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【レビュー・要約】マッキンゼー ホッケースティック戦略: 成長戦略の策定と実行


1. 手に取った背景

立案した戦略の成功確率を事前に知る手法を学び、収益化に繋がる戦略立案を行いたいと考えたため

2. サマリー

2-1. 戦略策定時に起り得る問題

企業が戦略を策定する際に、関係者が多く多種多様なモチベーションが存在する。

結果、事業責任者ごとのニーズ/バイアス/社内力学が障害となり、必要とされる戦略が実行されないケースや、本来論点にあげるべき内容が議題に上がらないケースが多数存在する。

事業責任者の内部の視点(=自分本位の考え)が残ることにより、欠陥だらけの戦略が起きる可能性がある。


2-2. 戦略策定時に各人のバイアスをなくす方法

戦略立案のためには「道標となる基準」を作る必要がある。

本書では、事業戦略は市場に打ち勝つ方法を考える物であり、経済的余剰をゼロに戻そうとする完全競争の市場原理に立ち向かうための戦略と定義。その戦略を評価できる指標として、エコノミックプロフィット(=EVA)を基準と考える。

EVAは市場の競争に投下しか資本を差し引いた総利益額を表す指標であるため、挑戦の度合いを可視化できる。そして、各業界・業種・企業のEVAをグラフ化したものをパワーカーブと呼ぶ。

自社のEVAを算出し、業界全体・競合と比較をした際に、自社のポジションニング(EVAが高い?中間?低い?)を把握し、戦略を講じる必要がある。


2-3. EVAを向上させ、企業力を高めるポイント

パワーカーブの上位にある企業分析を行ったマッキンゼーの調査では、「所与の企業力」「トレンド」「施策(=最も重要)」の3テーマが総合的に優れていれば、パワーカーブの上位に入れることとが判明。自社の戦略の成功確率を判断するや、戦略の整合性を確認する際は、3テーマをベンチーマークすれば良い。

①所与の企業力

□売り上げ規模

企業規模に合わせて業績改善効果の絶対額も大きいため、売り上げ規模が高いほど企業価値を高めることが可能。書籍では総売上で上位20%に入ることが高いと定義。

□債務水準

債務が少ないほどパワーカーブ上昇の確率が高くなる。債務負担能力は成長機会に投資する余裕をどこまであるのか示すことが可能なため、負債資本倍率(Debt Equity Ratio)が業界40%に入る水準であることが必要。

□過去の研究開発費用

過去の投資分野/今後必要な分野への投資が必要か否かを示す。パワーカーブ上昇の可能性を高めるためには、売上高研究開発費用が業界50%以内に入る必要がある。

②トレンド

□業界トレンド

最も重要な指標。簡単に言えば、伸びている業界か、そうでない業界か否か。

□地理的トレンド

グローバル展開している企業が前提ですが、各目GDP成長率が上位40%の地域に身を置いているか否か。

③施策

□プログラマティックM&A

プログラマティックM&Aは、「出会い頭の日和見的な大型M&Aではなく、既存事業の隣接/補完的な領域で毎年複数の小規模M&Aを実行」すること。直近だと、東芝がプログラマティックM&Aの積極化を"東芝Nextプラン"にて発表。なお、マッキンゼーにてM&Aの種類別による成功確率をまとめているサイトがあるため詳細は下記参照願います。

□経営資源配分の積極的な見直し

設備投資額を再配分する企業の方が成長確率が高い。急成長ある見込みのある事業に十分に経営資源を投下してパワーカーブを狙い、成長見込の小さい事業へは経営資源の投下を減らす。設備投資の少なくとも50%以上を事業部間で再配分するのが理想。Deloitte(デロイト)の「事業ポートフォリオの見直し」も参考になる。

