見出し画像

#16 今さら聞けないFMとは?=経営的に資産をちゃんと管理するということ

前回までは、団塊ジュニア世代が通ってきた苦悩などについて書いてきたが、今回はちょっと真面目にちゃんとしたFM(Facility Management)の話を。

全国の自治体にとって、公共施設(ここではハコモノというか、公共建築物を指すことにする)を適切に管理することが大きな問題となっている。
高度成長期からバブル期(というかそれ以降もw)を経て、大きく膨らみすぎた公共施設の多くで、老朽化が進行し、なおかつその維持管理費がまちの財政を圧迫しているからだ。

そこで約10年くらい前から全国の自治体で叫ばれているのが公共施設のFMである。
増えすぎた公共施設を適切に管理し、しっかりと保全をしつつ、整備にかかる費用もなるべく抑え、適正な規模にコントロールしていきましょう、というのが公共FMのスタートである。


色んなことを削減しなければならないという現実


自治体に全くもって金がない。これは紛れもない事実。
地方交付税交付金など、国からの分配金に依存しているとは言え、自己財源も含め、行政組織における、毎年の予算編成はこれでもかというくらいしんどい状況である。
もちろん、我がまちも例外ではない。

団塊世代の人口マジョリティが後期高齢者となった今、社会保障費がかさんでいるのは間違いない事実だが、公共施設にかけられているコストが、自治体の財政を圧迫しているということも忘れてはいけないこと。
公共施設の新規整備や建て替えなどは、一見派手に見えるが、それ以上に効いているのが、日々のランニングコストである。
いったん建設された公共施設のランニングコストは、いわば経常的な経費であり、これを削減することは、そうそう簡単でないミッションだからだ。
(今回は公共R不動産PPPまちづくりかるたを随所に引用させてもらってみた)

総務省から出された、いかにも上手く行きそうなミッションとは?

国も公共施設に関して、自治体の芳しくない事態を決して良しとは思っていないし、どうにかしないと地方はもとより、国の財政も立ち行かなくなるのは自明だ。

ということで、平成26年4月、全国の自治体に公共施設等総合管理計画の策定が要請されたのだ。

総務省から全国の自治体に向けて発出された「公共施設等総合管理計画」の策定要請

この無茶振りともいえる国からの一方的な要請が出されたことにより、各自治体は、自分たちが保有する公共施設の現状データを洗い出す作業から始めることを余儀なくされた。
そう、それまで大半の自治体においては、そのデータすら存在していなかったのである。
恥ずかしながら、我がまちも同様の状況であった。

この策定要請の結果、全国の自治体では公共施設のデータ化や見える化は格段に進んだし、これが国からの半ば強制的な要請であったため、自治体は素直にそれに従い、今ではほぼ全ての自治体において公共施設等総合管理計画が策定されている。

この趣旨文だけを見ると、公共施設のおかれた現状に対して、総合的な視点のもと、先の見通しを立てて、しっかりコントロールしていきましょう、ということが書かれてある。
保有する公共施設を適正な規模に縮小し、再編や統廃合を行い、要らない施設はどんどん畳んでいきましょう・・・

計画どおり進めば、きっと上手くいくだろうし、状況は好転するに違いないし、きっと数年で結果も見えてくるはず・・・だった。

ただ、現実はそうそう甘くはなかったのである。

公共FM=総量縮減というミスリード

全国の自治体で作成されている公共施設等総合管理計画において、そのほとんど全てで公共施設の総量縮減という目標が示されている。
我がまちの計画においても、向こう30年で30%削減ということがしっかり書かれている。

これはこれで、間違ってはいないし、もちろん社会ニーズの変化で要らなくなった公共施設はしっかり減らていかなければならないし、今以上に増やす施策というのは時代錯誤というか少し考えものである。

しかしながら、公共FM=公共施設の量を減らす活動といった単一的な認識はミスリードを引き起こしかねない。
FMとは経営的な視点に立って、もっている資産(施設とかその環境を指す)を適切に企画、管理、活用することである。
身の丈に応じて減らすことは重要ではあるが、減らすことはだけの単一軸ではないのだ。

