わりません。
敵に状態異常になる確率が低ければ低いほどその強さは安定せず、殴った方が早い!という考え方が優勢になってきます。
なお、この問題への対策としては
というのがありますが、それでもこの問題に気をつけなきゃいけないのは変わらないです。追加効果が付いている分、純粋な攻撃特化のスキルよりもダメージを落とすのが大半なので……
となるわけです。『回収』はしやすくなるので、問題を「解決する」というよりは「軽減する」手法だと言えるかもしれません。
2. そもそもどの状態異常が有効なの?
プレイヤーが「状態異常は通じない」と思い込んでいるだけで、実は特定の状態異常は有効…みたいなパターンもあります。実はそっちの方が多い可能性も。
みたいな話が代表的でしょうか。
……が、じゃあそれでどうするんだ?という話があってですね。こういうの、相手に『効く』という前提がある状態で撃つなら良いんですよ。
しかし1つ1つの状態異常技を、高確率でかかるのか、低確率でかかるのか、完全無効なのか分からない状態で撃つのか?と言われると
となるのです。特に初見プレイの場合。色々と試すのだってタダじゃありません。行動数を消費すればするほど、前述した『回収』が難しくなります。
リトライが前提になっているゲームで「初戦は様子見で負けること前提だ!色々試すぞ!」というのをプレイヤーが自然とやるような形でない限りは、「本当に有効なのかよく分からない状態異常」を使うのは難しくなっていくわけです。
個人的に、こういった仕様は『攻略情報をみる』という前提があって初めて成り立つものだと思います。特に昔のゲームなんかは『攻略本を売る』というのもあったので、それを前提に作っていたりもしたんじゃないですかね。
でも今は攻略本を売るような時代でもないし、色んな娯楽が溢れていて1つのゲームを何度も遊ぶことは昔に比べて少なくなりました。
その状況で状態異常が
という形になっているのであれば、それは
になっている……とも言えます。
そういうやりこみをする人向けのゲームとして明確に狙っているなら別に良いんですけどね。狙ってないならそこまでメリットはないのでは。
もし特定の状態異常が効くのなら、
があって初めて意味があるんじゃないのかな、とは思います。
なお、後者はFFのライブラ的な敵の情報が分かる魔法を使わせて……みたいな話もありますが、本当に状態異常を活かしたいなら行動数を消費せずに相手の情報を見れる仕組みにした方が良いです。殴った方が早くね問題を解決しやすくなるので。
モンハンも昔は攻略Wikiが必須でしたけど、最新作ではゲーム内でモンスターの耐性が分かるようになりましたね。
3. 本来、状態異常が活きるのは……
さて、『回収』のことを考えるとですね。状態異常ごとにある程度の条件があります。
例えばダメージ系の状態異常なら時間(ターン数)が必要だし、行動不能系の状態異常なら敵の攻撃が強力じゃないと止める価値がない。
なので本来、状態異常が活きるのは
になります。つまりボス。
雑魚戦なんかは長々と行うとゲームのテンポが悪くなるため短期決戦になりがちで、「殴った方が早い」は顕著になります。
なので強敵であるボスにこそ状態異常が活きる……はずなんですが、「ボスには状態異常が効かない(有効に使いにくい)」が基本になっているのはなんとも皮肉な話です。
さて、ここまで状況の整理として「ボス戦で状態異常が使いにくい」というのがなぜ起こるのかを説明をしてきました。次からは、実際に『ボス戦で使える状態異常』について考えていきたいと思います。
◆ボス戦で『状態異常』が成立するためには?
闇雲に『ボス戦で使える状態異常』を考えてもまとまらないので、まず
を整理したいと思います。
1. 成立するための条件
ここはざっくり。冒頭で説明したように、状態異常に要求されるのは
ですかね。
ちなみに、明確に「この状態異常を使えば楽勝になるボス」を狙って作るのであればそれは別に良いと思っています。ゲームデザインの良し悪しは「何を狙うか」で変わってきますし。
(なお、その狙い自体が良いか悪いかはまた別の話ですが)
意図せずそういうボスばかりになったら崩壊してますけどね。それは避けましょう。
2. 状態異常の『強さ』は何で構成されるのか?
