雨漏りにスキマ風。問題だらけの築110年古民家はどう再生されたのか【断熱先生のダンネツノートvol.26】
伝統的な日本家屋、古民家っていいですよね。
でも、耐震性が不安、夏は暑くて冬は寒い、間取りが今の暮らしにあっていなくて不便、といった理由で空き家になっていたり、つぎつぎと解体されてしまっているのが現状です。
総務省が5年おきに行っている住宅・土地統計調査での2018年の結果では、日本全国にある空き家は848万9千戸、空き家率は13.6%でした。
そして、空き家の数は年々増えています。最近でもこの空き家対策が様々なところで議論されているなど、注目されています。
そんな空き家になってしまっている、なってしまうかもしれない古民家が、最先端リノベで蘇るとしたら?? どんな家になるのか、興味ありませんか。
今回は「LIXILメンバーズコンテスト2022」のリフォーム部門のグランプリに輝いた「伝統と先端が和する家」をご紹介したいと思います。
<「LIXILメンバーズコンテスト2022」について詳しくはこちら>
雨漏りにすきま風。20年空き家だった築110年の古民家は問題だらけ!
今回、リノベの舞台となったのは、兵庫県の宿場町の一角にある古民家です。もともとお施主様の祖父母が住んでいたお住まいで、築110年、広さ94坪という伝統的な日本家屋でした。しかし20年ほど空き家になっていたため、すきま風だらけで雨漏りもしていたとか。
そのため、住み継いでいくと決断したものの、お施主様ご夫妻はとても不安そうだったといいます。特に冬の寒さを気にしていたそう。
それはそうですよね。当たり前かもしれませんが、古民家は無断熱であることが多いです。そのため、「見る分には素敵だけど、住むのはちょっと……」と敬遠されてしまうのです。
そのため、お施主様ご夫妻からは、(1)最新のキッチンとワークスペースがほしい、(2)古民家の良さを生かした和モダンな家にしたい、(3)耐震性を確保したい、(4)気密性断熱性を高くしたい、(5)来客をもてなせる住まいにしてほしい、という大きく5つの要望があったといいます。
古民家が持つ、「経年美」を残しながらどうリフォームしていくしていくか?
そこで施工会社は、リフォームのコンセプトを「伝統と先端が和する家」としました。
基本計画から細部まで、現代デザインや暮らしと調和しつつ、古き良きものいかに残すかを考え抜いたといいます。特に、日本の木造建築が持つ構造美や経年美を引き継ぐため、構造や建具など、残せるものは活かしつつ、手をいれる部分は手を入れた、大幅なリフォームプランを作成、実行したのです。
耐震性や断熱性もぐっとアップ。築110年の古民家を安心して住める「これからの家」に。
また冒頭でも出てきた古民家の断熱性能ですが、生活空間の天井と壁、床は剥がして、みっちりと断熱材を補強、窓は樹脂アルミ複合のサーモスⅡ-H(Low-Eグリーン、アルゴンガス入り)を採用。このサーモスは、断熱性能が高いので、夏は涼しく、冬は温かい住まいになります。玄関ドアには高気密高断熱のジエスタ2を採用いただきました。
耐震では、壁量計算をはじめとした構造計算を行ったほか、玉石基礎を足固めして補強を実施。こうした工夫で、建物の耐震性でいうと耐震等級3相当、断熱性でいうと等級5相当(外皮平均熱貫流率0.51w/(㎡・k))を確保しました。一次エネルギー消費量は現在の基準から26%省エネとなり、ZEH Oriented水準です。どれも、現在の新築住宅と同等かそれ以上の性能です。これなら夏でも冬でも快適に、電気代を心配することなく、暮らしていただけることでしょう。
※地域区分:兵庫県(6地域)、外皮性能計算:簡易計算ルート(外皮面積を計算しない方法)
古い建物だから現代の性能基準にあわないわけでは決してなく、しっかりとリフォームをすれば現代でも古民家で安心して暮らせるようになるんです。
リフォーム前の良さを残しながら、家全体の断熱性能を高め、自由な空間レイアウトを実現
そして、完成したのがこちらの住まいです。
まず、暮らしの主役となるLDKです。
かつて食堂と居間、客間に分けられていた空間を、ひとつの空間とし、建物を守ってきた大きな梁が見えるようになりました。高窓から光が差し込み、明るくモダンな雰囲気がありながらも、元の古民家の雰囲気も残した仕上がりになっています。
キッチンは動線の中心となる場所に配置し、使いやすさもバツグンです。背面は全面収納にしているので、気になるものは丸ごとしまえて、生活感を隠すことができます。システムキッチンには、リシェルSIのグレーズグレーを採用いただいていますが、シンボルとなる梁の味わいと見事に調和しています。
リビング脇には暖炉を設置したほか、庭を一部改修してウッドデッキに。暮らしのなかで気軽に食事やお茶を楽しめるようになっています。
家全体をまるごと断熱したことによって、これまであまり使われていなかったスペースを活用した広々としたレイアウトが実現しているんですね。
リビングのテレビ脇には、掘りごたつ式のワークスペースを設けています。ここも一部、古い建具を再利用しているほか、家具も造作しているので、収まりも美しく、片付けもしやすいことでしょう。施主夫妻がお持ちだった家具も絶妙になじんでいます。
事務所として使われていた場所は、3畳の茶室のあるギャラリースペースに。居住スペースと地域に開くスペースをわけたことで、気兼ねなく、来客をもてなせるようになっています。
さらにアプローチにも古い石を再利用。ベンチをつくったことで、美しくなった外観と緑の眺めを楽しめます。
また、気になる予算ですが、坪63万円ほど。古い建物を建物の味わい、良さを残しつつ、新築住宅並みの性能を両立した結果だとすると、すばらしい内容だと思います。
古い建物には、暮らしの知恵や思い出がつまっています。そしてひとたび解体、廃棄されてしまえば、失われたものは二度と手に入りません。今ある建物を活かして、新築の住みやすさ、性能をも追求する。今回の「伝統と先端が和する家」は、そんな好例だと思います。
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