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ゴリラの惑星とゴリラピクニック/私小説⑥-2再会/ストレスジャンププール

はぁ…

どうしたらいいんだ…

泣かせてしまった

解決ができるのは、他の誰でもない、おれだった…

けど、この1~2年の記憶がないおれには、どうしたらいいのか分からない…

頼りになるはずだった自分に、頼ることができず

困ったな…

どうしたら

目を閉じると、ゴリラのことを思い出した

やけに政治や社会に詳しかったし、こちらの世界と似ている気がする

何か答えや、教えてもらえるんじゃないか?

どうしたら、ゴリラに会えるのか思い返すと…

駅のホーム、自販機のバナナだ!

頼む、まだ売れ残っていくれと、駅のホームへ急いだ

自販機に着くと、呆然となった…

"長い間、ご利用ありがとうございました。

報道の影響で、駅や自販機を、ご利用される方が激減しました。

大量の売れ残りと廃棄、賃貸料や維持費の支払いが困難となり、誠に勝手ながら、廃業致します。

みなさんの健康や空腹を満たす、お手伝いが出来て幸せでした。

今後とも、みなさんの健康と幸せを、祈念しております。"

ちょっと、待ってよ…

廃業って…

ゴリラに会えない、、、

絶望が、身体を覆い尽くした

立っていられなくなり、しゃがみ込む…

くっそう!

はぁ…

と、大きなため息ついた

ふと、自販機の取り出し口に、黄色い何かが見える

バナナだ!

なんで、あるのかは分からないけど、助かった

取り忘れたのか?