状態異常には色んな種類、色んな効果がありますが、共通して扱える要素に整理するとこの4つでしょうか。
例えば「ボスに状態異常が入るのは低確率」というのは付与確率に対するアプローチになります。ここだけで調整しようとすると、問題が起きるのは前述の通りですけども。
これらの整理した情報をもとに、これから色々な解決方法を探っていきます。
◆代表的な状態異常別のアプローチ例
状態異常にも色んな種類があって、その種類ごとに戦闘を崩壊させる方法も変わってきます。代表的な状態異常を分類しつつ、どういう形になると問題が起きるのか?どう対処すれば解決できるのか?を考えてきましょう。
1. ダメージ系(毒、火傷、出血など)
だいたい悪さをするのは割合ダメージですね。例えば、
とか。RPGツクールの毒も基本的にコレだった気はします。(最新のやつは分からないですけど)
もちろん利点はあり、最大HPからの割合なので最大HPが100でも9999でもちゃんと効果が出ます。ゲーム内のインフレに強く、成長性を重視するRPGなんかだと扱いやすいんじゃないでしょうか。
それとちょっと変わったボスとして、「めちゃくちゃHPが高くて普通に倒すのは超大変だけど、実は毒を使えばすんなり倒せる」みたいなこともやりやすいです。
対して、これの何がどう悪さをするのかで言えば、画一的に割合ダメージを与えるとことで
状態になります。極端な話、ラスボスにそういう勝ち方をしてほしいのか?というと大抵の作品はNOになるんじゃないですかね。なので「ボスには毒が効かない」みたいな仕様になってくる。
その一方、
という、効果量に対する単純なアプローチをすると
の問題が出てくるのがまた厄介です。
もちろん、このままでも非常に硬い敵を作って「殴っても全然ダメージが通らないこの敵には毒が有効だぞ!」みたいなことはできますが、上記の問題があるので汎用性がなく限定的な使い方になりがちです。
じゃあどうするのか?というと、
のが手っ取り早いです。割合ダメージだとどんな敵でも平等に強すぎたり弱すぎたりしがちで使いにくいので、別のやり方でダメージ量を作っちゃう。
じゃあ他にどんなものがあるのか…というところなんですが、簡単に例としてあげると
とかですかね。ちなみにモンハンRiseは②で、1回あたりのダメージ量が固定化されている代わりに、毒のかかりやすさと毒のかかっている時間でダメージ量を伸ばしています。
ただこれ、↑ ですごいざっくり挙げたんですが、考えられる方法は無数にあってですね。要は状態異常といっても扱うのは「ダメージ」なので、
によって色々と設定できます。
ちなみに世界樹の迷宮XなんかはWikiをみると
って式で作っているみたいですね。スキルの威力依存でレベルもちょっと関わる。
なんかややこしそうな計算式が出てきましたが、「ダメージ計算式なんてよくわからんのじゃあ!」って方はこういう記事も書いているので、よろしければそちらもご覧ください。
また、毒といえば「毎ターン決まったダメージを与える物」としてみられがちですが、『Slay the Spire』なんかは面白い仕様をしています。
例えば↑の画像のスキルなんかは、同じ相手に3回当たれば、3×3で合計9ダメージの毒を与えます。さらに他のスキルで毒を4与えれば、蓄積して13ダメージに。更には蓄積した毒を3倍にするスキルもあったりするので、毒のダメージが自分のプレイ次第で大きく変動していく形をとっています。
この形をとることで、「かけたら終わり」なのではなく、「この状態異常を更に生かすにはどうすれば良いのか?」という話に発展してくるのが良い所です。
一口に『毒』といっても、発想次第でいろんな形の『毒』が作れます。
毒に限らず、状態異常を一回かけて終わりなのではなく重ねて状態異常を与えることで強化していく……というのも作り方の一つですね。
ちなみに『毒』を最大HPの割合ダメージで扱うのは絶対にダメなのか?と言われればそうでもなく、キャラごとに『毒の有効度』を設定すればいけたりはします。例えば
とか。これならラスボスに毒が効いても「これくらいまで減ってもいいよ」というのを後付けで設定できるので、戦闘が崩壊するほど暴れたりしないようにできますし、活躍させたい時に活躍させることもできます。
どういった手法をとるにせよ、『毒の効果量を調整できる』仕様になっているとバランス調整がしやすくなるかと思います。
2. 行動不能系(麻痺、睡眠)& 混乱系(混乱、魅了)
