
次世代NEMブロックチェーン、Symbolに迫る(4) ~機能編 その2~
このシリーズでは、NEMを簡単に振り返ると共に、NEMの次期バージョンのSymbolの特徴、Symbolのローンチまでの流れ、そしてSymbolがどのように活用されていくのかをなるべく分かりやすく紹介していきます。
前回の記事ではNEMやSymbolがなぜネイティブで機能を提供しているのか、それによってどのようなメリットがあるのかを紹介しました。
今回はSymbolで追加された機能の一つ・アグリゲートトランザクションについて紹介してきます。
アグリゲートトランザクションとは?
アグリゲートトランザクションのアグリゲートは英語で集めるという意味があります。その名前の通り、このトランザクションは複数のトランザクションを1つ集めて処理するトランザクションとなります。
例えば、上記のようにお店に代金を支払い、それと引き替えにポイントをもらう場合、
1. 客がお店に代金を支払うトランザクション
2. お店が客にポイントを渡すトランザクション
アグリゲートトランザクションがない、NEMではこれらを1つずつ処理する必要がありましたが、アグリゲートトランザクションを使うと、お客と店舗の署名が揃った瞬間、この2つのトランザクションが同時に実行されるようになります。
この例は、最初の例に加えて、さらにBobがAliceによく分からないトークンを渡して、Aliceがそのトークンを引き受けた上で、お店に代金を支払い、店舗がAliceにポイントを渡すというすこしややこしい取引をしています。
このややこしい取引を1つずつ処理している場合、取引の最中に誰かがばっくれて資産を持ち逃げしてしまうリスクがあります。
アグリゲートトランザクションの場合、全員の署名が揃わない限り、この取引は実行されず、あらかじめ定めた締切を過ぎるとこの取引は未成立で終了します。
アグリゲートトランザクションは複数の取引を束ね、それらが全て実行されるか、全て実行されないかのいずれかになるため、複数の取引をまとめてはじめて意味を成す取引を安全に行うことができるようになります。
手数料や効率の面でも有利なアグリゲートトランザクション
パブリックチェーンにおいて、トランザクションを実行するには手数料を払う必要がありますが、アグリゲートトランザクションは手数料の面でも有利に働きます。
上記の様に、投票権のトークンを配布する場合、今まではAさん宛、Bさん宛、Cさん宛と1つずつ署名して、送信しないといけませんでしたが、アグリゲートトランザクションではこれらを1回の署名で完了できるようになったので、効率のよい配布が可能となります。
また、1つずつ送信するよりアグリゲートトランザクションを利用した方がトランザクションの総バイトするが少なく、それによって手数料も低く抑えることが可能となります。
以下のQiitaの記事はその検証記事となります。
手数料の肩代わりをすることも可能となる
パブリックチェーンにおける手数料は、ネットワークを維持するためのインセンティブとして必要である反面、パブリックチェーンの利用を妨げる要因の一つとなっています。
例えば、ゲーム内でプレーヤー同士でのゲーム内の通貨とアイテムを交換しようとした場合、その双方がアセットの他に手数料の基軸通貨を保有する必要があります。
手数料のための基軸通貨はゲームの本質から外れるためこれをそれぞれが確保しないといけないのはゲームのユーザからすると不便に感じるでしょう。
アグリゲートトランザクションを利用すると、この手数料をゲームプラットフォームを提供しているゲーム会社が一括して支払うことができるようになります。
これにより、ゲームの利用者は手数料のための基軸通貨を用意することなく、ゲーム内の通貨とアイテムの交換ができるようになります。
アグリゲートトランザクションを利用することで、ブロックチェーンの使い勝手を向上させることもでき、パブリックチェーンを社会を支えるインフラとしての役割を向上させる事ができます。
まとめ
Symbolで新たに追加されたアグリゲートトランザクションは、単に複数の取引をまとめるだけでなく、それによってより安全な取引を実現させたり、ブロックチェーンの使い勝手を向上させる非常にパワフルな機能です。
次回は、マルチレベルマルチシグアカウントなどSymbolに追加された他の新機能を紹介していきます。