というか、諸所の要因によって減らすどころか、増えることも多いにあり得るというのが公共施設の常。

公共FMがなかなか進まないワケ

多くの自治体において、確かにFMを専門的に担当している部門(小さい自治体では色んな業務を兼務させられている可哀想なケースも多い)は作られている。
ただ、それが上手く機能しているかといえば、必ずしもそうでもない。
様々な自治体の実情(色んな自治体に伺うことも多いので、行った先の組織の実情も結構見えてくるw)を見てみると、FMを担当している部門というのは結構似通っているものだ。

大体進んでいないのは下のような状況であることが多い。

全国の自治体で割とよくみられる公共FMの進め方(筆者の研修資料から抜粋)

まぁ簡単にいうと、計画至上主義で実践的でないということだ。
計画づくりに追われて、廃止や縮小ばかり唱えて、庁内でも嫌われて、プロジェクトは何一つやってないというのは、単なる机上の空論である。

ちょっとした活動でスッキリダイエット・・・みたいなことには絶対にならないし、そんな方法があったら僕にこっそり教えてほしい。

そう、FMとはチョコザップのように手軽ではないのだ。

引き出しの少ない公共FM作戦では強大な相手に立ち向かっていけない

今や公共施設とは、肥大化しすぎて目の前にすると立ちすくんでしまうほどの強大な相手である。
自分たちのもっているスキルやリソース、限られたお金では如何ともしがたい、まるで山王工業のような最強の敵・・・みたいなもの。

公共施設は・・・最強の敵?(筆者の研修資料から抜粋w)

もしくはケンシロウの最大のライバルであったラオウくらいの最強感w

ここに立ち向かっていくためには、ありとあらゆる技を駆使して、対抗していくしかない。
廃止・縮小を唱えるだけでは、きっと上手くいかない・・・

公共FM=経営的視点で資産を管理・運用するということを理解する

改めていうと、公共FMとは資産である公共施設やその環境を、経営的視点に立って最適化(企画、管理、活用)していく活動である。
どこにも、公共施設を廃止・縮小するだけとは書いていない。

減らすところはしっかり減らし、維持管理コストも抑えつつ、提供する公共サービスの質を改善し、同時に保全も行いながら、経営資産としての価値を高めていくこと・・・こんな複雑なことが公共FMには求められているのである。

こうやって書くと、そんな難しいことできる訳ないという声も飛んできそうだが、これ結構複雑なようでいて、体系的に整理していくと、割とシンプルになる。

ということで、僕らがやっている活動を端的に表すと、以下の3つになる。
①減らす
 量を減らすことはもちろんであるが、現にかかっているコストを削減するということ。減らし方も効果が高いところから攻めるというのが鉄則。
②直す
 本来は資産管理という部分と、資産価値を下げないという部分で、しっかり保全を行うというのは必須。ただ、かけられるお金も限られているので、コストパフォーマンスを最大限に高める工夫が必要。
③増やす
 これは稼ぐと言い換えても良い。行政だけで難しいようなら、公民連携で、提供するサービスの質や資産の価値を高め、収益を増やすということ。ここでは前例踏襲によらない工夫が必須。

①も②も③も、全てにおいて勝るのが、その実践経験。
現場(施設の状況)を熟知することはもちろんのこと、様々な打ち手を持ち、それを実際に使いこなせるかどうかということがキモとなる。
それぞれの場面で繰り出す技(プロジェクトの進め方みたいなこと)については、また追って触れていこうと思うが、何事にも想いのないところに魂は宿らない、と僕は信じている。

まぁ、どんな困難な状況であっても、楽しくポジティブで向かわないと事態は好転しそうにないので、どうせやるなら夢をもっていきましょう!

最後に夢を見てるやつらに送ります Dreamin'
ハートは今ここにある I'm only dreamin'
(最後はまぁお約束ということでww)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?