モチベーションを誘起する(経営者の役割)
経営者の役割 第三部 第十章~第十一章を読む。
組織の本質とは、人々が快くそれぞれの努力を貢献しようとする意欲である。したがって、あらゆる組織は個人に貢献意欲を持ってもらうための誘因を提供しなければならない。提供できる誘因は、物質的誘因と非物質的誘因に大きく分けられる。
物質的誘因
主にお金である。特に衣食住などの生理的必要が満たされていないときは大きな誘因となる。しかし、生活水準以上のものを持つ人に対しては弱い誘因にしかならない。
現代社会では、お金はあればあるほどよいと考えられているが、実際にお金が強い誘因となっているのではなく、お金を与えられることで認められたと感じたり、他社に対して優越感を持つことができることに価値がある。
非物質的誘因
・威信、社会的承認、栄誉など、個人に優越感をもたらすもの。
・誇り、忠誠、適性感など、個人の理想を満たすもの。
・道徳、文化、調和など、社会の一員と感じられるもの。
・慣習、なるべく同じことを続けたいと思う欲求を満たすもの。
・愛着、貢献度、自分が必要とされている感覚を満たすもの。
・仲間意識、心が満たされること。
組織が、個人的貢献にふさわしい誘因を提供できていない場合、組織は個人を説得する必要が出てくる。説得の方法には3つのタイプがある。
強制的な説得
権利剥奪、追放、みせしめなどによって無理やり相手を誘因する。一般的に能率が悪いことが知られているが、今でも社内での叱責・懲罰によって社員をコントロールしようとする会社は多い。
機会の合理化
あなたのためになるから、やった方がいいと示す。お金をたくさん貯めた方がいい、車を買ってマイホームを手に入れるのがいい、といった価値観を提示することで、お金のために働くことは正しいと思いこませる。
同機の教導
教訓、垂範、暗示、愛国主義など、教育により貢献することの価値を教え込む。
**********
以上の内容を咀嚼すると、モチベーションのない個人に対してモチベーションを誘起させる方法は、あまりいいものがないように思える。明治維新であったり高度経済成長であったり、みんなが同じ方向を向いて進むべきだと信じている社会であればいいが、現代のように個人の意思が尊重される時代においては、会社が社員を説得するのは難しく、ブラック企業の体育会系研修による洗脳のようなものしかないのかもしれない。
だからこそ、会社は説得に力を入れるのではなく、提供できる誘因を明示することで、共感してくれる社員に働いてもらうことが、最も個人の貢献を引き出すことができる。すなわち、明確なビジョンを示すことが経営者の役割と言えるのではないだろうか。
第九章までのまとめは以下の通り
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?