混乱系も敵にかかった場合は、実質的に行動不能とそんなに変わらない(敵と味方の最大HPが違いすぎて敵が敵を殴ってもそんなに意味がない)ことも多いので、ここはまとめちゃいます。
まぁこれはシンプルですよね。冒頭の例としても使いました。
敵が行動できないなら
なことになるので、ボスのステータスに関係なく一方的にボコせます。
睡眠、混乱、魅了あたりはそのあたりのハメ対策として
という形になってますね。眠っている所に物理攻撃をしたら起きちゃうとか。これは
の効果時間に対するアプローチになりますが、付与確率が高いとほぼ毎ターン眠らせればハメれて、付与確率が低いと運ゲーすぎて殴った方が早い問題が出てきます。
さて、対策です。効果時間や付与確率も大事なんですが、ある意味ここで最も重要になるのは効果量なんじゃないかと思います。例えば麻痺にかかった時に、
では話が変わってきます。
多く採用されているのは①の仕様の方で、かなり強力なんですがそれ故にボス相手には低確率になったり無効にされがちです。
対して②の場合、効果量としては弱くなりますが、最大の利点として
というのがあります。状態異常にするための行動数が少なければ、それだけ『回収』も楽ですし、強すぎないので気軽に状態異常をかけていけます。
なお25%は1例なので50%とかでも問題ないです。効果量(確率)自体はその状態異常をどういう存在にしたいかで変わってきます。
ちなみに25%で動けないのはポケモンの「まひ」の仕様。
また、
というのであれば、例えば
みたいな形で段階をつけるのもアリです。
段階をつけて幅が広がることで、より柔軟な状況を用意しやすくなり、一方的な展開にはなりにくくなります。
また、『睡眠』みたいな「100%じゃないとおかしくね?」みたいなものに関しては、別のアプローチとしては『睡眠が入るごとに耐性が上がる』みたいなやり方もあります。これに関しては『確率か?蓄積か?その両方か?』の項で説明します。
3. 行動制限系(沈黙、暴走)
すんごい強いスキルをもっているけど、暴走させて通常攻撃しかやってこないようにしたり。魔法使いが魔法を使えなかったらそりゃ弱いわけで、相手の強みを消す状態異常ともいえますね。
逆に魔法を封じたら絡めて系の厄介な攻撃はしなくなったけど、純粋にダメージの高い攻撃をしてきた……みたいな風に作ることもできます。
相手の強みを消すのが分かりやすく強い所ではありますが、消しすぎると戦闘が壊れてきます。全てのボスに暴走が効いて、通常攻撃しかしてこなくなったらやっぱり単調ですしね。
1つの対策としては上記で書いたような
みたいな形で作れると、戦闘が崩壊しにくいですね。
このあたりの作り方で上手いのは『世界樹の迷宮』で、封じる項目を
に細分化しています。(部位に応じたデバフもつくけど今回の話とは関係ないので割愛)
こうすることで、例えば
という問題に対して、一部の封印にとどめることで
という形になるため、戦闘が崩壊しません。
封じる範囲が広すぎると効果量が強すぎるので、細分化して限定することで効果量を弱めてバランスをとっている例ですね。
あんまり細分化すると分かりにくいゲームになるのでそこは注意が必要ですけども。
4. 命中率減少系(盲目、暗闇)
ステータス減少のデバフに近い状態異常ですが、状態異常側のカテゴリに置かれることも多いやつですね。魔法攻撃は命中率の影響を受けずに必中、みたいな場合は実質的な物理攻撃に対する行動制限になったりもします。
単純な話、
ので、攻撃力の高いボスなんかに有効です。
ただゲーム全体として『攻撃力が低め or 回復力が高くて立て直しが楽』な仕様になっていると、ボスからしたら
というなかなかのクソゲーが発生します。実質的な完封ができちゃう。
ごめんよボス。
ただし命中率が下がれば下がるほどその状態で戦闘を成立させるには『一撃必殺』の威力が要求される一方で、攻撃力を底上げしすぎると『盲目』を使わないと相手が強すぎて勝てない……みたいなことにもなります。
麻痺みたいな行動不能系とは違って行動自体はできますし、効果量(命中率の減少率)を調整すればわりと問題にならなかったりはしますが、個人的には
が重要だったりすると戦略性が増すと思います。
(詳しい話は『確率か?蓄積か?その両方か?』の項で後述)
5. 即死系(即死、石化)
石化は行動不能系だとは思うんですが、実質即死みたいな扱いも多いのでこっちのカテゴリに。個人的には、100%の確率で動けない麻痺みたいな扱いで良い気はするんですけどね。
さて、即死に関してですが……ボスに状態異常が効くゲームでも、ボスに即死が効くゲームはそうそうないんじゃないですかね。