とにかく、一本だけ分けて貰い、食べ始める

気持ちが落ち着き、お腹も満たされると、眠くなってきた

よし、これで、ゴリラに会え…

ウトウトと舟を漕ぎだすと、足元がプールに変わっていった…

~~~~~~~~~~

目を覚ますと、二足歩行で服を着て、魔酢苦をしている、ゴリラの世界に来れた

よし!

案内所の受付に、あのゴリラがいることを願い、向かうと、、、

嘘だろう…

"案内所、閉鎖のお知らせ

不要・不急の外出はピンクゴリラ拡大に繋がる観点から、案内所を閉鎖します。

ご自宅で、ゴリラピクニック観戦を"

嘘だろう…

やっと来れたのに…

その下には、スプレーで乱雑に不快な文字が書かれていた、、、

"ゴリラは、3つのゴリラを守って、ステイホームしてろ(笑い)

会場での観戦・外出・外食を楽しんでいいのは、人間様だけだ(笑い)"

なんだ、この胸くそ悪い、落書きは…

吐き気と、怒りがこみ上げた

この感情、あちらの世界で…


「こりゃあ、ひどいな…

傷ついて、悲しいよ…」


ゴリラ!

どうして、ここに?

「おう、あの時の人間じゃないか!

どうだ、仲直りはできたのか?」

と聞かれ、温かな優しさを感じ、瞳が潤んでくる

人間なんかよりも、よっぽっど、愛情のある生物なんじゃないか

「お、お、おれは、あんたに会いたくて、探してたんだよ。

よかった、会えて…」

と、軽くハグをした

「あんたに、聞いてほしい話が、あるんだが…

この有様は…」

「ああ、派遣切りだよ。

おまえさんの様に、会場に来るゴリラが減って、不要・不急だからと、閉鎖が決まった。

一見、少し高い時給で釣って、給料の前払いとかで、好条件に思わせているがな…

本来、貰えた給料を派遣会社に中抜きされて、仕事が無くなれば、一方的に雇用を打ち切られるのさ。

使い勝手のいい、捨て駒さ…」

自ら自嘲しているが、苦しそうで、悲しそうだった…

「ああ、わるいな。

ちょっと、気持ちの整理が、まだ、つかなくてな…

ここには、貸与されたIDゴリラと、ゴリラ制服の返却で来ていたのさ。

それより、どうしたんだい?

また、ケンカでも、したのかい?」

自分に大変なことが起きているのに…

おれの話しを聞いてくれるのか?

ここで甘えても、いいのか?

けど、この世界に来ることも、ゴリラに会うことも、やっと掴んだ機会…

「あんたが大変な時に、申し訳ないが、、、

あんたに、聞いてほしいがあるんだ…」

「ああ、話しを聞く位なら構わんさ。

気になさんな。

それに、仕事を失ったばかりで、今は、自分のことも、先のことも、考えられなくてな…

何か違うことをしたり、役に立てることができるなら、気晴らしにもなるさ…」

「ありがとう。恩に着る。」

おれは、自分に起きたことを語った

手紙をくれた人は、おれと付き合っていた大切な人だった

日を改めて、ファミレスで彼女と会った

可愛いくて・優しくて・聡明な女性と、付き合っていたなんて、おれは幸せだったと思う

けど、おれの記憶は戻らなかった…

2人で話し合って決めたのは、友人から関係を、築き直そうだった

仲直りでもなく、復縁でもなく、おれの記憶だけが、欠落している関係

友人として付き合い、親しくなる中で、彼女とズレを、感じるようになった

魔酢苦をしなかったり、報道とは、違う考えや意見を持っている人で、異質だなと思った

それを、おれに押し付けたり、強要するわけでもない

"自分の目と耳で調べて、自分の頭で考えたいから"

と、よく話していた

偶然、彼女が中央官庁に、電話している様子を、見る機会があった

質問したり、意見や要望を伝えていた

政治家でも、記者でもないのに、どうして頑張っているんだ?

それに、通話中は手足が震えていたり、通話が終わると、ぐったりと疲れていた

行政改革の名の元に、公務員も人員削減をされ、人手不足と長時間労働で、気が立っているらしい…

公務員も会社員と変わらず、大変なんだなと知った

彼女の様子が心配で、、、

"君が、こんなに頑張る必要は、ないんじゃないか?"

と、普段は言わずにいたことを、口に出してしまった…

"心配してくれて、ありがとう。

けど、多くの理不尽や不条理を、これ以上は見過ごせないの。

わたしは、この時代に生きている人間として、できることをしたいの…

なんか、逆になっちゃったね。

以前は、あなたから、教えて貰ったり、学ぶことが多かったの…

あっ、ごめんなさい。

過去の話しは、止めようって決めたのにね…"

お互いに、気まずい沈黙が、流れた…

ずっと2人の間にある、溝とズレだった

おれは、おれだが、以前のおれの記憶や経験の一部を、喪失してしまっている

どうしようもなくて、もどかしさもある…

それ以降は、お互いに、ズレや溝を深める話題を、避けるようになった

表面上は、上手く仲良く過ごせているけど、お互いに言いたいことは、隠したままだった

2人の間に亀裂を入れたのは、盛んに報道されている、予防薬だった

職場でも、予約をして服用する人が増え始め、おれも服用しようと思うんだと、一緒に食事している時に話すと、彼女の手が止まった

どうしたんだ?と思いながらも、話しを続けた

"色々、不満や不平に感じることもあるけど。

予防薬さえ服用すればさ、自由が約束されているらしく、丸く収まるみたいだから、我先にと競っててさ。

なんか熱が出たり、腕が痛くなることも、あるらしいけど。

勇者や武勇伝の様に、話す奴もいるのよ。

みんなが服用するみたいだし、服用しないと、拒否する人間は、非常識な奴扱い、されるみだいでさ。

だから…"

と言いかけると、彼女は涙を流していた

一体、どうしたんだ?

おれは、とにかく彼女が泣き止み、落ち着くのを待った

"ごめんなさい…

どうしたら、いいのか分からなくなってしまって…

その、以前の、あなたとは、真逆のことを言っているから…

過去のことは、触れない約束をしたのは、分かっているの。

あなたを変えようとか、わたしの思い通りにしたいとかは、思わないわ。

過去のあなたを知っている分、どうしても割り切れない気持ちがあって、困ってしまったの…

ねえ、どうしたらいいかな?

わたしだけが、あなたの過去を引きずってしまうの…

関係を続けていくのが、難しいかな…"

こんな彼女を見るのは、初めてだった

自分というものがあって、しなやかな芯があり、人として強さや気高い人だと、思っていたけど…

弱い部分を見せられて、力になりたいと思った

記憶さえ戻れば…

答えや解決方法は、おれが持っているのに、、、

おれに腹が立ってきた

思い出してくれよ

頼むからさ…

"少し時間をくれないか…

考えたり、調べたいことがあるから…"

と言うと、彼女は少し笑顔になり頷いた

記憶の手ががりは、予防薬に関することに、あるのか?

ネットで情報を検索するが、様々な情報や意見があり、訳が分からなくなり、目も頭も疲れ果てた…

クッソ、他人の意見や考えばかり読んでも、ダメなのか?

人や物事を、よく知り見ることができる人なんて…

いた!

そこで、あんたに、会いたいと思ったんだ
~~~~~~~~~~
長い話しを、静かに聞いてくれていた、ゴリラが口を開いた

「そうだったのか。

記憶を、失っているのか。

大変だったな。

それに、オレに、わざわざ会いに来てくれて、嬉しいよ。

なあ、よかったら、バナナ食堂に行かないか?

人間の、お前さんがいれば、ゴリラも利用できるし、バナナも提供してくれるのよ。

どうかな?」

異存はないけど、差別が絡んでいる内容が、気がかりだ…

「ああ、別に構わないよ。

けど、大丈夫なのか?

その差別みたいのが、あるみたいだけど…」

「ああ、大丈夫だ。

人間と一緒なら、何も問題ない。」

不安を感じつつも、おれ達は、バナナ食堂へ向かった

つづく

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お読み頂いて、ありがとうございます。

思った以上に、長くなり、ここで話しを区切ります。

次回、バナナ食堂編?で完結?かもです。

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