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23. 夜中のエクソシスト

小学生時代だった1980年代、

父親の仕事でソウルから引っ越し、
当時田舎に住む事になった。

栗の木に囲まれた
そんなに高くない山道中腹に
家があったおかげで
自然に恵まれた田舎暮らしが
少年にとっては
ちょっとつまらなかった。

早く学校の夏休み、冬休みが
来てほしいなと思った。

なぜかというと
学校休みには
だいたいソウルの叔母さん(母さんの一番上のお姉さん)の家に遊びに行って過ごせることが出来たからだ。

叔母さんの家にはお姉ちゃん二人とお兄ちゃんもいた。
母さんと離れるのが嫌ながらも
姉ちゃん、兄ちゃんたちと遊ぶのが
とても楽しかった。

ソウルだからやはり、
田舎ではなかなか触れない
いろんな新文物にも受け、
田舎にはない漫画の店やゲームの店まで
接する事ができて
まるで新世界と出会う気分であった。

そのいとこ兄弟の中でも
1歳年上だった姉ちゃんと
一番気が合い

寝る時間ももったいなくて
夕方から夜明けまで
遊んだ。

叔母さんに怒られながら
ボードゲーム、しりとり、ビンゴゲームなど
遊び素材はほぼ無限だった。

そのある日の夜、
「今夜は何して遊ぼうかなあ…」と
悩んだ二人…

ちょうど目の前に現れたのは
お部屋にある小さい「聖母マリア」像

当時僕の家も、叔母さんの家も
カトリックが宗教だったので
「聖母マリア」像は珍しくもない。

「ふうんんん…」
じっくりと「マリア像」を見ている二人。
(ー_ー;)

「そうだ!」
沈黙を破ったのは姉ちゃんだった。

「奇跡を作ろう!」
「へえ?何、姉ちゃん??」

「「聖母マリア像」に涙を付けて奇跡を演出しようよ。」
「わぁ!面白そう!」

当時、世界の各地で、
戦争などで破滅の道?を歩んで行く
人類に(当時は冷戦時代)たまに
「聖母マリア」が現れてメッセージを送ったり、
人類の反省(?)と平和を求めるメッセージで
人工で作られた「聖母マリア」像から「涙」、又は「血の涙」が出て衝撃を与えたというニュースを聞いた事があったのだ。

その中はほとんど嘘や詐欺もあるけれど、
心霊、ミステリー現状ともいえる
バチカン教皇庁から公認された
いわゆる「奇跡」もあるみたい。

代表的な例は

               ©Wikipedia

「ファティマの奇跡」と言われる、1917年10月13日に3人の羊飼いの子供たちによる予言に反応してポルトガルのファティマに聖母マリアが現れた事件など…

それで二人の小学生は
「作戦開始」に進む…

「ねえねえ、母さん!奇跡が起こったよ!」
「叔母さん、ちょっと来なさい、これは…」

聖母マリア像から流れる涙…

とても信仰深い叔母さんは
当惑な(ー_ー;)をしていた。

あそらく、こいつらのいたずらだろうと思いながらも、
……
もしかそたら???
の複雑な表情…

それほど神様に対する叔母さんの信仰は
真剣であった。

「嘘づくなよ、こいつら…これは、ひどい…」

「いや、いや…本当です。僕らが作ったものではないよ。ねえ、ねえ、ちょっと怖い…」

「ほら、聖母マリア様が泣いています。
私達皆、祈りましょうよ…」

「……」

叔母さんは笑うか泣くか
困る顔で
話を失った。

姉ちゃんと僕は
こっそりと
互い見ながら
目で笑った。
「良し!作戦成功だぞ!」

その夜、
小学生3、4年生には
かなりの苦労だったか
二人は爆睡…

闇の中
雨?
顔に何か水玉のような物がぽろりと落ちる…
嘘…ここって部屋だろう…

姉ちゃんと僕は目を覚めた
真っ暗の中だが、
確かに二人の顔、
違う体全体に液体の水玉が落ちて来た。

「何々?」
「ダニエル、ちょっと電気つけろ。」

へえ???
明るくなった部屋、
まだ夜中の部屋に現れたのは
叔母さんだった。

「叔母さん?」
叔母さんは
二人の反応に全然反応せず、
何かを一生懸命巻いた。

それは、
「聖水」だった。

(ー_ー;)

カトリック教会では、
神様のお祝いが込めている
「聖水」が聖堂入り口に必ずおいてある。
神社の参拝の前に
お手とお口を洗うお水の
意味とある程度似ている。

それは、エクソシスト映画の代名詞「Omen」などで悪魔に巻いて退治する
など、大活躍する場面もある。

「お前ら…夕方から変な話するからさ…」

(-_-メ)

「主様よ…
…私の信の心が足りなくて…くれぐれも私とこの子たちの罪を許してください…
サタン(悪魔)よ!この家から出て、
お前の所に帰れ!!!」

正に冗談ではなかった。

叔母さんは真剣、真剣であった。

僕ら泣いた方がよいか?

誰も止められない空気の中

それで、その夜中
小学生だった姉ちゃんと僕
二人は

神様(?)から
聖水セレモニーを受けながら
びしょびしょで
夜明けを迎えた。

……

叔母さんは現在、
体は弱いが、
もう少しで
90歳を迎える。

幼い頃、
バラエティ(?)思い出を
与えてくれた
叔母さんとお姉ちゃんに
感謝する。

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