まぁそれも当たり前の話というか、ほら、効いたら死んじゃうし…戦闘が終わっちゃうし。特にボスに効いちゃうと拍子抜けする面も大きいので、基本的には無効化されます。
単純に即死が効いて許されるのは「かみ」くらいですかね。
まぁ別に効かなくても良いんですが、そうなると即死特化キャラみたいのは作りにくくなります。ボス戦で役立たずになってしまう。
対策の1つとしては、
とか。追加でダメージを与えるのがたまに見かけるパターンですかね。
そうするとダメージ特化キャラと差別化しにくくなって微妙……になるのであれば、何かしらのデバフを与えるのも良いのかもしれません。
また、「状況を限定」さえすれば、ボスに即死が効くようにするのもアリではあります。これについては即死だけの話に留まらないので後述します。
(これも『特定の状況で耐性を下げる』の項)
◆『状態異常』自体に対するアプローチ
前章では状態異常ごとのアプローチを書いてきましたが、今度は『状態異常』という仕様全体に対するアプローチを書いていきます。
前章で保留!後述!後述しまぁす!!と書きまくってきた内容がこちらです。
1. 確率か?蓄積か?その両方か?
そもそも確率で付与するというのがギャンブル性が強く、効果が安定しないので戦略的に扱いにくいです。特に低確率系は殴った方が早い問題が顕在化しますし。ので、場合によっては「そもそも確率で付与しない」という仕様にするのも1つの手段です。
例えば毒の説明時に例としてあげた『Slay the Spire』 なんかは確率で毒は与えず、『毒』を与えると言ったら確定で毒を与えます。その代わりに毒の効果量は蓄積した毒の効果量に依存しているので、いきなり暴れたりはせずゲームとして成立していますね。
あと、ここに関しては上手いのはモンハンですね。例えば麻痺なら
っていう仕様です。『蓄積』を採用することで
という利点があり、さらにだんだんと耐性が付いていくことで
という形になっています。効果はしっかり出しつつも、それでいて戦闘を崩壊させない……というバランスがとりやすいのが非常に良い所ですね。
また耐性が上昇していくので、その状態異常の『使いどころ』を考える要素が出てきます。例えば脳死で毎ターン眠らせようとするのではなく、敵の攻撃が激しくてピンチになりそうなタイミング(立て直しが必要になるタイミング)で眠らせるとか。
『使いどころ』が意識できるようになると戦略性が増していきます。
(モンハンがコレを活用しているかはともかく)
2. 味方や敵、雑魚やボスで効果を変える
『PT4人 vs ボス1体』だと、味方1人が麻痺するのとボスが麻痺するので重みが違う……的な事を冒頭で書いたんですけどね。
重みが違うのであれば、効果量も変えた方がええんでは?という発想がコチラ。ボスにかかると強すぎるんなら弱くすればいいじゃない。
例えば同じ「毒」の効果でも
みたいな形にするとかですね。
雑魚戦は短期決戦が求められるので「利益を回収する」のが難しいのに対して、効果量を大きくすることでカバーできますし。
ただしボス戦でその効果量を適用すると崩壊するので、じゃあボス戦の時は効果量を下げればちゃんと使えるんじゃないかって考え方です。
問題点としては工数と分かりにくさがあってですね。
雑魚の時とボスの時で効果が違うと、単純にプレイヤーが効果を予測しにくいって話はあります。
あと、全ての敵に対して「想定していた効果量になっているか」をデバッグ時に確認する必要があって、普通に作るよりも工数がかかります。地味に面倒だし、処理が複雑になればそれだけバグも増える。
(状態異常がかかるかどうかだけじゃなく、味方用、雑魚用、ボス用の効果量がちゃんと入っているかも確認しないといけない)
あと言わずもがな、ボス戦用に効果を低くした結果、効果量が小さすぎて殴った方が早いになると意味がないのでそこも注意が必要ですね。
3. 特定の状況で耐性を下げる
ってやつ。付与確率を戦闘中に変動させるのです。
蓄積の話のモンハンの例で説明した「使いどころ」を用意する案の1つですね。
例えば普段は麻痺なんか通じないけど、『怒り』状態になって攻撃が激しくなった時だけ麻痺が通じるようになるとか。
オクトパストラベラーみたいに「特定の条件を満たすと敵がBreak状態になる」みたいなシステムを用意して、その時だけ状態異常になる確率が跳ね上がるとか。
常に状態異常になるのはマズいけど、状態異常にするためのお膳立てをしっかりやって戦略的に運用できるんだったら状態異常にしても良くない?
