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権威とは何か(経営者の役割)

C.I.バーナード著 『経営者の役割』 第三部 第十二章 「権威の理論」

本章では「権威とは何か」「権威とはどのようにして生まれ、どのようにして維持されているのか」といったことが考察されていて、とても面白い。相変わらず抽象的で難解な文章だが、私なりの解釈でご紹介する。

まず、組織の本質とは「組織へ貢献しようとする個人の意欲」であると本書では解説されている。社員こそが会社にとって一番の財産だ、というのが正しい組織の姿で、お前の代わりなどいくらでもいる、というのは間違った組織であると明確に定義されている。では、どうやったら個人が会社に貢献してくれるだろうか?

第二部で「組織に必要な要素はコミュニケーション・貢献意欲・共通目的の3つである」と解説した。そのために、会社はビジョンであったり中期目標であったり各社員に期待することなどを積極的に伝えて、会社のために働く意味を納得してもらう必要がある。そこで登場するのが「権威」である。

権威のある人が発現した内容はみんな素直に聞き入れるよね。逆に権威のない人がどんな素晴らしいことを言っても、あんまり響かないよね。なんとなく権威ってのは大事な気がするけど、じゃあその本質って何なんだろうね?というのが本章の主題。

権威の源泉とは

さて、筆者は説明が下手なので、権威について最初に結論を書いている。
「権威とは何の効果も持たないものである」
道路交通法とか、みんな全然守ってないよね? 赤信号、みんなで渡れば怖くない? 飲酒は20歳から? 法律なんて、ただ罰則が規定されているだけで、それを守るも守らないも本人の気持ちでしかない。(なんかどっかで聞いたことある論だな)

権威というのは、いつどんなときでも、情報を受け取る皆さん、個人の気持ちによって形作られている。たとえどんなに厳しい軍隊の中でも、とても権威のありそうな将軍様が命令を出したとしても、それは将軍様に権威があるのではなく、その命令を受け取る一般兵の皆さんが「命令に従おう」と思って初めて権威として確定するのである。

だから、良い組織を作るためには、出した命令がなるべく全て受け入れられることが重要になる。みんなが納得できる命令を出し続けることで権威は強固なものになっていく。無茶な命令ばかりしていると権威は衰退していく。

権威を認める意味

上層部の人間が権威を大切にする意味は分かった。では、一般人である我々が権威を認めることにメリットはあるのだろうか? 権威なんて存在するだけで自分に不利益しかないような気がしないだろうか?

我々が権威を認める理由は、責任を取りたくないからである。何か命令に従うことで、失敗したとしても責任は命令を出した権威者にある。世の中には自ら責任を取りたくない人の方が多いので、そういう人は権威を認めることで楽に生きられるわけだ。

だから、権威者が緊急事態だと言ったら、ちょっと嫌な命令でも仕方ないと受け入れる気持ちも発生する。ただ、その嫌な気持ちが何度も何度も繰り返されると人々はやがて権威を認めなくなって組織は崩壊する。

まずは、さほど大きな問題ではない、受け入れやすい命令をたくさん出すことで権威を形作っていくことが望ましい。

権威を維持するテクニック

さて、上位からの伝達内容がとても良いものであれば当然人々は権威を認めるようになる。しかし、職位が高いだけで大した能力のない人というのも現実には存在する。組織が大きくなってくると、こういった「職位の権威」というものが発生する。

一方、職位は高くないが、明らかに優れた人というのも存在する。あの人はすごいよね、と皆が一目を置く存在。あの人の言うことならたぶん正しいから従っておこう、というのは「リーダーシップの権威」である。

当たり前のことであるが、リーダーシップのある有能な人を高い職位につかせると、組織は安定する。でも現実には、無能なリーダーが「あいつは優秀だから私の手駒として存分に働いてもらおう」とか思ったりする。これはやめた方がいい。

伝達の経路、指揮系統は明確に周知されている必要がある。そして、全ての組織構成員は、伝達の経路の中のどこに位置しているのかを明確にしなければならない。自分の上司が誰なのか、誰からの命令を聞けばいいのか、という組織体系が明確であればあるほど、権威は正当化され、組織は強固なものとなる。

最近は組織のタコつぼ化、縦割り構造が批判され、横のつながり、自由な組織風土などが叫ばれている。社員に三遊間を埋めるような働きを求め、各自が自律して判断するよう求められたりする。これは組織の伝達経路を乱しており、組織を崩壊に近づけていることになる。

これって今の社会にも当てはまるの?

本章の内容は以上だが、最後の方はちょっとしっくりこない。縦割りのお役所仕事の方が組織としては強固かもしれないが、いまどきそんな組織は時代遅れで世の中に通用しないのではないか、という気がする。これからの時代に求められる組織像は、どんな感じに説明すればいいのだろうか?

働き方改革だけではないけれど、仕事のあり方というのはだいぶ変わってきていて、もはや一つの会社に所属して働き続けるという時代ではなくなっている。世の中にたくさん存在するプロジェクトにちょっとずつ個人で参画していく、副業をたくさん掛け持つ、みたいな働き方がこれから来るのではないかと聞いている。

つまり、大きな組織というのは解体されて、小さなプロジェクトを運営する小さな組織が山ほどできる、という考え方だろう。そうすれば、プロジェクトのリーダーというのは自ずと有能なリーダーシップ職位を持った人間になるだろう。(無能な人では、職位の権威もない中でプロジェクトを率いるだけの権威を確立できない)

逆に考えると、人々は無能な「職位の権威」に飽き飽きしてきたのかもしれない。無能であるがゆえに「職位の権威」からの命令では三遊間の取りこぼしが発生し、それを補うように自律的に一人一人が働け、と言われるわけだから、そんな組織は求心力を失うのも当然である。組織を強固にするための縦割りの伝達経路を築き上げたとしても、伝達された内容が不適切・不十分であれば、やはり権威は失われるわけだ。

あなたの立ち位置を決めよう

さて、組織と権威の関係がだいぶ分かってきた。あとは、あなたが自分の立ち位置を決めて、そこに向かうだけだ。

自分のやりたいこと、信念を持っている人ならば、あなた自身がリーダーシップをもってプロジェクトを作ればいい。賛同してくれる人が集まれば、小さな組織として動き出す。

何の責任も取りたくないから、言われるがままに仕事をして給料をもらう生活がしたいのなら、組織に所属しよう。良い組織というのは、縦割りで融通の利かないお役所的なところだ。社員一人一人の自由・自律などを謳っているところは黄色信号だ。いまどきな雰囲気を醸しているのは崩壊が近い証拠だ、気を付けよう。一番よい組織はブラック会社だ。上意下達の指揮系統がしっかりしている。安心だ。

好きなことをして責任は取らず自由にのんびり悠々自適に働きたいというわがままなあなた。まずは自分に合った小さな組織を探そう。どこかに同志が運営する小さなプロジェクトがあるはずだ。たぶんね。たぶんあるから、頑張って探して。


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