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レバレッジとインバースETFは買っていけない?

  令和2年6月4日に参議院で開会された財政金融委員会の審議中継をインターネットで視聴しました。質疑応答から気になった点をピックアップし、私の所見を述べたいと思います。

  金融商品販売に関する新たな法案について質疑が行われました。「最先端の技術やイノベーションによって今後の金融サービスが変化し、それに対応する必要があるということは何ら否定しない。しかしデジタル経済が、利用者保護、消費者保護、プライバシー保護に対してどういう影響があるのかは、まだ深く分析されていない。そのように状況が整っていない中、今回、金融サービス仲介業が、顧客保護制度でもあった所属制をなくして新設されるという、新しい法案が出てきた。その点に危惧を抱いている。これは今までの顧客保護の仕組みをなくす代わりに、新たな仲介業者が扱える金融サービスを限定するもので、高度な説明を必要としない簡単な金融商品だけを扱うことができる法案だ。ところが新たな仲介業者が扱える商品には、具体的には上場株、投資信託、国債も含まれる。これらの商品に対して既にトラブルは起きており、本当に簡単な説明だけでいいのかを改めて考える必要がある。国民生活センターや証券業協会に寄せられる、株や債券などに関連する苦情相談が(年間)2,000〜3,000件という現状で、説明が簡単だからと、消費者保護を緩めていいのか。全国証券問題研究会が出している意見書には『こういう形にしなくても新しい仲介業者は現行の所属制のもと、それぞれ許可・登録を取得した上で、横断的なサービスを行うことができるのでは』と書いてある。なぜ現在の所属制をなくす必要があるのか説明してほしい」という質問がありました。

  これに対して金融庁の中島氏の返答は次の通りです。「今回の法律において所属制を外すことは、正におっしゃるとおり。所属制があると、業者はそれぞれの所属先の指導を受けたり、業種ごとの登録をしたりしなくてはいけない。それに代わるものとして、利用者保護の観点から、金融商品やサービスなどに限定を加えることを考えている。ただ、国債、株、投資信託等においても、例えば上場投資信託の中にはレバレッジ商品やインバース商品といわれているものもある。そういったものは、簡単な説明だけでは相応しくないのではないかという意見も承知している。今後、政令で取り扱う商品を定める際には、いろいろよく踏まえて検討したいと思う」と答えました。

  この点について私の意見を述べたいと思います。私は投資で20年以上の経験を持ち、ウォール街でレバレッジ商品やインバース商品に投資したこともありますし、金融機関に販売したこともあります。具体的にこれらの商品を説明したいと思います。上記の図を例として、アメリカ株式市場指数のS&P500指数を基礎とした商品の変動を2011年の間でご覧ください。緑色の線が基礎のS&P500指数であり、青色の線が「SSO」という2倍レバレッジの投資信託、赤色の線が「SDO」という2倍レバレッジインバース商品です。SSOは毎日S&P500の2倍のレバレッジを効かせて計算されており、SDOは毎日S&P500の逆2倍のレバレッジで計算されています。S&P500がこの期間では少し上がりましたが、SSOのパフォーマンスはS&P500より少し低く、SDOは大きく20%程度下がりました。どちらの商品もS&P500の2倍にはプラスとマイナスどちら方向にも変動してません。

  これらの商品で一番重要な点は、基礎商品の毎日のパフォーマンスと連動させることを目的として作られていること。つまり、1日ごとのパフォーマンスは基礎商品と連動しており、運営費用を除くと相関率が高いものなのです。しかし、1日ごとに変動率が計算されるため、1日以上これらの商品を保有すると相関率は下がります。

  したがって、金融商品の販売に関する法案は、金融の教育と関係があると思います。法律でいくら利用者や保有者を保護しようとしても、金融市場のリスクを避けることは不可能かもしれません。今年の3月、それぞれの株式市場指数は1カ月間で30%以上暴落しました。普通の大手株や伝統的な商品に投資をしていても、危険性がとても高い状況でした。インバース商品とレバレッジ商品以外にも、ボラティリティの高い金融商品は、投資世界で数えきれないほどあります。世界の金融機関は毎年新しい金融商品を開発しており、すべての商品で利用者と保有者を保護することはできません。つまり、法律で保護するより、教育で多種多様な金融商品の使い方とリスク管理を教えたほうが、長期的に適切だと思います。日本の教育制度の中で金融教育と投資教育を行えば、金融と投資の基本的な理解が向上。すると将来、新たな金融商品が開発されても、国民の一人一人が自分で価値を判断することが可能になるでしょう。

高橋ダン

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