みたいな形ですね。
いい感じの状況さえ作れれば、即死だって効かしても良いと思います。
4. 状態異常にかかっている時のギミックを用意する
状態異常になることで弱体化するとか、特定の状態異常が入ることで何かイベントが起こって追加ダメージが入るとか。
(盲目 ⇒ 目が見えなくて壁に突っ込む ⇒ ダメージ、みたいな)
モンハンのクシャルダオラなんかはそうですかね。
普通の状態だと強力で面倒で面倒な『龍風圧』を使ってくるけど、毒で状態異常にしている間は『龍風圧』が使えなくなるので、戦闘が有利になる。
その状態異常自体の強さではなく、追加ギミックの効果で有利になるので、状態異常自体を強くしなくても成立するのが利点です。(上記の例なら、毒自体のダメージが大したことなくても意味がある)
ただ、ボス毎に専用の演出やら効果をつけていくと、良い意味でも悪い意味でも『リッチ』な仕様になっていきます。面白くはなるけど工数もかかる。
そういう攻略の仕方をコンセプトにしてこだわったゲームなら良いんですけど、そうじゃないなら本当にそこまで作りこむ必要はあるのか?という話は出てくるので注意です。
(編成の自由度がウリだけどボス戦は状態異常キャラがいた方が遥かに楽しめるなら、本当にそれはやりたいゲームの形になっているのか?とか)
ゲーム全体の方針として作るよりは、メリハリをつけるためにちょっと変わり種のボスとして1体分用意する……とかそっちの方が向いているかもしれませんね。
あとは専用に作りこまなくても、『状態異常にかかっていると攻撃力が上がる』みたいなスキルを用意したりするくらいである程度は満たせるかも。
☆余談:状態異常を前提にするには
本題の話はこれで終わりですが、ちょっと余談。
状態異常を駆使して戦うことのロマンって
のが熱い所だったりすると思うんですが、RPGなんかだとだいたい
って形で解決している(PT4人 vs ボス1体の構図はソレ)ので、解決方法が地味に競合しているんですよね。編成に自由度があると特に後者の方が強くなるので、状態異常のロマンは相対的に下がってきたり。(状態異常キャラがいないと勝てない!はそれはそれで問題になるので)
なので、ガチで状態異常にこだわった作品を作りたい場合は
みたいな形で作るといいかもしれませんね。主人公なら自然と全戦闘に強制的に出ても不自然じゃないので、状態異常をかけること前提に戦闘を作っても問題ありません。なので
みたいのは作りやすくなるんじゃないでしょうか。
(そもそもPT編成に自由度を与えなければ主人公じゃなくてもいいけど)
☆まとめ
以上です。今回の話をまとめると
ですかね。
そもそも「状態異常をそのゲームの中でどういう存在にしたいのか」にもよりますが、ここには書いていないアプローチもいっぱいあると思います。
『状態異常攻撃が選択肢に入る』ように、ぜひ、考えてみてください。
1人のプレイヤーとしては、なんかこう、いい感じに作ってもらえると嬉しいですね。いい感じに。(あばうと)
☆宣伝
私もね、今RPG作っているんですよ。
『PLAYISM Game Show』で先日紹介されました、このゲーム。
状態異常にもこだわって作っていて、『毒』も『Slay the Spire』を参考にしつつオリジナルの仕様で作ってあります。
体験版を遊んだ方にも毒武器がけっこう人気だったり。
まだ遊べるのは体験版の範囲までですが、ゲームが進むと「このゲームならでは」の状態異常も色々と出していく予定です。
気になる方はチェックしてみてください。
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