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55歳 バツ2男の結婚式父親スピーチ

先週の土曜日、次男坊の結婚式があった・・・

さかのぼること、半年前
次男坊が彼女と一緒に私のアパートに来て・・・
息子「お父さん!式の日取りが決まったよ!」
父「あっ そうなの」「で、いつ?」
息子「来年の6月8日」
父「6月ね・・・雨じゃなきゃいいなっ!」
息子「そうだね・・・」
父「お母さんは呼ぶのか?」
息子「いや、呼ばないよ」

息子は男2人・・・
2人とも最初の妻との子供
長男は32歳、次男は31歳、年子だ
私が2人とも引き取り、育てた・・・

もう25,6年の月日がながれたのか・・・

結婚するのは次男坊だ
(長男は、まだみたい・・・)

父「お父さんに気を使わなくてもいいンだぞ、呼びたかったら呼びなさい」
息子「うん、大丈夫 この前彼女を連れてお母さんに
   逢いに行ってきたから」
父「そうか・・・」
息子「じゃ~帰るね、近くまで来たから報告ついでに寄っただけだから」
父「はいはい、じゃ~な」

息子「あっ・・・そうそう・・・」
  「ということで最後、スピーチお願いね!」
・・・・と言い残し息子、帰る・・・

ん・・・?
スピーチ・・・?

私は2回結婚したが、2回とも籍を入れただけで
結婚式はしていない・・・

なので結婚式と言うもの内容なんて知らなかった

華やかな衣装を着て2人で大きなケーキを切るみたいな・・・
そんな印象でしかなかった

すぐに調べてみると、確かにある 式の最後に
「新郎父 あいさつ」と・・・
マジか・・・

まあ~まだ先だ・・・ボチボチ考えればいい・・・

時の経つのは早いものだ、
結婚式まで、あと1か月と せまってきた

ヤバいな、真剣に考えよう(ようやく重い腰をあげる)
まず、YouTube、TikTokで「結婚式 父親のスピーチ」で検索
映像が映しだされる・・・

わぁ~すごいな~これは・・・
どうしよう・・・まいったなぁ~
映し出された映像には

歓、極まって泣きじゃくる父
キリッとして堂々と威厳を感じさせる父
淡々と控え目な感じで、さりげなさくスピーチする父
面白いこと連発で爆笑をおこす父

様々な父親の姿がそこにはあり

映像を観て感じたことは・・・

結婚式においての、この最後の父親スピーチは・・・
かなりの注目度だぞ
みんなが静まりかえり
列席者の全ての人が、かたずを飲んで見守っている
その中でスポットライトを浴びマイクの前へ・・・

ここに俺は立たなければならないのか?

これは、大変だぞ・・・ヤバいな・・・

当然だが、どのスピーチも内容が素晴らしい
思わず、聞き入ってしまう
映像を観ているだけで、グっとこみ上げてきてしまう

だからこうしてYouTubeやTikTokにアップされているのだろうから
そりゃそうだな・・・

その中で一番、いいなと思ったスピーチが

淡々と、あいさつと お礼を述べて終えたスピーチだ・・・
短いけどシンプルでいい
短いからと言ってシラケた雰囲気になった感じでもない
場の空気も壊していない・・・

いいな! よし!俺もこのパターンで行こう

よし!スピーチの大きな方向性は決まった!
さぁ~あとは内容だ

またネットで検索
基本の形があるはずだ・・・純粋にそれに乗っかって考えればいい

さすがに素晴らしい・・・
結婚式の父親スピーチを解りやすく指南してくれる
例文を基に、入りのあいさつ
お礼の文章、言葉
使ってはいけない言葉
間の空け方
エピソード話を入れるタイミング
最後のあいさつの言葉


私は、たまたま 1か月前に原田マハ先生の
「本日は、お日柄もよく」を読んでいた
(とても素晴らしい内容!おススメです)
この小説の前半は、まさに結婚式のスピーチの話

