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日銀の新支援策

     令和2年4月30日に参議院で開会された財政金融委員会の審議中継をインターネットで視聴しました。 質疑応答から気になった2点をピックアップし、最後に私の所見を述べたいと思います。

  第1に、日銀の中小企業支援策に関しての質疑が行われました。「今回の日銀による中小企業や地域金融機関の支援スキームは、今までにはない踏み込んだオペレーションである。大変現場に喜ばれるものだ。日銀が信用組合や農協にも手を差し伸べた点を評価している。改めて簡潔に内容を説明してほしい」との発言がありました。
  これに対して黒田日銀総裁が次のように返答しました。「今回、金融政策決定会議では3月に導入した企業金融支援の特別オペレーションについて、3つの拡充措置を講じることにした。これは民間部門に対する金融仲介機能を、金融機関が幅広くより発揮するよう支援するのが目的である。具体的には、第1に、対象担保範囲を家計債務に関わるものを含め、民間債務全般に拡大。第2に、対象先を中小企業への貸し出しの割合が高い、いわゆる系統会員金融機関などに拡大。第3に特別オペレーションの利用促進の観点から、金融機関に有利な条件で資金供給を行うことを決めた。すなわち、貸付金利0%だけでなく、本オペレーションの利用残高に相当する当座預金についてはプラス0.1%付利する。また、今後さらに中小企業の資金繰りを支援するため、政府の緊急経済対策における資金繰り支援制度も踏まえ、新たな資金供給手段を早急に検討する」といった説明でした。

  第2に、日銀の国債購入に対して質疑が行われました。「国民が目の前で生きるか死ぬかのときは、政府が借金してでも支援するのは当たり前。それが政治の役割だと思っている。仮にそれによって借金国債が増えて金利が上昇するリスクを抑えるために、日銀が国債を購入して支えるのは非常時では適切と認識してる。しかし問題は、日銀が今まで非常時でもないときに爆買いを行い株価を上げたこと。結果、掲げた物価上昇目的も達成していない。従って、これまでの日銀の姿勢は厳しく問われるべき。さらに、これから国債の購入を『無制限にする』と発表した必然性が理解できない。日銀は、現行の年間上限80兆円もまだ買い入れてない現段階で、なぜ“無制限”とする必要があるのか。これを短期的な非常時のMMT(現代貨幣理論)や財政ファイナンスのやり方と考えているなら危険ではないのか。“無制限”と言わないほうが、この支援策はより好感を持って受け入れられたはず」と指摘。その上で「日銀がここまで積極的に乗り出した以上、政府も政策と日銀のスキームを最大限に生かして、迅速に次の支援を行ってもらいたい」と要求しました。
  これに対する麻生大臣の答弁は次の通りです。「金融機関資金支援のため、日銀は前述のような特別なオペレーションを創設した。これは景気等々に極めて重大な影響があると思っている。金融を理解している人なら、このオペレーションがとても大きな意味を持つとわかるだろう。大変いいことであり、引き続き日銀と連絡を密にして対応していきたい」と表明しました。

  以上の点について私の意見を述べたいと思います。

   日銀の中小企業支援策については、米国中央銀行(FRB)の支援策と似ています。FRBは4月9日に給与保護プログラム貸付制度(PPPLF www.federalreserve.gov/monetarypolicy/ppplf.html)という新たな金融機関支援策を発表しました。これは米国中小業庁(SBA)が行う事業者融資プログラム(PPP)に参加している金融機関に対して、ノンリコースベースで資金繰りを支援する制度です。日銀と同じように中小企業に貸し出しをしやすくするため、金融機関の中小企業対象のローンをターゲットしています。FRBはこのPPPLFの期限を9月30日までと決めており、半年程度の一時的な支援を行う目的です。中央銀行が緊急事態にそれぞれの中小企業を支援するのはもちろん賛成ですが、日銀もこの新しい特別オペレーションが期間限定だと明確に公表してもいいでしょう。そうすれば、金融機関に対してこのプログラムに迅速に参加するインセンティブを与えると思います。
  日銀の国債購入に関しても、中小企業支援策と同じくFRBと似かよった発言をしていると思います。3月23日にFRBは「米国債購入を無制限に行う」と記者会見で発表しました。私はこの“無制限”という言葉を使うのには反対です。今回のFRBと日銀の発言は、欧州中央銀行(ECB)のマリオドラギ総裁が2012年に発表した「Do whatever it takes(何でもやる)」(https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2012/html/sp120726.en.html)を真似ているのではないでしょうか。“無制限”と言った場合、マーケットと世界経済は「それ以上の数字は存在しない」と思ってしまいます。いわば最終兵器を使った後では、次の危機の際に前回の反応を上回る効果が得られないかもしれません。しかも、このような発言を一度行った後に撤回すれば、市場が絶望するリスクもあります。こういった最終通告とも捉えられる言葉の使用を今後は絶対に避けるよう、各国の中央銀行には強く要求したいものです。


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