次世代NEMブロックチェーン、Symbolに迫る(2) ~性能編~
このシリーズでは、NEMを簡単に振り返ると共に、NEMの次期バージョンのSymbolの特徴、Symbolのローンチまでの流れ、そしてSymbolがどのように活用されていくのかをなるべく分かりやすく紹介していきます。
前回の記事では2015年から稼働中のNEMについて振り返りましたが、今回からはいよいよNEMの次期バージョンSymbolについて話していきます。
Symbolで何が変わる?
NEMの次期バージョンSymbolは企業などでの利用を促進すべく、より安全に使いやすくなるようにNEMのコンセプトを引き継ぎながら、一から新たに作られたブロックチェーンプラットフォームです。
Symbolでは大きく以下の点が改良されています。
・性能の向上
・機能の強化
・持続可能なエコノミクスの導入
この記事では、性能の向上に焦点を当てて話していきます。
性能の向上
Symbolではパブリックチェーン・プライベートチェーン共に従来より多くのトランザクションを処理できるように性能の強化が図られています。下記は、NEMとSymbolの秒間あたりの処理性能の比較です。
NEM及びSymbolの処理能力については、誤解されがちなポイントがいくつかあるので補足します。
1. NEMの処理能力
NEMのパブリックチェーンは1ブロックあたり120トランザクション(以下、tx)までに制限されています。またブロック生成時間は60秒となっています。これを秒間あたりの処理能力に換算すると2tpsとなります。これはビットコインのものより実は低いです。
NEMは処理が早いと言われることがありますが、これはブロックの生成間隔が比較的短いのとそれほど多くのトランザクションが発生していないことから発生する誤解と考えられます。
2. Symbolのパブリックチェーンは4000tps出る
SymbolがSymbolという名前になる前、Catapultという開発コードで呼ばれていた頃、NEMがCatapultになると4000tps出ると誤った情報が度々出回っていました。
これは プライベートチェーンでの実証実験の結果で、これがそのままパブリックチェーンでも反映されるわけではありません。
リンク先の記事によると、この実験は月額5万円のサーバーを使って行われており、これは多くのノードを必要とするパブリックチェーンを運用する上ではコスト的な障壁になると共に、現在のNEMの利用状況と比べてもあまりにも過剰な性能です。
そのため、パブリックチェーンの性能はこれより低い性能となります。
3. Symbolのパブリックチェーンの性能の実際
上記の表では、Symbolのテストネットのノード構築ツールの設定値から100tpsとしていますが、コア開発者の一人、Jaguarさん曰くこれは仮の値で検証が必要であることを述べています。
いずれにせよ、パブリック・プライベートともに多くのトランザクションを捌けるように性能が向上しています。
ブロック生成間隔
NEMのパブリックチェーンでは、ブロック生成間隔が約60秒となっていますが、現在稼働中のSymbolのパブリックテストネットでは約15秒と短くなっています。
NEMではトランザクションを送信してからブロックに取り込まれるまで、長い時間待たされることがありましたが、Symbolではそれが多少緩和されます。
ブロックチェーンに高い処理能力は必要か?
ここまで、Symbolの性能向上にフォーカスしてきました。多少誤解されている点や未知数な点がありますが、いずれにせよNEMより性能が向上することは間違いなさそうです。
しかしながら、秒間4000tpsという処理能力はどこまで必要でしょうか?
これはユースケースや現在の利用状況にもよりますが、必ずしも必要ないと考えます。
高い処理能力があればあるほどよいと考えがちですが、高い処理能力を維持するにはソフトウェアの最適化だけでなく、高いハードウェア性能も求められます。性能の高いハードウェアはコストも高くつきます。
不特定多数の人がリアルタイムで利用する金融システムで用いる場合、高い処理能力が求められていきますが、不動産やアートの所有権の管理に用いる場合、これ単体の流動性は高くないので高い処理能力はそこまで求められないでしょう。
パブリックチェーンの場合、不特定多数の人によって、複合的な用途で使われていきますが、現在のNEMの利用状況では1ブロックで120tx埋まることはまれであり、仮定ながらも100tpsは現状の利用状況を踏まえると十分すぎる性能と考えます。
パブリックチェーンの場合、不特定多数の人によって分散してネットワークを維持していく特性上、処理能力だけでなく、多くの人にとって過大な負担にならず維持していけるコスト感であることも重要になってきます。
まとめ
ここまでSymbolの性能向上について解説してきました。Symbolはベース性能は向上しますが、現状の利用状況を踏まえると多少抑えても多くの用途で十分すぎる性能だと考えられます。
処理能力はブロックチェーンを比べる上での比較要素の1つになりますが、Symbolの真骨頂はそこではなく、ブロックチェーンを活用する上で安全で便利な機能がネイティブに組み込まれているところにあります。
次回はSymbolで強化される機能についてみていきます。
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