もう一度読みかえして、スピーチの心得をなぞってみる
心を平常心に
会場が静かになるのを待つ
内容は全文暗記
決して泣かない
・・・ふむふむ・・・ん~

内容全文暗記は無理だな
これは絶対無理だ、・・・
これはあくまでスピーチのプロの心得だ
俺がマネできるモノではない
俺は堂々と原稿を読もう

確かに何も見ずにスピーチできたら、こんなカッコイイことはない
おそらく、尊敬の まなざし!賞賛を浴びること間違いなしだ

しかし、それができるのは
スピーチのプロ、会社の社長、学校の先生、政治家など
日頃がら大勢の場で話をすることに慣れた人達だ
俺みたいな不慣れな凡人が出過ぎたマネをすると
緊張で頭が真っ白になり、パニック、
言葉が何も出てこず、黙ってしまってジタバタするしかなくなる

それが、今の時代は映像として永遠に残る(DVDに残すだろう)
みんなの、それぞれのスマホの動画にも永遠に残るのだ
わぁ~いやだ、嫌だ!
それだけは避けねば・・・

俺は尊敬も賞賛も、そんなモノはいらん
ただ淡々に何事もなく、無事に自分のスピーチの時間が過ぎれば
それでいい
原稿を棒読みであろうが、つまらないと思われようが
どうでもいい、普通に読み終わりさえすれば
それでいいのだ

スピーチの原稿作成だ
例文の文章を基に自分の言葉をあてはめていく・・・
始めは何の気なしに淡々とやっていたにだが
参考までにと観たYouTubeやTikTokの結婚式の映像が
脳裏に浮かんできて、勝手に会場でのイメージを膨らませてしまう
不思議なもので・・・
子供が赤ちゃんだった頃、立った時の喜び、保育園入園、小学校
中学、高校・・・
スーツを着て入社などと次々、走馬灯のように思い出してしまう

気づけば・・・あいさつとお礼のシンプルなスピーチだったはずが
ちょっと尾ひれの付いたスピーチとなった

まぁ~このくらいは・・・と思いつつなんとか原稿が完成した
あとは当日まで、何回も読み込む、
途中、修正を加えながら、間を考えたり
「ここは、もっと感情を入れよう」と思ったり
どうしても間違えてしまうところは、注意するように印をつけたりと
せめて上手にキレイに原稿を読めるようにしようと努めた

そして当日、会場に来てビックリ・・・大きい、広い・・・
あわてて披露宴御席表をみてみる
100人ぐらい来るのか・・・まじか・・・(げっ!そんなに来るの)
長男坊「オヤジ・・・大丈夫か?スピーチ?」
   「こんなに大勢の前で話すんやで・・・」
父「・・・大丈夫や!原稿読むだけやし!あっと言う間や」
 (内心はビビッている)
当然だ今までの人生で、こんな大人数の前で話をしたことなんてない

式が終わり・・・
いよいよ披露宴

司会の女性のキレイな声の呼び掛けと共に、スポットライトが照らされ
主役の2人が登場!
華やかな音楽が雰囲気を盛り上げる

一端、静寂し・・・新郎、新婦それぞれの会社の上司による祝辞
私も注目する・・・
果たして原稿を読むのか・・・
それとも暗記しているのか・・・

わぁ~すげえ~2人とも暗記している~
しかも流暢だ~冗談とかも入れて笑いもとっている
さすがだな~慣れているって感じだ

いいンだ・・・私は私だ・・・
無難に終える・・・これが目標!
賞賛も感動もいらない・・・
(自分に言い聞かせる)

披露宴は大いに盛り上がる!

