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第10回:次世代を担うみなさまへ向けて

【理事長コラム】NPO法人 浜松男女共同参画推進協会 理事長 井出あゆみ

理事長コラムもいよいよ最終回となりました。
2021年3月末の任期満了をもって浜松男女共同参画推進協会の理事長を退任します。最終回となると何を書こうかと迷ってしまうわけですけど、今まで推進事業に携わってきたなかで感じたことをざっくばらんに記し、若い世代に向けてエールを送って、締めくくりとしましょう。^o^

40代の頃、推挙されて男女共同参画(ジェンダー平等)に関わる活動に携わりました。ジェンダーバイアスへの気付きは10代の頃からありましたが、深く考えるようになったのはやはりこの活動に携わってからです。
それまでは、なんとなく感じる「生きにくさ」は全部自分のせいだと思ってきました。「努力が足りないのかな」とか、「運が悪いのかな」とか…。

でも実は、社会のほうにも問題があることに気づきました。つらつらとは書きませんが、あまりにも低いジェンダーギャップ指数(男女格差指数)に象徴されているように、日本のランキングは、世界153カ国中121位です。これは「社会問題」といえます。

考えれば考えるほど、日本の遅れが嘆かわしく、また女性の立場に立つと(立たなくても私、女性なんですけど)、腹立たしくもあります。

日本の抱える社会問題はジェンダー平等だけではありませんが、ジェンダーはすべての問題の根っこにつながるテーマです。ちなみに、政策や事業等の中心にジェンダー格差解消の視点を据えることを「ジェンダーメインストリーム」といいます。

男女共同参画(ジェンダー平等)を推進するミッションを得てからは、いかにしてそれを達成させようかと、研究、実践してきました。行動しなければ進歩もありませんからね。手ごたえはありましたが、様々な抵抗にも遭いました。
保守派の年配男性に、「いくら頑張ったって世の中男尊女卑だよ、無駄な努力」と、差別する側から起こるものだということを象徴するような言動をうけたこともありました。
女の人のほうが得していますよね」という人にも、男女にかかわらずたくさん出会いました。それに乗っかって「いやいや男の人のほうが得でしょう」などというのは、男女共同参画はそういう次元の話ではないので、同じ土俵に乗ることはしませんよ。いまだに勘違いしている人が多いんですが、「男女共同参画」は「男女闘争」ではないのです。豊かな社会をつくろうというための社会政策であって、どっちが得かの損得論とは次元が違いますよね。

男女共同参画社会を実現するには古い考え方を捨てる必要があります。

人々の意識の中に深く染みついた「性別役割分担意識」や、特に教育分野に根強い「性別特性論」は、そう簡単に拭い去ることはできないのですが、ここ10年くらいの間に社会の雰囲気はかなり変わってきたように思います。

昨今では、人の能力は男女差ではなく個人差だということを、ほとんどの人が体得している認識ではないでしょうか、特に若い世代の人たちは。
性別で役割を決めつけるのではなく、その人の持つ個性や能力を活かした社会づくりをするほうが合理的でしょう。とりわけ、この先当分は続く少子高齢社会には、男女の別なく人材資源をうまく結びつけて適材適所を成り立たせるのが合理的というものです。

男女共同参画は、それが必要か否かを議論する段階はとうの昔に終わっています!今や、いかに進めていくかに注力すべき時代なんです。

男女共同参画社会は、女性も男性もすべての人が生き生きと自分らしく生きられる社会のこと。差別のない社会、すべての人が幸福に生きられる社会のことです。

そうした社会に近づくために、私たち(女性も男性も)はまず何をすればよいのでしょう。身近なところで、ジェンダーバイアスを無くしていく行動、性別役割分担意識を見直していく行動をとることが、大事なことだと思います。

次代を担う若い方々にいいたい。
世の中は少しずつ変わってきているのです。
若い方々は、もしかすると、ジェンダーバイアスのまだ消えない大人社会を見ていて、「夢がないなぁ」と感じることもあるかもしれません。
でも、「あきらめないで!」といいたい。
女性も男性も若い方々には、希望を持って生きてほしい。

職場も、働き方改革に取り組んで変わりつつあります。
例えば、少し前までセクハラ、パワハラといった言葉を聞いていたのが、今では、マタハラ、パタハラ(パタニティハラスメントの略。育児のための制度を利用しようとする男性への嫌がらせ、パタニティーは父性の意)、ケアハラなどにも、職場での防止対策が義務化されつつあります。浸透はこれからかもしれませんが、確実にその方向に進んでいきます。
女性も男性もすべての人に働きやすい社会へと向かっていきます。

男女共同参画社会には「自立」が求められます。 
生活の自立、経済的自立、精神的自立、そして経済的自立のために、女性たちには特に専門(得意分野)を身に着けることを勧めたい。リケジョ(理系女子)、ドボジョ(土木建設系女子)の応援事業も数々やってきましたが、とにかく女性も(男性もですが)専門を持つことが大事だと思います。

それもできれば複数の専門を持つと良いかなと思います。専門と専門をつなぐと間に新たな発想や価値が生まれてきます。それは個性になります。自分らしさを磨くことにつながります。なにより自立を助ける「力」になります。そうして、多くの女性たち(男性もですが)に、専門を活かして、当たり前のように社会で活躍してほしいと思います。

「ガラスの天井」(資質・実績があっても女性やマイノリティを一定の職位以上には昇進させようとしない組織内の障壁を、見えない天井になぞらえた比喩表現)は、まだまだ無くならないかもしれませんが、確実に薄くなっています。突き破る強さを身に着けて、臆せず突き進んでいっていただきたい。天井があるからと「あきらめないで!」といいたい。

基本法を振り返ると、男女共同参画社会は、「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」と定義されています。
利益を享受するだけでなく責任を担うべきことも、肝に銘じてほしいと思います。
女性も男性も当たり前に活躍する素晴らしい男女共同参画社会をつくっていってほしいな、と、次代を担う方々には期待をしています。

最終回、力が入って長めのコラムになってしまいましたね。
これまで当コラムを読んでくださったみなさま、
ありがとうございました。(^^)/ (終)


NPO法人浜松男女共同参画推進協会
浜松市を拠点に男女共同参画、ジェンダー平等、女性活躍推進などの課題に取り組んでいます。浜松市男女共同参画・文化芸術活動推進センター(あいホール)の管理運営を担っています。
WEB:https://danjo-hamamatsu.jimdofree.com/
FBページ:https://www.facebook.com/danjohamamatsu/