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次世代NEMブロックチェーン、Symbolに迫る(8) ~コンセンサスアルゴリズム編(1)~

このシリーズでは、NEMを簡単に振り返ると共に、NEMの次期バージョンのSymbolの特徴、Symbolのローンチまでの流れ、そしてSymbolがどのように活用されていくのかをなるべく分かりやすく紹介していきます。

今回はNEM(NIS1)のコンセンサスアルゴリズムであるPoIについて解説し、SymbolのコンセンサスPoS+に繋げていきます。

コンセンサスアルゴリズムとは

NEMやSymbolをはじめとしたブロックチェーンは分散台帳技術ともよばれ、複数のノード(コンピュータ)が同じデータを保持して協調して動いています。

その際、どのノードが生成したブロックを正とみなして、次のブロックに繋げるかを決める合意形成する方法をコンセンサスアルゴリズムと呼びます。

コンセンサスアルゴリズムにはいくつか種類があり、ビットコインで用いられるProof of Work(PoW)、イーサリアム2.0で用いられるProof of Stake(PoS)、NEMで用いられているProof of Importance(PoI)、Symbolで用いられるProof of Stake Plus(PoS+)などがあります。

Proof of Work (PoW)

Proof of Work(PoW)は主にビットコインで用いられるコンセンサスアルゴリズムで一番早く計算問題を解いたノードにブロック生成の権利を与える手法です。

いち早く問題を解くには性能の高いコンピュータを用いる必要があり、計算量が多いノード(コンピュータ)ほどブロック生成の権利を得やすくなっています。

Proof of Stake(PoS)

Proof of Stakeは主にイーサリアム2.0で用いられている予定のコンセンサスアルゴリズムで、通貨の保有量が多いノードほどブロック生成の権利を得やすくなっています。

Proof of Importance(PoI)

Proof of Importance(PoI)はNEMで用いられているコンセンサスアルゴリズムです。

PoIはPoSを改良する形で作られており、PoSの通貨保有量が多ければ多いほどブロック生成しやすい≒金持ちがより金持ちになる問題を改良、緩和されるような工夫がされています。

PoIではアカウントには重要度が設定され、これによりブロック生成の権利の得やすさが定まりますが、その重要度の計算は基軸通貨(XEM)の保有量に加えて、基軸通貨(XEM)の取引量が考慮されるようになっています。

これにより、保有する通貨が少なくても多少なりともブロック生成の権利を得やすくなっています。

NEMのハーベスティング

コンセンサスアルゴリズムによって、ブロック生成の権利を得ることで報酬を得ることができます。

これが、ブロックチェーンのエコシステムを支えるインセンティブとなっており、ビットコインなどのPoWではマイニング、イーサリアム2.0などのPoSではステーキング、NEMのPoIやシンボルのPoS+ではハーベスティングと呼ばれています。

NEMのハーベスティングでは、そのブロックに含まれているトランザクション手数料を得ることができます。ただし、NEMの基軸通貨XEMは既に全量が発行されているため、ビットコインのようにブロック報酬を得ることはできません。

そのため、いくら重要度が高くてもそのブロックに1つもトランザクションがなかった場合、そのブロックの報酬は0となります。

重要度はあくまでブロックの生成の権利の得やすさを決めるものであり、1回あたりのハーベストできる報酬の量を決めるものではありません。

委任ハーベスティング

NEMには委任ハーベスティングという仕組みがあります。通常、ハーベスティングに参加するには自分でノードを立てる必要がありますが、委任ハーベスティングの仕組みを使うことでノードを立てなくても誰かのノードに重要度を預けることでハーベスティングに参加することが可能です。

ノードを立ててハーベストする場合も委任ハーベストする場合もいずれも、同じように報酬を得ることが可能となっており、これにより多くの人がNEMのエコシステムに参加できるようになっています。

NEMのPoI・ハーベスティングの課題

NEMのPoI・ハーベスティングの仕組みは、通貨の保有量に加え、通貨の取引量を考慮することで、アクティブなユーザを評価し、委任ハーベスティングの仕組みによって多くの人にNEMのエコシステムに参加してもらうように工夫されていますが、いくつかの課題があります。その課題について触れておきます。

比較的大きめの取引が必要

ブロックの生成権利の得やすさを決める重要度は通貨の保有量に加えて、通貨の取引量が考慮されるようになっていますが、この通貨の取引量は1回あたり1000xem以上ないと考慮されません。従って、数xemレベルの少額の取引を何回行っても重要度の影響を与えることはありません。

またNEMではモザイク(トークン)を任意に発行して、取引することが可能ですが、カスタムモザイクの取引はいくら行っても考慮されることはありません。

なお、このような制約が入っている要因としては重要度の計算が複雑で条件を緩和すると計算対象が増え、NEMブロックチェーンの性能に影響を及ぼしてしまうという課題があることが上げられます。

ノードを立てるインセンティブがない

NEMでは委任ハーベスティングの仕組みが用意されていることで、10000xem+αあれば誰でもハーベスティングに参加することができますが、一方でノードを立てても立てなくてもハーベストで得られるxemの量は同じため、ノードを立てるメリットがありません。

NEMはスーパーノードリワードプログラム(SNプログラム)によって報酬を得ているノードや任意のボランティアによって運用されているノードによって支えられているのが現状です。

SNプログラムについては別途詳細を書く予定ですが、これは特定のファンドから支出されている一時的な仕組みであり、持続性がないことに留意する必要があります。

まとめ

ここまで、コンセンサスアルゴリズムについての簡単な概要とNEM(NIS1)のコンセンサスアルゴリズムであるPoIの概要と課題をまとめました。

PoIはPoWやPoSでの課題に挑み、委任ハーベスティングによって多くの人をエコシステムに引き込んでいますが、一方で持続性の面では課題もあることを指摘しました。

次回は、これを踏まえてSymbolのコンセンサスアルゴリズムPoS+はこれをどのように改良したのかを説明していきたいと思います。

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