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日銀のETF購入は問題?

  令和2年5月12日に衆議院で開会された財務金融委員会の審議中継をインターネットで視聴しました。 質疑応答から、日本銀行(以下、日銀)のETF購入について気になった2点をピックアップし、最後に私の所見を述べたいと思います。

  第1に、日銀のETF購入目的に関する質疑が行われました。「現在、日銀は新型コロナウイルス感染症対策として、上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(JREIT)の購入ペースを積極的な方針に変更。それぞれ年間購入目標の上限をETFで約12兆円、JREITで約1,800億円に倍増している。しかし、これは3月に株式市場で日経平均が急落した後に決まったもの。そもそもは株式市場の暴落を防ぐための措置であるべきなのに、これではどう見ても株価を支えるための株価対策ではないのか」との質問がありました。
  これに対して日本銀行理事の内田氏の返答は次の通りです。「2月下旬以降、新型コロナウイルスの影響で世界経済全体の不透明性が継続している。日銀は金融市場の安定を維持し、企業や家計の経済状況悪化を防止する観点から、当面、ETFの購入額の上限を年間約12兆円に引き上げた」といったものでした。

  第2に、日銀のETF購入期間について質疑が行われました。「日銀は現在のETF買い入れペースをいつまで続けるつもりなのか。政府が新型コロナウイルス対策に対して出口戦略を検討している中、終わるめども示さずに爆買いを継続していくのは、やはり問題ではないのか。日銀として何か収束させる目安はあるのか、教えてほしい」との要望がありました。
  これに対して日本銀行理事の内田氏の返答は次の通りです。「いつまでこの買い入れを続けるのかについて現時点で答えは持っていない。金融市場の状況を踏まえて、必要と判断されるまで、積極的な購入を継続する方針だ。今回のさまざまな措置は、企業金融の円滑化と金融市場の安定維持のために決定した。ETFの買い入れ増額措置もその一環である。従って、新型コロナウイルスの影響は当面は続くが、各国政府の対応による効果でいずれは収束すると思う。今回の措置は時限的なものと考えており、それをはっきりさせる観点から年間6兆円という残高ペースを維持する中で、現在のETF購入の増額を行ってる」といった説明でした。

以上の点について私の意見を述べたいと思います。

日銀のETFの購入目的と購入期間はとても重要な課題だと思います。外国の大手中央銀行と比べて、日銀の金融緩和はかなり特殊であるかもしれません。米中央銀行(FRB)と欧州中央銀行(ECB)は、今までの金融政策とコロナウイルス対応のための新たな政策も含み、さまざまな措置を行ってきました。今回、FRBは PDCF (プライマリディーラークレジットファシリティ/政府公認証券ディーラー向け連銀貸出制度)、CPFF(コマーシャルペーパー資金調達制度)、MMMFLC (マネーマーケットミューチュアルファンド流動性ファシリティ)、PPPLF(給与保護プログラム流動性ファシリティ)と4つの新たな措置を2月以降に発表し(https://www.federalreserve.gov/covid-19.htm)、以前の金融緩和で利用可能な金融商品の枠を拡大しています。一方、ECBはPEPE(パンデミック緊急購入プログラム )を3月24日に発表して(https://www.ecb.europa.eu/home/search/coronavirus/html/index.en.html)、FRBと同じく 以前の金融緩和で利用可能な金融商品の枠を拡大しました。
しかし、FRBもECBも株やETFの購入の発表は一切にしたことありません。日本も先進国のリーダーとして、ETF購入の目的をもう少し明確にしたほうがいいと思います。日銀の代表は、ETF購入の目的や理由について時々曖昧な答弁を行い、期限さえも示していません。こういった質問に対して明確な返答がなければ、「この金融政策は財政ファイナンスだ」と世界マーケットに認識されるリスクは高いでしょう。7年前にもともと物価指数上昇のために策定された時点では、期限目標が2年間と明確でした。今回はETF購入だけでなく、国債購入も期限を切らずに積極的に増額しています。このような制度に対する世界の金融システムからの信用はおそらく少しずつ低下しており、長期的には日銀と日本円通貨の信用も減少する恐れがあります。

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