□強大な投資計画

売上高設備投資比率で業界20%に入っているか否か。

□効果的な生産性向上プログラム

経費/コスト削減等による生産性の向上を通じて他社よりも速いスピードで業務改善を行うか否か。改善率が業界上位30%に入っていることが基準。

□差別化の促進

ビジネスモデルの変革と付加価値による高価格の設定によりパワーカーブにおける上昇確率を高めるためにも、粗利益の改善で業界の上位30%に入る必要がある。


2-4. 業界の変化にいち早く気づき、アクションをとるための示唆

パワーカーブの上位に入るために必要な「トレンド(=業界の変化)」に気づき、早期対応を行うためには何が必要か。

それは、メガトレンド/マクロトレンドを理解し、独自の洞察を元に、業界変化を理解することである。

社会変化/技術革新/スタートアップの影響により発生する業界変化(=破壊的とトレンド)を理解し、課題・対策を踏まえて、破壊的4トレンドの段階を乗り切ることが重要となる。下記図は書籍を元に作成。

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2-5. 戦略ポテンシャルを発揮するための8つのシフトチェンジ

「1. 戦略策定時に起り得る問題」に記載をしたように、企業力を高める施策を行う際は、社内政治が邪魔するリスクがある。社内政治対策として、下記の8つの対策が有効である。

①年次計画立案から、継続プロセスとしての戦略策定

市場の変化は激しく、年次計画の周期では対応できないことが多いため、年次計画策定プロセスとは別に、定期的な戦略課題の議論の場を用意することや、戦略実現タイミングごとに合意された戦略施策のポートフォリオを見直すことが重要。

②"YES"を獲得する場から真の選択肢を議論する場へ

経営会議では、事業計画/予算承認を得るための交渉がメインとなる議論をするのでなく、計画前提や、外部からの視点を元に、本当に企業が成長できるための戦略を議論できる場とする。例えば、前述の「所与の企業力」トレンド」「施策」をベースに戦略を作り、3つのテーマを元に、外部の視点を取り入れて、戦略を作るなど。

③ピーナツバター型リソース配分から10分の1選択

企業が成長するためには、著しく成長する可能性のある事業機会を速やかに特定し、必要なリソース配分ができることが重要。例えば、「ポートフォリオレベルでリソースを配分し、可能性の高い事業機会に投資すること」「リソースを主力分野に集中させることで、競合他社に勝つ」など。

④予算承認から大胆施策の実施へ

予算承認を行う上での会議で問題なのは、立案された戦略に関してバイアスがあることや、前提条件が、正確な理論に基づいている物でないこと。そのため、営業努力=営業マンの気合・努力」といった不確実性が高い戦略で、事業計画を考えるのでなく、競合他社の施策と自社の戦略を比較をし、事実に基づいた正確であり、かつ小手先でなく、大胆な施策を実施する必要がある。

⑤惰性による予算編成から流動的なリソース配分

予算に流動性を持たせて、選択と集中を行えるためにも、予算組みは80%の割合で考え、残り20%を事前に確保するなどの施策を取る。

⑥過少申告からリスクポートフォリオの開示

現場サイドから提出された「達成できる目標戦略」を元に戦略を作るのでなく、全社レベルでの事業計画を作ることが重要。「企業が成長するための戦略」「改善余地」「付随するリスク」の3テーマを重視し、議論する必要がある。

⑦結果の数字に偏らない総合的な業績評価へ

「結局、数字でしか判断されない」と言う結果主義があれば、事業部再度では「目標数値は低く設定し、達成できる数字を提示する」という現象が現場で起き、企業成長が鈍化する。企業成長を目指すためにも数字以外の点を評価し、総合的な業績評価が必要となる。例えば、「意義のある失敗を推奨し、独力の質を重視」など。

⑧長期計画から第一歩への重視へ

長期計画を立案する際には必ずビジョンが存在する。ビジョンを達成するための施策を決めた際は、6〜12ヶ月の期間で達成できるゴールを都度設定すし、オペレーション上の指標に落とし込むなど明確な目標を設定する。そのための施策は「ゴールを達成できるための行動指標を作る」「ゴール達成に向けた必要なリソースを割り振る」など。

3. 私見

グローバル/大手企業だけでなく、中小企業にも大きく関係するテーマが整理されている。人間のバイアスがある前提の中で、戦略立案・実行を行う必要があることを痛感。記載内容を念頭におき実務を行い、書籍を定期的に振り返り、企業へ向き合う必要がある。より詳細まとめたい内容であるが、内容がボリューミーであるため、ポイントのみ整理。

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