大きなスクリーンが用意されていて
そこに、お前らは芸能人か!っていうぐらいの
演出をほどこした、動画が流れる
すごいな~と、ただただあっけにとられながらも
映像の中の仲むつまじい二人に顔がほころぶ

緊張もほぐれ、この結婚式という非日常な楽しい空間に
我を忘れて、しばし満喫する
美味しい料理(本当に美味しかった、びっくり!)
息子の仲間たちによる余興
会場のみんなを巻き込んで行われる、2人にちなんだクイズ

笑いと拍手に包まれたいい結婚式だと思った

そして音楽が変わり、少し落ち着いた雰囲気に・・・

またスクリーン・・・
こんどは次男坊の赤ちゃんの時のスナップ写真が写し出された
そこには、まだ離婚する前の、若い私と妻、そして幼い息子2人
4人そろった写真・・・
それが何枚も写し出される
4人でお出かけしている写真、お風呂に入っている写真
だっこしている写真・・・
ここにきて、一気に涙があふれそうになる
懐かしさと、恥ずかしさと、子供たちが成長した嬉しさと
後悔の深さと・・・複雑な思いが込み上げてきた

ヤバい・・・泣いてしまう
しかし・・・

ここで泣いたら、もう涙が止まらんぞ~

この後の俺のスピーチがグダグダになってしまう
(スピーチの心得、絶対に泣くな!)

泣くな~我慢だ~
すかさず、席を外してトイレに駆け込む
みんな、スクリーンに見入っていてトイレには誰もいない
ふ~
大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせる
ギリギリ涙腺のダムは決壊せずに済んだ・・・
「危ない~意表つかれた~あの写真は反則だよな~」
ブツブツ独り言をいいながら会場にもどる
よかった~もうスナップ写真は終わっていた

そして・・・ついに・・・
スタッフの人が近づいてきて
「お父様・・・私に付いて来てください」

所定の位置に導かれるように移動
新婦の親御さんたちと並んで立つ・・・

静寂で薄暗い中から・・・まぶしい程のスポットライトが
バチ~ン と向けられる
まずは新婦から自分を育ててくれた両親にお礼と
嫁ぐ娘の心音が語られる・・・

もう・・・私の隣の新婦の両親は号泣である
娘も泣きながら語る・・・涙で言葉にならない
会場も、もらい泣き・・・すすり泣きながら鼻をすする音が響く

不思議と私は冷静だ、なんと落ち着いている
さっきの一番ヤバい危機を乗り越えたおかげで
気持ちに余裕ができたのか
(あ~次は、いよいよ俺だな~)

そして・・・きた・・・
司会の女性のアナウンスが・・・
「では、最後にご両家を代表いたしまして新郎のお父様からご挨拶が
ございます・・・」

うちポケットから、ゆっくり原稿をとりだす・・・
三つ折りした原稿を丁寧にひろげて・・・
まぶしい程のスポットライトの おかげで字がよく見える
・・・会場は、すでに静寂、待つ必要はなし!
心で深呼吸をして・・・
「ただいま、ご紹介にあずかりました新郎の父・・・・・・」

そして、狙い通り無事終了・・・・・


結婚式、披露宴、全て終了・・・
ご列席いただいた皆様を丁寧に見送り

始めは、”ただ無難に何事もなく終われば、それでいい”としか考えていなかったスピーチ、でも結局は何か色々継ぎ足してしまった・・・
それが、良かったのか、悪かったのか、自分ではよくわからない・・・
まっ・・・何事もなく終わったのだ、それが一番だ
これでいい! これでよかったのだ! よく頑張った俺・・・! 
いい結婚式だった!・・・

残ったのは、新郎、新婦と新婦のご両親と私の5人+会場のスタッフ

今日の素晴らしい結婚式、披露宴を 支えてくれ、盛り上げてくれた
スタッフの皆様ありがとう・・・・
そこへ・・・責任者の方が近づいてきて
すみません・・・最後にスタッフみんなと一緒に写真撮ってもいいですか?
はい! いいですね~
みなさんで撮りましょう~

はいち~ず・・・カシャっ!
そして笑顔で解散・・・
あ~なんて気持ちのいい人達だ~・・・

すると女性スタッフが3人ほど私の方にやって来て・・・
ん・・・?

あの~握手してもらってのいいですか・・・?
はあ~・・・?
スピーチ、とても良かったです!感動しました!



