謙虚なリーダーシップ
また新しい本です。前回の読書会で紹介した、ハンブルリーダーシップ(謙虚なリーダーシップ)について読んでいきます。
これが、昨日のPeople Poweredの第二章で挙げた問いへのアンサーみたいになっていて、すごく興味深い内容でした。
本書の目指すリーダーシップとは
ということで、のっけから想像とは180度真逆のリーダーシップ論が展開されています。スティーブ・ジョブズのようなビジョナリーなリーダーシップは、かつての古い考え方で今の時代にはそぐわない、といった論調です。
企業に根強く残る古いリーダーシップ
私たちも、会社で働いていると「社長の方針がしっかりしていないからダメだ」とか、「もっと明確な方向性を示してほしい」とか、いろいろ文句を言うことがあります。自己啓発本を読めば、スティーブ・ジョブズのように明確なビジョンを示して成功した事例が華やかに取り上げられ喧伝されています。こうした文化が、VUCA時代への対応力を制限しているというのです。
なぜ謙虚さが必要なのか
つまり、英雄的なリーダーが解決策を考えて世の中を引っ張っていくようなスタイルは限界がきている。そんな簡単な課題はとうの昔にすべて解決済みであり、いまも残っている複雑で難しい課題に取り組むには、みんなの知恵と力を合わせていかないといけない、というのが本書の主張だ。
そう考えると、「最近の若い奴は根性がない」という主張は「昔の簡単な課題解決の成功体験でテングになっているダメなおじさん」と考えることもできるわけだ。
これからの複雑で難しい課題を解決するには、たくさんの人が自発的かつ積極的に取り組む必要があり、それは上からの命令で人を動かすようなリーダーシップでは決して発揮できない、もっと謙虚にお互いを尊重しないと実現しえないチームの力なのだ。
問い:私たちにそれだけの美があるのか
リーダーが謙虚になってメンバーのやる気を引き出す必要がある、そういう時代になっているというのは理解しました。しかし、ここで私たちは容易に勘違いをしてしまいます。
「上司が謙虚じゃないからこんなダメな組織では何も生まれない」とか「もっと上司は部下の気持ちを考えるべきだ」と考えるのも仕方ないですが、でもそれは「私は定時で帰りたいから仕事量を適正にしてほしい」という願いを叶えることではありません。
ここで目指しているのは、リーダーが謙虚になることによって、「私もこの仕事を成功させたいから土日も返上で死ぬ気で仕事に没頭したい!」と従業員のやる気に火をつけることです。それが、自発的に積極的に課題に取り組むということです。
なんとなく、ベンチャー企業だとやりたいことがあって、寸暇を惜しんで働いているイメージがありますが、大企業だとそんな情熱にあふれた人は少ないだろうな、と思います。ベンチャー企業は、人数が少ないこともあって、自然とお互いを尊重する謙虚なリーダーシップを築きやすいんだと思いますが、大企業では価値観の違う人も大勢いて、むしろ人間を機械的に動かすことで生産を回していく、みたいなシステムが出来上がっているので、非常に難しいだろうな、と思います。
これって「真善美」の話だと思います。
従来のリーダーシップでは「善」が重視されていて、チームの「善」に即した「真」を有する人が採用されていったと思います。しかし、そうやって「真善」で動く関係性は、機械的で、一定のスキル以上の力が出ません。火事場の底力みたいなのが発揮されないわけです。
人間が、その本当の力を発揮できるのは、「美」の領域です。あなたの「美」がチームの「善」と重なって「善美」で動くチームになると、今まで解決できなかった複雑な問題にも対処できるようになる、というのがおそらく本書の謙虚なリーダーシップで目指す姿だろうと思います。
そこで大事になるのは、リーダーが謙虚であることと同時に、あなたの「美」がどれくらいしっかりしたものか、ではないかと思うのです。あなたが心から情熱を注いで頑張りたいと思えるもの、そういうものをしっかりと見つめていく必要があるのではないでしょうか。
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