えっ・・・・・・・・感無量とはこのことだ(涙・・・)
     
       ありがとう・・・


スマホにLINEがきた・・・
長男「スピーチ、めっちゃ良かったで!」

みんなは二次会へ行くと言っていたな
   さあ~俺は帰って・・・一人で乾杯だ
       俺の雄姿を部屋で待っている愛犬に聞かせてやるのだ





スピーチの原稿全文

ただいま、ご紹介にあずかりました新郎の父○○○○でございます
両家を代表いたしまして、お礼のごあいさつを申し上げます
本日は、ご多用の中二人のためにご列席いただきまして誠にありがとうございます
皆様からの、たくさんのお祝いのお言葉をいただきまして親として、これほど嬉しいことはございません
息子○○が素敵な新婦○○さんとこの素晴らしい良き日を迎えることができたのも、お支えいただきました皆様のおかげでございます
本当に、ありがとうございました

私が○○と・・一つ上に兄、○○がいるのですが就職が決まり高校を卒業して社会に出る時に二人に言ったことが「働き出せば、彼女ができたりするだろうが、すぐに結婚とかかんがえるな! まず仕事を覚えなさい、仕事を覚えて、まともに給料がとれるようになるまでは結婚はダメだ!」でした
私が若くして結婚し、給料も少なく当時一緒に暮らしていた妻に大変苦労をかけてしまいました・・・息子達には私のように苦しい夫婦生活を送ってもらいたくなかった と言う思いから厳しく言ってしまいました
まずは、しっかりと仕事を覚え、働くことの大変さを学び、給料をもらうことの喜びを感じ、社会人としての経験を積み重ねて、そこから結婚を考えても遅くないと自分の経験の反省から、そう思っていたからです

○○の会社の上司は私の高校の時の友達で何年か前に○○の仕事ぶりを聞いてみたところ「大丈夫、何も心配することはない、頼りにしている」と
力強い言葉をいただいき安心している時に○○から会ってもらいたい女性がいると○○さんを紹介してくれました
○○さんは、一歩ひいて常に○○をたてて、私は傍で支えていきます、と言う思いが感じられて、あ~この人なら大丈夫だと思いました
私といたしましても家族として、娘として○○さんを迎えられることを大変嬉しく思っております

私自身、2回結婚しましたが、うまくいかず、息子の結婚式とはいえ私が何を言おうと説得力に欠けるのではと、今日まで嬉しい反面、複雑な思いでいました・・・しかし学びとして考えるならば、学んだモノを何か親として
息子に伝えられるモノがあるのではないかと思い直したしだいです
二人が出会い、お付き合いをし、今日を迎えたわけですが
今、二人はとても強く幸せを実感していると思います
こんな親ではありますが何か伝えられる言葉あるとするならば、それは月並みではありますが・・・「感謝」と言う言葉です
感謝する気持ちを忘れないで欲しい
この今感じている幸せを、これから先20年30年、この先ずっと持ち続けていくためには、お互いがお互いに感謝する これしかないと思います
そして・・・二人が幸せであり続けることこそが、親の幸せでもあり
親孝行であります、親は子供も笑顔ほど嬉しいモノはありません
二人が幸せならば他は何もいらないのです
本日はお日柄もよく、心温かな人達に見守られ、二つの人生を一つに重ね
いつまでも仲良く笑顔で歩んでくれることを心から願っています

二人は30を越え、それなりに社会人として経験を積んできたとは思いますがまだまだ若輩者でございます
これからの人生、楽しいことよりも、つらく苦しいことの方が多いのではないかと思っています
そんな時、皆様には今と変わらぬ お力添えをいただければ幸いです
ぜひ これからもご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします

結びにあたり、ご列席いただいた全ての皆様のご健康とご多幸を
お祈りして、両家代表のあいさつとさせて頂きます
本日は誠に ありがとうございました



55歳 バツ2男の趣味、刺繍です
「天空の城ラピュタ」を刺繡してみました
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